債務超過とは、危険な会社をあらわす財務状態です。が、債務超過でも銀行借入ができる会社はあります。それは、具体的にどのような会社なのかについて、まとめてみました。
債務超過にもいろいろある
危険な会社をあらわす財務状態として、「債務超過」があります。文字どおり、債務(負債)が超過している状態であり、何を超過しているのかといえば「資産に対して」です。
つまり、決算書や試算表を見たときに、「資産<負債」の状態にある。それが、債務超過です。となると、資産をすべて現金化しても負債を解消できないのですから、危険だとわかるでしょう。
ゆえに、債務超過の会社は銀行から嫌われることとなり、借入しづらくなることを知っている社長は多いはずです。とはいえ、債務超過だからといって、必ずしも銀行借入ができないわけでもありません。
債務超過にもいろいろあって、ケースによっては、それでも借入できることはあるのです。ということで、債務超過でも銀行借入できる会社について、お話をしていきます。具体的には次のとおりです↓
- 実態では資産超過
- 3年で解消できる
- 個人資産を加算すれば
それではこのあと、順番に解説をしていきます。
債務超過でも銀行借入ができる会社とは?
実態では資産超過
銀行は、決算書や試算表を「実態」で見ています。実態に対する見方が「表面」です。表面とは、決算書や試算表に記載されている数字を「そのまま」で見ることをいいます。
この点、会社が社長から借入をしていて、決算書には「役員借入金」が記載されている…ということがあるでしょう。役員借入金は負債なので、「資産<負債」の原因にもなるものです。
ところが、社長が会社に対して返済を求めないのであれば(あるとき払い)、実質的には、役員借入金は「社長からの出資」と変わらないことから、「資本とみなす(負債ではなく)」という考え方が銀行にはあります。
ですから、自社の役員借入金を資本とみなしてもらえれば、「資産<負債」が「資産>負債」に変わることもあるわけです。
とはいえ、決算書上で役員借入金が明記されていなかったり(長期借入金として銀行借入に混じっている)、社長が返済を求めないことがわからなければ、銀行も「みなす」ことはできません。
よって、そのあたりは社長のほうから、銀行に対して説明をすることが大切になります。
また、含み益を抱えた資産があれば、その含み益を説明することで、表面では「資産<負債」でも、実態として「資産>負債」となることもあるでしょう。この場合にも、説明が必要です。
その際のツールとして、実態貸借対照表があります。これを作成したうえで、銀行に提示をしながら説明できるとよいでしょう。実態貸借対照表の書式や作成方法について、くわしくは別の記事に書きました↓
3年で解消できる
実態でも債務超過だ…という場合でも、債務超過の「大きさ」によっては、銀行借入することは可能です。具体的には、債務超過を「3年で解消できるか」が目安になります。
たとえば、決算書を見たときに「資産5,000万円、負債8,000万円」の場合、債務超過は3,000万円です。これを3年で解消するためには、毎年平均1,000万円の税引後利益が必要になります。
ですが、「資産5,000万円、負債8,000万円」の規模感で、年に1,000万円の税引後利益はなかなかに難儀でしょう。これに対して、「資産5,000万円、負債6,500万円」だとどうなるか?
3年で解消するのに必要な税引後利益は、毎年平均500万円です。この場合、500万円の税引後利益が実現できることを示す経営計画書を作成し、銀行に説明することで、銀行借入できる可能性が高まります。
いっぽうで、そのような説明ができなかったり、債務超過を3年では解消できないことがあきらかだと、銀行借入は困難です。社長は、この目安を覚えておくようにしましょう。つまり、3年で解消できないような債務超過は絶対に避ける、ということです。
なお、それでも大きな債務超過になってしまった。銀行も貸してはくれない。その場合には、リスケジュール(返済猶予)を依頼することになります。返済猶予もまた、実質的には、資金調達と同じですから、リスケジュールによって時間をかせぎ、そのあいだに経営改善をはかりましょう。
リスケジュールを依頼する際には、経営改善計画書の作成が必要になります。このとき、基本的には、債務超過を5年で解消する計画が求められることも、あわせて覚えておきましょう。
個人資産を加算すれば
実態が債務超過であっても、銀行借入ができるケースはまだあります。それは、個人資産を加算すれば、「資産>負債」になるケースです。
ここでいう「個人資産」とは、社長個人名義の資産をあらわします。たとえば、社長個人名義の預金とか、不動産とか。それらを、会社の資産に加算したときに「資産>負債」になるかどうかです。
会社の資産だけであれば、「資産<負債」であったとしても、個人資産を加算したときに「資産>負債」となるのであれば良しとしよう。という見方が、銀行にはあります。
なぜなら、中小企業においては「会社=社長」だからです。実際、社長が大株主であることが、ほとんですし、会社に何かあれば、社長は個人資産を投じてでも会社の存続をはかるものでしょう。
なので、銀行は「会社の資産+個人資産」という見方をしているのです。
ところが、銀行が個人資産のすべてを把握しているわけではありません。他行の預金や、不動産については知らないこともあるでしょう。だとすれば、社長のほうから情報提供が必要です。
よって、債務超過の状態にあるときには、個人資産の情報をまとめた一覧を作成して、銀行に提示・説明することを検討してみましょう。
というと、「担保に取られるかも…」と心配をされるかもしれませんが、それはまた別のハナシです。銀行が担保に取らずとも、「会社の資産+個人資産」という見方をすることは可能です。
もし、担保提供を求められたとしても、イヤなら断ればいい、ということでもあります(断った場合には、借入できる可能性が下がることはあるかもですが)。
まとめ
債務超過とは、危険な会社をあらわす財務状態です。が、債務超過でも銀行借入ができる会社はあります。それは、具体的にどのような会社なのかについて、お話をしました。
もし、自社の決算書や試算表が債務超過になってしまったときでも、借入できるケースがあることを理解しておきましょう。いずれのケースにあっても、自社から銀行に「説明」することが大切になります。説明のポイントは、前述したとおりです。
- 実態では資産超過
- 3年で解消できる
- 個人資産を加算すれば