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銀行融資を受けるなら、いくらまでの赤字なら許されるのか。その目安

銀行融資を受けるなら、いくらまでの赤字なら許されるのか。その目安

銀行融資を受けるなら、赤字はマズい。とはいえ、赤字になってしまうことだってある。では、いくらまでの赤字であれば、それでも融資を受けられる望みはあるのか。その目安をお話しします。

目次

赤字がマズいことは知っている

会社が銀行融資を受けるにあたって、「赤字はマズい」というのはご存知のことでしょう。赤字は返済力の不足を意味するため、銀行としては融資をする「道理」が立たないからです。

とはいえ、事業を続けていれば、調子の良いときもあれば悪いときもあります。つまり、赤字のときだってある、ということです。では、いくらまでの赤字ならば許されるのか?

赤字とはいえ、それでも融資が受けられるとしたら、いくらまでの赤字であれば望みがあるのか。極論、ケースバイケースではありますが、それではハナシにならないので、ここでは「ひとつの目安」を提示することにします。

その目安とは…

債務超過にはならないように

銀行融資を受けたいのであれば、もっとも避けたい財務状態が「債務超過」です。文字どおり、債務が超過している状態をいいます。決算書(貸借対照表)でいうと「資産<負債」の状態です。

この場合、資産をすべて現金化しても負債を解消できないことから、きわめて危険な状態だといえます。ゆえに、すべての銀行がすべからく嫌うのが「債務超過の会社」です。

ところで、債務超過とは「純資産<0」と言い換えることもできます。その純資産を算式で表すと、「資本金+利益剰余金」です。このうち、資本金が株主からの出資であることは問題ないでしょう。

問題は、利益剰余金です。なにが問題かといえば、「利益剰余金とは何なのか」を知らない社長が少なくないところにあります。では、利益剰余金とは何なのか?

創業から現在までの「税引後利益の累計額」です。つまり、黒字であれば利益剰余金は増えるし、赤字であれば利益剰余金は減ります。そして、過去の黒字よりも赤字が多ければ、利益剰余金はマイナスになります。

結果、利益剰余金のマイナスが資本金の額を超えると、「純資産<0」となり債務超過です。と、ここまでお話をすれば、いくらまでの赤字であれば望みがあるかがわかるでしょう。

そう、「債務超過にはならないところまで」です。

たとえば、前期の決算書を見たときに、「資本金 300万円、利益剰余金 マイナス200万円」だったとします。この場合、当期の税引後利益が「マイナス100万円」を超えて赤字になるようだと債務超過です。

よって、事例のケースでは「許される赤字は100万円まで」が、1つの目安になります。というわけで、社長は常に、決算書の利益剰余金の額を把握しておくようにしましょう。

どれだけの黒字を出せばよいのか

ここまで、いくらまでの赤字が許されるのかについてお話をしました。いっぽうで、赤字ではなく黒字を出せばよいということにはなりますが、どれだけの黒字を出せばよいのか?

黒字を出すのもカンタンではなく、際限なく黒字を増やせるものでもありませんから、目安がほしいということもあるでしょう。ここでもまた、利益剰余金がヒントになります。

繰り返しですが、赤字が積み上がると利益剰余金がマイナスになるといいました。そのマイナスが資本金を超えると債務超過になる、ともいいました。そして、会社は債務超過を避けねばなりません。

ということを考えたときに、「できれば3年ていどの赤字に耐えられるくらい」の利益剰余金があると安心だといえます。

たとえば、「資本金 300万円、利益剰余金 600万円」の会社があったとして。自社のこれまでを振り返ってみたときに、1年で赤字が300万円くらい出ることが想定されるとしたら。

仮に3年のあいだ、300万円の赤字が続けば、利益剰余金はマイナス300万円です(600万円ー300万円×3年)。このとき、純資産は「資本金 300万円+利益剰余金 マイナス300万円」なので、ギリギリ債務超過を免れることができます。

以上をふまえて、事例の会社では「利益剰余金が600万円になるくらいまで黒字を出す」というのが1つの目安です。少しずつでも黒字を出して、利益剰余金を600万円まで積み上げることになります。

すると、少々のあいだ赤字が続いても債務超過にはなりません。銀行から見ても、赤字に耐えられる会社として、自社の評価を上げることにもつながります。

自社が目指す財務状態として、「できれば3年ていどの赤字に耐えられるくらい」を目標にしてみましょう。

利益を出すにはどうすればよいのか

債務超過を避けるためにも、目標となる利益剰余金を積み上げるためにも、黒字が必要であることはわかりました。つまり、会社は利益を出さねばならないということです。

いやいや、そんなことはわかっているし、それがカンタンではないから苦労をしているんだ。そう、おもわれるかもしれません。では、どうしたら利益を出すことができるのか?

やはり、ケースバイケースではありますし、具体的な手段はいろいろあるでしょう。それでもあえて、多くの中小企業に役立つであろう手段を挙げるとしたら「値上げ」です。

自社の商品・サービスの販売価格を引き上げる。これにより、利益が増えます。あたりまえのことではありますが、そのあたりまえができていない中小企業はけして少なくありません。

そのあたりは、各種の統計・調査結果でもあきらかです。ではなぜ、値上げができないのか。商品力がないから?たしかに、そのケースもあるでしょう。

ですが、それよりも多いのは「値上げができるのに、値上げをしていない」というケースです。値上げをしたら既存のお客さまにご迷惑をかけてしまう、客離れが起きてしまう…などの不安から値上げをしない社長がいます。

とはいえ、長い目でみれば、コストは上昇を続けているわけで(人件費や物価の高騰)、コスト削減だけでどうにかできるものでもありません。大企業がこぞって値上げをしているのが、その証拠です。

にもかかわらず、資金力で大企業に劣る中小企業が、価格を据え置いてやっていけるわけがありません。

長きにわたって値上げをしていない、価格を据え置いている会社ほど値上げに踏み切りましょう。相対的に見ても「安すぎる」水準にあるはずですから、お客さまの許容度も高いといえます。

すると、値上げをしたことで多少の客離れはあっても、値上げをした分、トータルの利益としてはむしろ増えるケースが多いものです。

また、客離れについては、誤解を恐れずにいえば「お客さまを選ぶ」ことでもあります。価格が安くなければ買ってくれないお客さまは、本当のお客さまとはいえません。よいお客さまとお付き合いをしましょう。

そのためには、値上げをしつつ、より品質を上げていく努力が必須です。それがまた、次の値上げの厳選にもなります。

まとめ

銀行融資を受けるなら、赤字はマズい。とはいえ、赤字になってしまうことだってある。では、いくらまでの赤字であれば、それでも融資を受けられる望みはあるのか。その目安をお話ししました。

ひるがえって、どれだけの黒字を出せばよいのか。そもそも利益を出すにはどうしたらよいのかも、押さえておくようにしましょう。資金繰りの良し悪しにかかわるところです。

銀行融資を受けるなら、いくらまでの赤字なら許されるのか。その目安

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