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資金繰り表がなくても借りられる、とノンキな社長の危うさは

資金繰り表がなくても借りられる、とノンキな社長の危うさは

資金繰り表がなくても銀行から融資は受けられる、と考える社長がいます。が、それはノンキというものです。その理由について、お話をしてみることにします。

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怒りをエネルギーに代えて

会社が銀行からスムーズに融資を受けたいのであれば、「資金繰り表をつくりましょう。それを銀行にも提示しましょう」ということを、わたしは常々おすすめしています。

いっぽうで、ちまたには「資金繰り表がなくても借りられる」というハナシがあるようで。事実、資金繰り表がないからといって、融資が受けられないわけではありません。

だったら、わざわざ資金繰り表をつくるだなんてメンドーだ、ともなるわけです。それでも(資金繰り表なしで融資が受けられるとしても)、わたしがおすすめすることに変わりはありません。

今回は、その理由について、お話をしてみようかとおもいます。とても大事なところなので、非難を恐れずに、あえて強い言い方をするのであれば、資金繰り表をなおざりにする社長は「ノンキすぎ」です。

と聞いて、「なんだとぉ!」と怒りが湧くようでしたら、そのエネルギーでもって、このあとの続きをお読みいただけますとうれしくおもいます。

借りることがゴールではない

いきなり杓子定規なハナシをしますが、「銀行融資は目的ではなく手段」です。うわー、出ました正論が。と、おもわれるかもしれませんが。そこを間違えると、会社をつぶすことにさえなりかねないところに、大きな問題があります。

銀行融資が目的ではないとは、つまり、借りることがゴールではないということです。では、ゴールは何なのか?資金繰りの安定であり、ひいては会社の持続・成長です。銀行融資は、そのための「1つの手段」にすぎません。

そういう意味では、手段は何でもよくて、社長個人のおカネを会社に入れられるのであればそれでもいいですし、他人からおカネを集めるのでもいいのです。が、そうもいかないものでしょう。

この点、多くの中小企業においては、銀行融資が有効な手段になるはずです。

ただ、それとて、いちど融資を受ければ、資金繰りが完全に安定しました!などということはありません。借りたら返して、また借りてを繰り返しながら、安定に近づけるのがセオリーです。

その過程においては、「先を見通す目」が必要になります。いまはおカネ(預金残高)があっても、3か月先、6か月先、1年先にもおカネはあるのかな?と、先を見通す目です。

たとえば、決算書や試算表。これらは、過去の一時点を示すものにすぎず、先を見通すのには不十分だといえます(先を見通すうえでの材料にはなれど)。そこで、資金繰り表です。

1年先くらいまでの資金繰り予定を、資金繰り表として作成することで見通しが立つようになります。いやいや、先のことなどわからないし、予定は未定。どうせ、予定どおりにはならないでしょ?と、おもわれるでしょうか。

そのとおりです。だからこそ、見通しを立てる必要があります。見通しの時点で不安があるとわかれば、早めに対応に動くことができるのは大きなメリットです。

多くの会社・社長はそれができないから、おカネが足りなくなってから、あわてて銀行に融資を依頼している現状があります。銀行はそういう「場当たり的」な会社を嫌うので、みずから融資を受けにくくしているわけです。

そのような状態では、いつまでたっても「資金繰りの安定」というゴールにはたどりつけません。だから、資金繰り表をつくり、先を見通すことで、資金繰りの安定に向けて「早めに取り組む」ことをおすすめします。

銀行員の心象はまるで違う

資金繰り表をつくりましょう、というと。銀行も「資金繰り表を見たい」とはいわないし…と、反論される社長がいます。たしかに、クチにはしないかもしれませんが「おもってはいる」のです。

金融機関の融資担当者を対象にした、ある調査結果によれば、実に9割が「予算管理をしている企業は融資がとおりやすい」と考えているといいます。また、予算管理の必要性についても、8割が「必要だ」と回答しています↓

資金繰り表をつくるというのは、予算の検討・管理でもあります。1年先の資金繰りは「予算」であり、その予算と実績とを比較するのであれば「管理」です。

だとすれば、銀行員が「資金繰り表をつくっている会社」を評価するのは、けしておかしなハナシではないでしょう。評価するとは、結果として、融資が受けやすくなるということです。

融資が受けやすくなれば、ゴールとしての「資金繰りの安定」につながります。繰り返しですが、銀行融資はいちど受けられればOK!ではありません。

ゴールに向かって繰り返し融資が必要になるのですから、銀行から見たときに「融資がとおりやすい会社」であるに越したことはないのです。融資審査に人(銀行員)が関わる以上、銀行員の心象も大切だといえます。

目先の融資ばかりではなく、中長期的な視点で融資を考えるようにしましょう。すると、資金繰り表の必要性に気づけますし、「資金繰り表がなくても借りられる」などとは考えないようになるはずです。

ちなみに、それでもなお資金繰り表なんていらない。つくる必要がない、といえる会社はあるのか?1つだけあります。それは、「うなるほどのおカネを持っている会社」です。

「うなるほど」とは文字どおりであり、必要であればいくらでもおカネが出てくような会社をいいます。であれば、この先に何が起きようと問題はありませんから、資金繰り表もいりません。

でも、そんな会社ありますか?というハナシです。わたしは「ない」とおもっています。

まとめ

資金繰り表がなくても銀行から融資は受けられる、と考える社長がいます。が、それはノンキというものです。その理由について、お話をしてみました。

おカネがなくなればおしまいである以上、資金繰りは会社の生命線です。にもかかわらず、「資金繰り表(資金繰りの管理ツール)はなくてもいい」などというのは矛盾であることに気づきましょう。

資金繰り表がなくても借りられる、とノンキな社長の危うさは

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