銀行に試算表を信じてもらう方法についてお話をします。融資を受けようと試算表を提示してみたものの「次の決算を見てから」と言われてしまう…というような会社は押さえておきましょう。
次の決算を見てから、と言われる
銀行融資に関する相談として、「銀行に試算表を信じてもらえない」というものが挙げられます。つまり、融資を受けようと試算表を提示してみたものの「次の決算を見てから」と言われてしまう…みたいな。
端的にいえば、試算表の内容は信用ならないので、決算書ができるまでは融資ができないということです。
決算日が近い場合にはいたしかたないにしても、決算日まで間がある(数ヶ月以上)にもかかわらず信じてもらえないのでは、いま融資を受けたい社長であれば困ってしまいます。
では、どうしたら銀行に試算表を信じてもらえるのか。おもな方法は次のとおりです↓
- 定期的に提示する
- 決算書と整合性がある
- 口座内での取引が多い
このあと、順番に確認を誌ていきます。
銀行に試算表を信じてもらう方法
定期的に提示する
そもそも、銀行に試算表を信じてもらえないのはなぜなのか。試算表に「ウソ」があるケースが少なくないからです。ここでいうウソには、故意もあれば、故意ではないものも含まれます。
まず、故意とは粉飾(利益や資産の水増し)です。融資を受けたいがために、粉飾をする会社はあります。さすがに決算書では粉飾をしないにしても、試算表では「ひとまず」粉飾をする会社もあるのです。ゆえに、銀行は試算表の粉飾を警戒しています。
この点、試算表を「定期的に提示している」と、銀行の警戒はやわらぐものです。定期的に提示をするとなると、会社は試算表での粉飾がしづらくなります。とくに、決算が近づいてからの粉飾は、決算書で帳尻を合わせづらくなるからです。
たとえば、期首から9ヶ月目の売上高合計が1億円だったとします。ここで、試算表の粉飾をして、売上高合計を1.5億円にしたらどうなるか。決算時点で1.5億円には届かなかった場合には、困ったことになるでしょう。帳尻を合わせるためには、決算書まで粉飾しなくてはいけません。
極端な例ではありましたが、状況としては似たようなケースがいろいろと考えられます。なので、試算表を定期的に提示することが、銀行に対して「信用の証」にもなるのです。
なお、定期的に提示するためには、試算表を定期的に作成する必要があります。年に1回、融資を受けようとするタイミングでだけ、試算表を提示するから銀行に信じてもらえないのです。
だから、試算表は毎月つくること。そのうえで4半期にいちど、銀行に試算表を提示するのがよいでしょう。毎月担当者が来訪してくれる銀行や、メール添付で送れる銀行であれば、毎月提示するのもおすすめです。
決算書と整合性がある
試算表にはウソがある。ウソには故意もあれば、故意でないものもあるといいました。故意が粉飾であることは前述したとおりです。
いっぽうで、故意ではない粉飾とは何なのか。単純に、精度が低い試算表です。わかりやすい例を挙げれば、毎月棚卸しをしていない、毎月減価償却をしていない、など。すると、当然ながら試算表の内容は不正確なものとなり、場合によっては粉飾と同じく、利益や資産の水増しが生じます。
たとえば、年間で1,200万円(ひと月あたり100万円)の減価償却費が発生する会社があったとして。毎月の試算表では、減価償却費を計上せず、決算でまとめて計上していたとします。
このとき、試算表では毎月90万円の利益が出ていれば、黒字に見えるわけですが、いざ決算書ができあがると一転赤字です。銀行としては、「試算表の利益は何だったのか」と落胆するでしょう。
そうなると、以後は試算表を提示しても「精度が低い試算表」として、信じてもらえなくなります。これを避けるためには、試算表の精度を上げることです。銀行に対しては、「試算表も決算書と同じ精度でしあげています」といえるようになりましょう。
その結果、決算書との整合性がある試算表ができあがります。つまり、試算表の利益と、決算書の利益とで「大きなズレ」が生じない状況です。これができると、試算表も信じてもらいやすくなります。
口座内での取引が多い
銀行が試算表を信用できない理由は、ほかにもあります。試算表だけだと裏が取れない、というものです。言ってみれば、試算表は仕訳(経理処理)しだいで、どうにもできてしまいます。
ところが、その銀行の口座内の取引であれば、そうはいきません。たとえば、売上代金の入金です。A銀行に試算表を提示して融資を受けようとする場合、A銀行は自行の口座内の取引を確認します。
このとき、試算表の売上高について、A銀行の口座内に入金取引があれば、A銀行は「試算表が正しい」との確信を持てるわけです。が、入金が他行の口座であった場合には、A銀行は裏が取れないことになります。
これが、試算表を信用できない理由になるのです。だとすれば、試算表を信じてもらいやすいのは、口座内取引が多い銀行だとわかります。通常は、メインバンクであるはずです。
メインバンクは融資を受けやすい、積極的に融資をしてくれるというハナシがありますが、その理由の1つとして、「口座内取引が多い」ことが挙げられます。
したがって、期中に試算表をもとに融資を受けたいのであれば、口座内での取引が多い銀行(≒ メインバンク)に、融資を依頼するようにしましょう。ろくろく口座内の取引がないような銀行に試算表を持ち込んでも、信じてもらえないのは当然です。
まとめ
銀行に試算表を信じてもらう方法についてお話をしました。融資を受けようと試算表を提示してみたものの「次の決算を見てから」と言われてしまう…というような会社は押さえておきましょう。
割合でいえば、試算表を信じてもらえないケースが多いものです。
- 定期的に提示する
- 決算書と整合性がある
- 口座内での取引が多い