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社長が意外と知らない預金の見方

社長が意外と知らない預金の見方

自社の預金について、決算書や預金通帳などで残高を確認しておしまいの社長は少なくありません。というわけで、社長が意外と知らない預金の見方について、お話をしていきます。

目次

いくらあるかを見ればおしまい、ではない。

決算書や試算表を見れば、自社の預金残高を確認することができます。また、預金通帳を見れば、やはり預金の残高を確認することができます。

その預金について、社長が意外と知らない見方があるのだといったら、フシギにおもわれるでしょうか。預金など、残高が「いくらあるか」を見ればおしまい。そう、おもわれるかもしれません。

ですが、それだけではない見方もありますよ、ということで。社長が意外と知らない預金の見方について、このあとお話をしていきます。具体的には次のとおりです↓

社長が意外と知らない預金の見方
  • 正味の預金残高
  • 利益増加とのギャップ
  • 平均月商との比較

それでは、それぞれの見方について確認をしていきましょう。

社長が意外と知らない預金の見方

正味の預金残高

ここでいう正味の預金残高とは、銀行借入を加味した預金残高ということです。たとえば、預金残高が3,000万円、借入残高が2,000万円だとしたら。正味の預金残高は1,000万円です。

つまり、預金残高は3,000万円だけれど、そのうち2,000万円を借入返済にあてるのだと考えれば、残りの預金は1,000万円だ、ということになります。

にもかかわらず、預金残高の3,000万円ばかりを見ていると、実際よりもおカネがあるように勘違いをしてしまい、おカネを使ってしまう社長はいるものです。

では、預金残高は2,000万円、借入残高が3,000万円だとしたらどうでしょう?正味の預金残高は、マイナス1,000万円です。2,000万円もおカネがある、と勘違いしているのでは困ります。

したがって、社長はまず、正味の預金残高が「プラス」になることを目指しましょう。言い換えると、「実質無借金(いつでも完済できる状態)」を目指しましょう、ということです。

この点、借金(銀行借入)を嫌う社長もいますが、正味の預金残高がプラス(実質無借金)であれば、借金はないのといっしょだといえます。借金と預金は、セットで見るのがポイントです。

そのうえで、正味の預金残高については、「推移」を確認することもおすすめします。少なくとも毎月末には、正味の預金残高を計算してみて、前月以前の金額と見比べてみましょう。

毎月末の金額を折れ線グラフにすると、増減の傾向がつかみやすく、底(正味の預金残高が減るとき)がいくらぐらいなのかも把握しやすくなります。

利益増加とのギャップ

いましがた、正味の預金残高について確認をしました。関連して、前月と当月との差額も確認をしてみましょう。つまり、前月と比べて、預金残高がいくら増減をしたのかを把握するということです。

仮に、正味の預金残高が、前月よりも100万円増えたとします。いっぽうで、今月の利益はいくらだったのか?損益計算書で確認をしてみましょう。

お察しのとおり、預金が100万円増えたからといって、利益が100万円というわけではありません。預金と利益とは、必ずしも同じ動きをするものではないからです。

預金が増えても利益は減っていることはあるし、逆に、預金が減っても利益は増えていることもあります。その「ギャップ」を確認するために、正味の預金残高と利益とを見比べてみましょう。

そのうえで、ギャップが生じている「理由」を把握することが大切です。もし、利益は出ているのに、預金残高は減っているのであれば、売掛金の回収が滞っていたり、不良在庫が増えているなどの可能性もあります。

そういった可能性を放置していると、のちのち、資金繰りへの悪影響が大きくなり、困ったことになりかねません。そうはならないように、預金と利益のギャップを把握し、問題の早期発見に役立てましょう。

また、預金は増えているとしても、利益が出ていない(赤字)ということもあります。その状態が続けば、中長期的には預金も減っていくのが問題です。預金ばかりを見ていると、やはり問題に気づくのが遅くなってしまいます。

平均月商との比較

預金残高は、どれくらいあればよいのか?と、疑問におもわれる社長は多いようです。この点、「平均月商」が1つのモノサシになります。

平均月商とは、「年間売上高 ÷ 12ヶ月」で求められる金額です。つまり、ひと月の平均的な売上高が平均月商になります。その平均月商と、預金残高とを比較してみましょう。

そのうえで、預金残高が平均月商の2ヶ月分以上が「安全圏」の目安です。多くの会社では、「平均月商 ≒ ひと月の支出」であるため、ひと月の支出の2倍くらいのおカネがあると資金繰りは安心だよね、ということになります。

いっぽうで、預金残高が平均月商の1ヶ月分未満は「危険水域」です。ひと月の支出分の預金もないということになりますから、ちょっとしたことで資金ショートを起こしかねません。

よって、預金残高が平均月商の1ヶ月分未満になると、銀行からも危険視されて、融資が受けにくくなることも覚えておきましょう。だから、借入をしてでも、預金残高を増やしておく必要もあるのです。

ちなみに、わたしは「平均月商の6ヶ月分」の預金残高を、目標としておすすめをしています。それぐらいの預金があると、将来への積極的な投資も考えられますし、いざというときにも6ヶ月くらいはしのぐことができるからです。

コロナのような「未曾有の事態」が起きれば、6ヶ月くらいは売上が激減することを経験しています。事業を続けていれば、まさかも起きるのですから、預金の備えをおこたらないことです。

まとめ

自社の預金について、決算書や預金通帳などで残高を確認しておしまいの社長は少なくありません。というわけで、社長が意外と知らない預金の見方について、お話をしてきました。

資金繰りの良し悪しに影響する見方でもありますから、ぜひ押さえておきましょう。

社長が意外と知らない預金の見方
  • 正味の預金残高
  • 利益増加とのギャップ
  • 平均月商との比較
社長が意外と知らない預金の見方

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