銀行借入できること自体、信用でもありますが。なかでもとりわけ、ステータスになる銀行借入はあるものです。それはいったい、どのような銀行借入なのか。お話をしていきます。
借金も信用になる
銀行借入とひとくちにいっても、いろいろあります。つまり、いろいろな融資商品があり、いろいろな借りかたがある、ということです。
そんな銀行借入について、「ステータスがある」といったら驚かれるでしょうか。いうなれば借金でありながらも、そのいっぽうで、「対外的な信用」になる借入もあるのです。
もっとも、銀行借入できること自体、信用でもあるわけですが、なかでもとりわけ、ステータスとして機能する銀行借入を取り上げてみたいとおもいます。次のとおりです↓
- プロパー融資
- 経営者保証なし
- 当座貸越
- 商工中金
- 社債(私募債)
このあと、順番に確認をしていきましょう。
ステータスになる銀行借入いろいろ
プロパー融資
民間金融機関からの融資は、大きく2つに分かれます。信用保証協会の保証付き融資と、プロパー融資です。前者は文字どおり、信用保証協会の保証が付いている融資であり、会社が返済できないときには、信用保証協会が代わりに銀行に返済をすることになります。
ゆえに、保証付き融資は、銀行にとってリスクが小さく貸しやすい融資です。いっぽうのプロパー融資には、信用保証協会の保証はありません。会社が返済できないときには、銀行が100%の損をこうむることになります。銀行にとっては、リスクが大きく貸しにくい融資です。
ということは…それでもプロパー融資を受けられる会社には、相応の信用があることがわかるでしょう。事実、プロパー融資は「良い会社」の証でもあります。では、良い会社とは?
端的にいえば、業績が良い会社です。継続的に利益が出ていて、自己資本が厚く(利益剰余金が多い)、現金預金の残高もじゅうぶんである(平均月商の2か月分以上)。そんな会社です。
たとえば、A銀行からプロパー融資を受けることができれば、B銀行からもプロパー融資を受けやすくする効果があります。プロパー融資は、ステータスになるからです。
というわけで、まずは自社の業績を良くすること、そのうえでタイミングを見て、プロパー融資を銀行に依頼してみましょう。銀行は、保証付き融資で貸したいものなので、こちらから依頼をすることもポイントになります。
経営者保証なし
保証付き融資もそうですが、銀行はできるだけリスクを小さくすることを考えます。その手段の1つが「経営者保証」です。つまり、融資をするにあたり、社長に連帯保証を求めることになります。社長としては、なければないほうがよいものです。
では、どうしたら経営者保証なしにできるのか?端的にいうと、これまた「業績が良い会社」ということになります。であれば、銀行としてもリスクが小さくなるからです。
これに対して、業績が悪い会社はどうでしょう。銀行としては、回収不能リスクが高まることから、おいそれと経営者保証をなしにするわけにはいきません。ゆえに、経営者保証なしで融資を受けられることは、ステータスになるのです。
そんな経営者保証については、潮目が変わりつつあります。以前は、経営者保証ありがあたりまえであったところ、最近では、新規融資の半分ていどが経営者保証なしになっている、ということはご存知でしょうか(金融庁から公表されています)。
業績が良い会社にとっては、経営者保証を外す好機です。ぜひ、銀行に依頼をしてみましょう。プロパー融資と同様に、1つの銀行が経営者保証を外してくれれば、その実績をもって、ほかの銀行にも経営者保証を外してもらう交渉がしやすくなります。
当座貸越
当座貸越とは、銀行が決めた限度額の範囲内であれば、自由に借りたり返したりができる借りかたです。よって、銀行から当座貸越を認めてもらえれば、借入の自由度が上がり、会社は資金繰りがラクになります。
ところが、銀行から見れば「貸しっぱなし」になることもあるため、リスクが高い融資です。であれば、やはり「業績が良い会社」が前提になるとわかるでしょう。銀行のほうから、わざわざ当座貸越をすすめてくることは少ないので、業績の良い会社はこちらから依頼することが大切です。
