会社が銀行から借入するときの目安額(どれくらい借りられるか)について。運転資金と設備資金とに分けて、解説をしていきます。銀行融資の超基本として押さえておきましょう。
まずは予備知識から
会社の銀行融資について。今回は、「超基本」を学ぶシリーズ!ということで、運転資金・設備資金を銀行から借入するときの目安額についてです。
つまり、運転資金や設備資金を借りるといっても、どのくらい借りることができるのか?というお話になります。ご質問も多いところですから、「そういえば、よくわからないなぁ…」とおもわれるようでしたら、このあとお話を確認しておきましょう。
で、本編の前に、少しだけ予備知識について。運転資金とは、設備資金とは?
意外と、明確に回答できない社長も少なくありませんので、ここで押さえておきましょう。まずは、設備資金から。設備資金とは、設備投資をするためのおカネです。
たとえば、工場用の土地を買う、店舗用の建物を買う、製造用の機械を買う、業務用のパソコンやソフトウェアを買う、営業用のクルマを買う、などが設備投資にあたります。
いっぽうで、運転資金とは。設備資金以外のおカネです。具体的には、仕入代金の支払いや給料や家賃の支払いなど。とにかく、設備投資のためのおカネ(設備資金)以外は、運転資金です。
それら運転資金と設備資金のことを、「資金使途(しきんしと)」と呼びます。銀行から借入をするときには、必ず資金使途が必要です。銀行は、資金使途が明確かつ適正でなければ融資はしません。
というわけで、社長はまず、今回借りようとしているのが運転資金なのか、それとも設備資金なのかをはっきりしておきましょう。そのうえで、借入できる金額の目安はどれくらいなのか?について、このあとお話をしていきます。
運転資金を借入するときの目安額
それでは、運転資金を借入するときの目安額から見ていきましょう。結論は、次のとおりです↓
売掛金・受取手形+棚卸資産ー買掛金・支払手形
自社の試算表(あるいは決算書)のうち、貸借対照表から上記の勘定科目の金額を抜き出して計算してみましょう。その結果が、仮に1,000万円だとすれば、それが運転資金と借入できる目安額になります。
なお、すでに運転資金として700万円借入しているとしたら、いま運転資金として借入できる目安額は、「1,000万円ー700万円」で300万円です。1,000万円ではありませんのでご注意を。
ちなみに、さきほどの算式はどういう意味なのか?
まず、売掛金・受取手形は、回収しておカネになるのを待っている金額です。棚卸資産(在庫)も、売却しておカネになるのを待っている金額です。よって、資金繰りを回すためには、売掛金・受取手形や棚卸資産の分だけ、おカネが必要になります。
これに対して、買掛金・支払手形は、支払を待ってもらっている金額であり、「売掛金・受取手形+棚卸資産」とは逆の性質を持つものなので、差し引いているわけです。
結果、運転資金の額が算出されます。銀行も、運転資金分のおカネがなければ、会社の資金繰りが厳しくなることはわかっていますので、運転資金の「範囲内」の融資には協力的・積極的です。
銀行が、協力的・積極的なのには、もう1つワケがあります。それは、運転資金の借入について、返済原資としての利益は必要ないからです。理屈としては、利益の有無は関係ありません。
なぜなら、売掛金・受取手形や棚卸資産を「現金化」すれば、そのおカネで回収はできるからです。これは、会社から見れば、運転資金の借入は、返済するために利益は必要ないことを意味します。
借入というと、返済原資としての利益が必要不可欠とのイメージがあるかもですが、必ずしもそうではありません。
ここで、注意点があります。さきほど、銀行は運転資金の「範囲内」の融資には協力的・積極的だといいました。逆に、運転資金の範囲を超える額の融資には消極的です。
この点、銀行は、「売掛金・受取手形」のなかに不良債権や架空債権がないか、「棚卸資産」のなかに不良在庫や架空在庫がないかを気にしています。それらは、現金化ができないものだからです。
よって、貸借対照表に掲載されている金額に、銀行は疑いの目を向けていることは覚えておきましょう。売掛金・受取手形や棚卸資産が、前年よりも大幅に増えていたり、同業他社の水準よりもだいぶ多い、といった場合には、その理由を銀行に対して説明することが大切です。
放っておくと、運転資金の「範囲内」とはみなされず、運転資金の借入がじゅうぶんにできなくなるおそれがあります。
設備資金を借入するときの目安額
続いて、設備資金です。設備資金の目安は、きわめてシンプル。設備投資の対象になる資産の金額が目安になります。仮に、1,000万円の機械を買うなら、1,000万円が目安であり上限です。
ただし、返済原資としての「利益」が必要になります。もう少し具体的にいうと、設備投資の効果としてえられる利益です。
1,000万円の機械を買うなら、その機械によってつくられる、あらたな製品の利益によって返済できるのか?そこで、設備投資計画が重要になります。
計画書をつくり、それを銀行に提示・説明することで、1,000万円の借入を利益で返済できると伝えられるようにしましょう。仮に、機械の耐用年数が10年であれば、1,000万円÷10年で、1年あたり100万円の利益が出せるのかどうか。
借入しようとする金額が大きいほど、計画書の必要性は高まりますし、計画書の内容についてもより厳しく見られることになります。
この点、いちぶ自己資金を投入するのも1つの方法です。設備投資額1,000万円のうち、300万円は自己資金、残りは銀行借入とすれば、返済に必要な利益を抑えられるので、借入の難易度は下がります。
自己資金の目安としては、設備投資額の1〜3割くらいです。あまり少なすぎると効果をえにくくなりますし、多すぎると手元のおカネが一気に減るので資金繰りを痛めてしまいます。
というわけで、資金繰りを考えるのであれば、できるだけ全額借入がベストです。それができるように、設備投資計画をしっかり策定しましょう。
なお、設備資金の借入を返済するための利益とは、理屈のうえでは「将来」の利益です。つまり、設備投資をしたあと、その設備から将来生み出されるであろう利益になります。
とはいえ、将来とは「不確定・不確実」なものであり、いくらしっかり計画を立てても、そのとおりにいくとは限りません。ゆえに、銀行は「いまの利益」も検討材料にしています。
いま時点(設備投資前)で、あるていど利益が出ていれば、もし設備投資による利益が計画ほどではなかったとしても、従来の利益で設備資金の借入返済を補える。というのが、銀行の見方です。
なので、いま利益が出ているときのほうが設備資金の融資は受けやすいものであり、逆に、赤字のときなどは設備資金の融資が受けにくくなることは覚えておきましょう。
まとめ
会社が銀行から借入するときの目安額(どれくらい借りられるか)について。運転資金と設備資金とに分けて、お話をしてきました。銀行融資の超基本として押さえておきましょう。
目安額がわかっていれば、銀行に融資の相談・依頼をするのに役立つはずです。