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既存事業が赤字で新規事業の融資は高難度

既存事業が赤字で新規事業の融資は高難度

銀行融資は、時と場合に応じて難易度には差があります。この点、既存事業が赤字のときに新規事業の融資を受けるのは高難度です。その理由と対策について、お話をしていきます。

目次

銀行融資には難易度がある

会社の銀行融資について。その融資には、時と場合に応じて難易度には差があります。たとえば、決算書が黒字であれば融資は受けやすく、赤字であれば融資は受けにくいのは一例です。

だとすれば、難易度が高いときに融資を受けようとするのは避けるべきであり、難易度が低いときに融資を受けるのが得策であることをわかるでしょう。

この点で、とくに難易度が高い融資があります。それは、既存事業が赤字のときに、新規事業の融資を受けようとすることです。とはいえ、意外とやりがちなので気をつけなければいけません。

というわけで、このあと、既存事業が赤字のときに、新規事業の融資を受けようとすることがなぜ高難度なのか?それなら、新規事業の資金はいかにして確保すればよいのか?お話をしていきます。

既存事業が赤字で新規事業の融資は高難度なワケ

既存事業が赤字のときに、新規事業の融資を受けようとするのは、意外とやりがちだと前述しました。どうして、やりがちなのか?いうまでもなく、新規事業で挽回をはかろうとするからです。

既存事業が赤字で利益が出ない。このままでは、会社がつぶれてしまう。そうだ、新規事業にチャレンジしよう。みたいなハナシは、よく見聞きするところでもあります。

とはいえ、新規事業には「準備」におカネがかかるものであり、そのおカネはあるのかといえば…実は、なかったりもするものです。なぜなら、既存事業が赤字で資金繰りが悪化しているから。

だったら、銀行から借入をすればいい。と、社長は考えます。既存事業の赤字を挽回するために、新規事業をはじめます。だから、おカネを貸してください。もっともらしい理由ではあります。

が、銀行は渋い顔をするでしょう。新規事業にはリスクがあるからです。どのような事業でも、必ずしもうまくいくわけではありません。では、もし新規事業がうまくいかなかったら?

既存事業は赤字、新規事業も赤字では、銀行は貸したおカネを回収できなくなってしまいます。銀行が、融資に慎重になるのも当然でしょう。

また、新規事業が既存事業から「かけ離れている」ような場合は、なおさらです。新規事業が、既存事業から見て、まったくの異業種というケースがあります。建設業の会社が、飲食業をはじめるとか。

ところが、そういった会社の多くが「失敗」するようすを、銀行はたくさん目にしています。そもそも経験がない異業種での成功は、クチでいうほどカンタンではないのです。

ゆえに、銀行はいっそう慎重になります。既存事業が赤字のときに、新規事業の融資は高難度であるのは、そういう理由があることを理解しておきましょう。

既存事業が黒字のときに新規事業、がセオリー

既存事業が赤字で新規事業の融資は高難度なワケ、についてお話をしました。だとすれば、既存事業が黒字のときに借りればいいとわかります。

ですが、既存事業の調子がよいときほど、既存事業が赤字になることは想定できず、新規事業をはじめようという発想にはなりにくいことを覚えておかなければいけません。

黒字のときこそ新規事業のチャンス!であることを忘れない、ということです。新規事業の準備に必要なおカネを借りたいのであれば、既存事業が黒字のうちにです。

ところで、新規事業の融資を受けるときには「事業計画」が必要になります。前述したとおり、新規事業はリスクをともなうものですから、いかに事業を立ち上げるかの計画は必須です。

銀行もそれをわかっているので、新規事業の融資の際には、会社に対して計画を求めることになります。このとき、ポイントになるのが「既存事業の黒字>新規事業の赤字」です。

新規事業も、最終的には黒字になる計画を立てるわけですが、多くの事業は最初は赤字で、徐々に黒字に転換していくのが一般的だといえます。

すると、新規事業の初期の段階では、あるていどのあいだ、赤字が続くわけです。だとすれば、既存事業については、新規事業の赤字を補うだけの黒字があったほうがよいとわかるでしょう。

銀行も、そこを見ています。新規事業の赤字を補えるだけの黒字が、既存事業で出せるのであれば融資はしやすい。逆に、補えるだけの黒字が出ていなければ融資はしにくいということです。

この点、銀行に提示する数値計画(損益計画・資金繰り計画)は、既存事業と新規事業とで分けてつくるようにしましょう。既存事業の利益と新規事業の利益、おのおのをあきらかにするためです。

既存事業と新規事業とをあわせる、つまり、全社一括の数値計画にしてしまうと、おのおのの利益がわからず、銀行は融資の検討・判断がしづらくなってしまいます。

だから借りられるときに借りておく、が財務戦略

新規事業の融資を受けるときのポイント(既存事業の黒字>新規事業の赤字)について、お話をしました。ただそれでも、新規事業をはじめるタイミングで、必ずしも融資を受けられるわけではありません。

数値計画でいくら利益が出るとしても、「未来」のことは誰にもわからないからです。計画どおりにはいかないかもしれないぞ、と慎重に考えるのが銀行でもあります。では、どうするか?

既存事業が黒字であるうちに、そして、新規事業をはじめる前に借りておくことです。つまり、借りられるときに借りておくこと、それが未来に備える財務戦略です。

にもかかわらず、多くの社長は、借りたくなってから借りようとします。既存事業が赤字になって資金繰りが苦しくなってから、リスクがある新規事業をはじめたからおカネが必要になって、借りようとするのです。

それでも、それでも借りれることはあるでしょう。ですが、借りられるときに借りるのに比べれば難易度は数段上がってしまいます。だから、その前に借りておくのがおすすめです。

繰り返しになりますが、借りられるときとは、既存事業が黒字であるうちであり、少なくとも赤字になる前をいいます。社長が意識をしていない限りは、借入が必要だとは考えないときです。

借りられるときに借りておくことが、中小企業の財務戦略であることを意識しておきましょう。さらにいえば、それを実践することが大切です。

まとめ

銀行融資は、時と場合に応じて難易度には差があります。この点、既存事業が赤字のときに新規事業の融資を受けるのは高難度です。その理由と対策について、お話をしてきました。

既存事業が赤字のときに新規事業…というのは意外とやりがちなので、気をつけましょう。

既存事業が赤字で新規事業の融資は高難度

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