当座貸越を認めてもらうことができたら、ほかの銀行にもアピールをしていきましょう。具体的には、当座貸越を利用して借入をするということです。逆に、当座貸越を認めてもらったのに、まったく利用せずにいると、ほかの銀行には当座貸越の存在がわかりません。
この点、とくに決算日には、当座貸越を利用して借入をしておくのがおすすめです。すると、決算書(勘定科目内訳明細書)にも記載されるため、ほかの銀行の目にも止まることとなります。
なお、当座貸越は基本的に「経常運転資金」が対象です。経常運転資金とは「売掛金+棚卸資産ー買掛金」で計算される金額であり、いわゆる現金商売の会社には存在しません。が、最近では、経常運転資金がないような会社であっても、当座貸越を利用できるケースが散見されます。
業績が良い会社は、ひとまず銀行に依頼をしてチャレンジするのがよいでしょう。
商工中金
政府系金融機関の1つに、商工中金(商工組合中央金庫)があります。その商工中金から借入をしていることも、ステータスになります。ほかの銀行から見ると、「商工中金から借りられるほどの良い会社」として信用になる、ということです。
そもそも、商工中金は「あるていどの規模感がある会社」が対象になります。目安として、年間売上高が5億円以上、1回の借入が3,000万円以上です。規模の大きさも、良い会社かどうかをはかる指標ではあります。
また、規模感だけではなく、商工中金は数字に対してもシビアです。業績の良し悪しについてはもちろん、粉飾決算に対する厳しさにも定評があります。つまり、粉飾決算をしているような会社は、商工中金から融資が受けられない(業績が良くても)ということです。
誤解を恐れずにいえば、商工中金に比べると、ほかの金融機関は粉飾決算に対する甘さがあります。少々の粉飾であれば、とくにおとがめなしで借入できている…というケースもあるでしょう。
ですが、商工中金から借入をしたいのであれば、それは通用しないものと考えなければいけません。だからこそ、商工中金から借入をすることが、ほかの銀行に対してステータスにもなるのです。
会社が相応の規模感になったら、ぜひ、商工中金からの借入にもチャレンジしましょう。
社債(私募債)
銀行から、社債の提案をされることがあります。ここでいう社債とは、銀行が引受人となる私募債です。銀行借入とは異なりますが、資金調達の手段としては同じことであり、銀行からおカネを借りている点では変わりありません。
その社債を会社が利用するメリットとして、ステータスが挙げられます。社債を発行するには「一定の条件(適債基準)」があるため、社債を発行できる(銀行が引き受けてくれる)くらい良い会社だ、というアピールになるのです。
ちまたで見られる社債発行のプレスリリースなどは、そのアピールが目的となります。が、いっぽうで、社債の利用にはデメリットもあります。いちばんは、手数料の高さです。
社債を発行するにあたって、銀行は会社に対して手数料の支払いを求めます。加えて、社債利息の支払いもあるのですから、その負担がいかほどかを把握することが大切です。つまり、同じ金額を通常の融資で借りた場合の負担と、どちらが「割安」なのか。
通常の融資のほうが割安なのであれば、わざわざ社債を利用する必要はないという考え方もあるでしょう。そのうえ、社債の提案をされるくらい良い会社であれば、わざわざ社債でアピールをせずとも、すでにじゅうぶんな融資を受けられるだけの信用があるともいえます。
したがって、基本的には社債の利用はおすすめしないのが私見です。
まとめ
銀行借入できること自体、信用でもありますが。なかでもとりわけ、ステータスになる銀行借入はあるものです。それはいったい、どのような銀行借入なのかについてお話をしました。
自社の信用を上げて、より銀行借入しやすくするためにも、ステータスになる銀行借入を目指してみるのはいかがでしょうか。
- プロパー融資
- 経営者保証なし
- 当座貸越
- 商工中金
- 社債(私募債)