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銀行員は金利を上げようと考える場面はいつなのか?

銀行員は金利を上げようと考える場面はいつなのか?

日銀によるマイナス金利の解除は別として、ほかにも、銀行員が金利を上げようと考える場面はあります。社長がそのあたりを理解していないと不利益をこうむりますよ、というお話です。

目次

政策金利だけのハナシではない。

きょうは、2024年1月5日。日銀によるマイナス金利の解除もウワサされるなか、銀行業界は「融資金利の引き上げ」の話題で持ちきりだと聞きます。

ということで、政策金利に変化があれば、融資金利の引き上げも起きるわけですが、銀行員が金利を上げようと考える場面はそれだけでもありません。

では、どんな場面があるのか。おもなところで3つほど、挙げてみることにします。社長がこのあたりを理解していないと、不利益をこうむりかねませんので押さえておきましょう↓

銀行員は金利を上げようと考える場面はいつなのか?
  • プロパー融資
  • 既存融資の一本化
  • 経営者保証の解除

それではこのあと、順番に確認していきましょう。

銀行員は金利を上げようと考える場面はいつなのか?

プロパー融資

銀行の融資は大きく分けて2つ、「プロパー融資」と「信用保証協会の保証付き融資」とがあります。

このうち保証付き融資は、会社が返済できなくなったときには、信用保証協会が肩代わりをするため、銀行にとってはリスクが小さくて貸しやすい融資です。

これに対してプロパー融資は、信用保証協会の保証がなく、会社が返済できなくなったときには銀行が100%損失を負うため、銀行にとってはリスクが大きくて貸しにくい融資となります。

だとすれば、プロパー融資の金利が、保証付き融資の金利よりも高くなりがちであることはわかるはずです。実際、プロパー融資となれば、銀行員は金利を上げようと考えます。

にもかかわらず、社長がかたくなに「金利の引き下げ」を迫るとどうなるか…

当然、銀行は「だったら、プロパー融資はムリです」となるでしょう。結果として、保証付き融資しか受けられないのだとすれば、会社にとっては不利益だといえます。

いうまでもなく、保証付き融資には「限度額」があるからです。保証付き融資に頼るだけだと、会社は、資金調達の額を増やすことができません。事業の持続・成長に支障をきたしてしまいます。

では、どうするか?プロパー融資を受けたければ、あるていどの金利は容認することです。銀行員が、少々高い金利(保証付き融資に比べて)を提示してきたとしても、むやみやたらと引き下げ交渉をしないようにしましょう。

ただし、ただただ容認するばかりだと、必要以上に高い金利をのまされることはあるわけで。つまり、社長が何も言わないのをいいことに、必要以上に高い金利を提示する銀行員もいます。

よって、社長には「金利交渉スキル」が求められることは理解しておきましょう。

既存融資の一本化

ある銀行から、2本の融資を受けているとします。1本が残高2,000万円で、毎月の返済は50万円。もう1本は、残高1,000万円、毎月の返済はやはり50万円だとします。

では、この2本を、あらたに3,000万円の融資を受けて、借り換えるとしたらどうでしょう。これを「一本化」と呼びます。このとき、あらたに受ける融資の返済期間が5年とすれば、毎月の返済額は50万円です。

借り換える前の毎月の返済は、2本で100万円だったので、借り換え後は資金繰りがラクになることがわかるでしょう。会社にとってはメリットです。いっぽう、銀行にとってはどうかというと…

一本化したことによって、完済までの期間が延びるのがデメリットです。期間が延びれば、それだけ不確定要素は大きくなりますから、回収不能のリスクもまた大きくなります。

そこで、銀行員は「一本化するなら、金利を上げたい」と考えるわけです。にもかかわらず、社長がかたくなに「金利の引き下げ」を迫るとどうなるか…

銀行は、「だったら、一本化には応じられない」ということにもなるでしょう。ですから社長は、一本化と金利引下げの両取りは難しいこと(ムリではないにしても)を、理解しておくことが大切です。

つまり、どうしても一本化をしたいのであれば、少々金利が高くなることは容認する、ということになります。ですが、ここでもやっぱり、ただただ容認するばかりだと、必要以上に高い金利をのまされることはあるわけで。

必要以上に高い金利をのまされないように、金利交渉スキルが求められることは前述したとおりです。では、金利交渉スキルとは具体的にどういうことなのか。どのように身につけたらよいのか。

くわしくは、動画にまとめています。ご参考にどうぞ↓

経営者保証の解除

先日、金融庁から公表されたデータによれば、新規融資に占める経営者保証(社長の連帯保証)なしの融資の割合は急増していて、5割にせまる勢いとなっています。

なかには、「原則、経営者保証なし」を掲げる銀行もあり、今後はさらに経営者保証なしの融資が広がっていくことになるでしょう。とはいえ、銀行もカンタンに経営者保証をなしにはできません。

なぜなら、経営者保証がなければ、その分だけ、回収不能のリスクが高まるからです。では、どうするか?もう想像がつくものとおもいますが、「金利の引き上げ」です。

経営者保証の解除には応じます。代わりに、金利は上げさせてもらいます。今後は、こういったやりとりも増えるはずです。そのとき、社長はどうするか。

経営者保証なしの融資を受けたいのであれば、金利の引き上げをのみこむことになります。ちなみに、「経営者保証が付いてもかまわないから、金利を下げて」との考えには問題が残るでしょう。

なぜなら、銀行はいま、経営者保証なしの融資を増やそうとしているのであり(金融庁からも増やすように言われている)、だとすれば極論、「経営者保証なしの融資ができない会社には、そもそも融資をやめてしまおう」ということもありうるからです。

そうなれば、会社は資金調達に支障をきたすのですから、社長は困ってしまいます。

そもそも経営者保証は、社長にとって、なければないほうがよいものですから、可能な限り、経営者保証の解除につとめるのがよいでしょう。というわけで、あるていどの金利はのみこむことです。

そのうえで、必要以上に高い金利をのまされないように…(金利交渉スキルを身につけておく)というのは、再三繰り返しているとおりです。

まとめ

日銀によるマイナス金利の解除は別として、ほかにも、銀行員が金利を上げようと考える場面はあります。社長がそのあたりを理解していないと、不利益をこうむりかねません。

つまり、金利の引き上げを「あるていど」は容認しなければならないこともあるし、引き下げ交渉の術(すべ)を持つ必要もあるということです。

でなければ、金利以外の条件が悪くなったり、必要以上に高い金利で融資を受けることになってしまいます。

銀行員は金利を上げようと考える場面はいつなのか?
  • プロパー融資
  • 既存融資の一本化
  • 経営者保証の解除
銀行員は金利を上げようと考える場面はいつなのか?

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