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いま借りて返せるか?という問いの立て方が間違っている

いま借りて返せるか?という問いの立て方が間違っている

会社が銀行融資を受ける際、「いま借りて返せるのか?」という問いを立て、借入を躊躇する社長がいます。でも、その問いには間違いがある。その理由について、お話をしていきます。

目次

もっともらしい問いではあるものの

会社の銀行融資について。融資を受けるか否かという場面で、次のような問いを立てる社長がいます。それは…

「いま借りて返せるか?」

つまり、いま借りるのはいいけれど、はたして返済できるかどうか?といった疑問です。

たしかに、もっともらしい問いではあるものの、本来必要なはずの借入まで遠ざけてしまいかねない点には、気をつけなければなりません。結果、ムダに資金繰りを悪くする会社があります。

とはいえ、借りたものは返さねばならないのだから、当然の問いだろう!との反論もあるわけで。そこでこのあと、「いま借りて返せるか?」の問いには間違いがある理由についてお話しします。

具体的には、次のとおりです↓

いま借りて返せるか?という問いは間違いである理由
  • あとで借りれるとは限らない
  • 借りたものをまんま返すだけ
  • 返さなくてもよい借入もある

これらについて、順番に解説していきます。

いま借りて返せるか?という問いは間違いである理由

あとで借りれるとは限らない

いま借りて返せるか?を考えるよりも、いま借りずにあとで借りられるのか?を考えましょう。ちなみに、あとで借りられるかどうかはわかりません。

いま、銀行が「融資できます」と言ったとしても、それは「将来にも融資できます」と言っているのではないからです。銀行は、あくまで「いまなら貸せる」と言っているにすぎません。

だとすれば、社長が考えるべきはひとつ。「今後、融資を受ける必要がありうるか?」です。この点でもし、未来永劫ぜったいに融資を受けることはないと断言できるのであれば、借入はやめればよいでしょう。

ところが、「いつか、融資を受けることはあるかもなぁ」というのであれば、「いま、融資を受ける」の一択だと、わたしはおすすめをします。繰り返しですが、あとになって融資を受けられるかはわからないからです。

ところが、なかには「困ったら貸してもらえる」と考えている社長がいます。最近では、コロナ禍での融資のイメージが強く、「業績が悪くても貸してもらえた」という事実を過信しているのです。

いうまでもありませんが、コロナ禍での融資は「超例外」であり、通常の融資とは異なります。放っておけば、国全体がおかしなことになってしまいそうな状況だったからこその「超例外」なのです。

よって、今後、自社がちょっと困っているくらいで、コロナのときと同じように融資をしてもらえることなどありません。コロナ禍のイメージをいつまでも引きずらないようにしましょう。

借りたものをまんま返すだけ

借入の正体を見誤っている社長がいます。「借入=負債だけが増える」との見方をしている社長です。負債が増えれば、「資産<負債」に近づくのであり、そうなると債務超過じゃないか!

と、心配をされるのであれば、それは間違いです。借入をしたときには、借入と同額のおカネ(預金)も増えます。なので、借入をした瞬間は「資産(預金)=負債(借入)」であり、借入することで債務超過になることはありません。

そこを見誤らないようにしましょう。借入とは本来、借りたおカネをまんま返せばよいだけであり、負担があるとすれば利息分のみなのです。それじゃあ、債務超過とはいったい何なのか?

会社はどうして債務超過になってしまうのか。赤字を出すからです。赤字によって、おカネ(資産)は減っていきます。端的にいえば、それが債務超過の原因です。

そのおカネが借入によるものだとすると、借りたおカネが赤字によって減ってしまうから、借入をした瞬間の「資産(預金)=負債(借入)」という均衡が崩れてしまう…

なので、赤字こそが債務超過の原因であり、借入(融資を受けること)は債務超過の原因ではありません。ここを「借入が債務超過の原因」だと誤解していると、本来必要なはずの借入まで避けることとなり、ムダに資金繰りを悪くします。

会社にとって、債務超過は避けるべきものですが、その原因を借入だとは考えないようにしましょう。極端をいえば、無借金の会社であっても、赤字によって債務超過になるわけですから。

返さなくてもよい借入もある

わたしは折にふれて、「借りられるうちに借りられるだけ借りましょう」とおすすめをしています。すると、「じぶんが返すわけではないのに無責任なこと言うな!」と叱られそうですが。

さきほどから言っているとおり、借りたものをまんま返すだけなので、「過度な心配」はやめましょう、という話にすぎません。それに、返さなくてもよい借入もあります。

いわゆる経常運転資金のための借入です。経常運転資金とは、算式でいうと「売掛金+棚卸資産ー買掛金」であり、この分のおカネがないと、会社の資金繰りは危うくなります。

そこで、経常運転資金分のおカネを銀行から借りるのは、財務のセオリーです。このとき、経常運転資金分のおカネについて、「短期継続融資」という借り方ができると、毎月の返済はなくなります。

たとえば、短期の手形貸付により借りた場合。1年後に決済期日がきたら、審査のうえで、期日をまた1年更新する。なので、実質的な返済はなし。という借り方があります。

また、銀行に当座貸越を設定してもらうことができれば、限度額の範囲内は、借りたり返したりが自由です。これもまた、実質的な返済をなしにする方法だといえます。

ところが、経常運転資金分のおカネを、毎月分割返済の借り方をしていると、そうはいきません。つまり、借り方しだいなのです。だから社長は、返さなくてもよい借入もあることを理解しておきましょう。

短期継続融資は、銀行から見るとリスクがあるため(貸しっぱなしになるから)、銀行のほうから勧めてくれることは少ないものです。社長のほうから、銀行に相談をしてみましょう。具体的な相談のしかたなどについては、動画にまとめました↓

まとめ

会社が銀行融資を受ける際、「いま借りて返せるのか?」という問いを立て、借入を躊躇する社長がいます。でも、その問いには間違いがある。その理由について、お話をしてみました。

そこを知らずに、本来必要なはずの借入まで遠ざけた結果、ムダに資金繰りを悪くすることがないように気をつけましょう。

いま借りて返せるか?という問いは間違いである理由
  • あとで借りれるとは限らない
  • 借りたものをまんま返すだけ
  • 返さなくてもよい借入もある
いま借りて返せるか?という問いの立て方が間違っている

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