税理士として、銀行融資の支援をしています。すると、感じる悩ましさについて。一般に、融資の受けにくさの「原因」にもなっているところだろうとも考えて、お話をしてみます。
アンタの力量不足ではないのか?
税理士として、銀行融資の支援をしています。「銀行融資支援専門」を名乗りはじめてからは、5年ほどがたちました。そのうえで、実際に融資支援の現場に立って、感じる悩ましさがあります。
つまり、おもっているとおりには、うまくいかないなぁということがある、ということです。そんなのアンタの力量不足ではないのか?といわれれば、それまでではありますが。
いっぽうで、一般に、融資の受けにくさの「原因」にもなっているところだろう、とも考えて、お話をしてみることにしました。というわけで、融資支援の現場で感じる悩ましさとは、次のとおりです↓
- ムリなものはムリ
- あたりまえがないがしろ
- 届けたいところに届かない
それではこのあと、順番にお話をしていきます。
融資支援の現場で感じる悩ましさ
ムリなものはムリ
いうまでもありませんが、どんな会社も必ず融資が受けられるわけではありません。それでも、優秀な支援者がいれば、融資が受けられるのではないか?とおもわれるのであれば間違いです。
会社の状況によっては、どんなに支援をしようと「ムリなものはムリ」というケースもあります。にもかかわらず、「なんとしてでも融資が受けたい!」と迫る社長のハナシは見聞きするところです。
ほぼ例外なく、支援を求めるのが「遅すぎる」ということであり、支援を求められる側としては「もう少し早く言ってくれれば…」が本音になります。
したがって、身もフタもない話ではありますが、支援を求めるのであれば「切羽詰まる前」をおすすめするばかりです。
とはいえ、「ムリかどうかなど、やってみなければわからない」と、おもわれるかもしれません。だから、「ムリでもいいから、やるだけやってみてくれ!」と支援を求める社長はいるものです。
が、支援をする側にとって、資源(人手や時間など)が無限にあるわけではありません。だとすれば、その資源は「可能性が高いところに投下すべき」との考え方もあります。
などというと、冷たく聞こえるかもしれませんが。限られた資源のなかで、より多くの成果をあげようとするのであれば、当然の考え方でもあります。
もちろん、より多くの成果ではなく、目の前の1つの成果をとることもあるわけですが。融資支援を求める会社としては、切羽詰まるほど、支援が受けにくくなることは覚えておくのがよいでしょう。
あたりまえがないがしろ
銀行融資をスムーズに受けるにあたって、試算表や資金繰り表をつくりましょう。そのうえで、毎月、内容を更新しましょう。という、お話があります。
銀行融資を受けるかどうか以前に、社長が経営するにあたっては、あたりまえに大事なことではあるわけですが。そのあたりまえが、ないがしろにされていることは少なくありません。
つまり、あたりまえのことはさておいて、なにやらうまいテクニックを使って、融資を受けられないものかと考える…みたいな。そういった思考の社長もなかにはいる、ということです。
が、テクニックが活きるとすれば、それは「あたりまえ」の前提があってこそだといえます。あたりまえのこともできていなければ、銀行からの評価は悪くなるばかりです。
また、なかには「試算表や資金繰り表がなしでも、融資は受けられる」というコンサルタントや税理士もいます。たしかにそういうケースもありますが、本末転倒でしょう。
そもそも試算表や資金繰り表は、社長が経営するにあたっては、銀行融資を受けるかどうか以前に大事なものだからです。結果、長い目で見れば、銀行からの信用をえられません。
それでも、あたりまえがないがしろにされるのは、端的にいえば「メンドー」だからでしょう。試算表や資金繰り表をつくるのがメンドー、つくるための考え方や方法を学ぶのもメンドー。
そのメンドーを避けようとすれば、融資支援も「場当たり的」にならざるをえないことは理解しておきましょう。ですが、社長が本来求めるものは「安定的・戦略的」な融資であるはずです。
届けたいところに届かない
わたしは日々、銀行融資・銀行対応に関する発信を続けています。このブログのほかにも、YouTubeやメルマガ、Kindle本など。それらにより、融資支援のご依頼をいただいています。
そのうちの多くが、「おおむね有効な銀行対応ができている」というのが、わたしの感じているところです。おおむねできているうえで、「念のための確認」や「さらなる改善」を求めて、ご依頼をいただいているお客さまが多い、ということになります。
つまり、いまいま資金繰りで困っているわけではないわけです。
これを聞いて、もしかすると、「銀行融資の支援を求めるのは、資金繰りで困っている会社ではないのか?」と不思議におもわれるかもしれませんが。少なくともわたしの場合には、そうでもないということです。
ではなぜ、そのようなことになっているのか?
1つの仮説は、資金繰りで困っている会社ほど、情報収集や勉強をしていない(その必要性に気づいていない)ということです。だとすれば、わたしの日々の発信も、届けたいところには届いていない可能性があります。
なので、わたしは直接社長向けに発信をするだけではなく、税理士向けにも発信をするようになりました。税理士を経由して、その税理士の顧問先に情報を届けたい、ということです。
2023年12月に出版されたこちらの本も、その一環です↓
5年にわたり発信を続けていてもなお、届けたいところに届かないとのおもいがあります。これからも試行錯誤をしながら、ひとりでも多くの社長に、必要な情報を届けたいとの考えです。
まとめ
税理士として、銀行融資の支援をしています。すると、感じる悩ましさについて。一般に、融資の受けにくさの「原因」にもなっているところだろうとも考えて、お話をしてみました。
- ムリなものはムリ
- あたりまえがないがしろ
- 届けたいところに届かない