週刊/税理士ジョーの銀行融資マガジン 購読受付中

借入残高がコロナ融資ばかりの問題点

借入残高がコロナ融資ばかりの問題点

コロナ融資の返済が本格化したいま、自社の借入がコロナ融資ばかり…という会社があります。つまり、コロナ融資以外の借入がない。このときの問題点を取り上げてみます。

目次

新型コロナも過去のもの

いまは、2024年4月1日。新型コロナも過去のものとなりつつありますが、いまなお、コロナ時の借入が残っている会社は少なくありません。また、据え置いていた元金返済がようやくはじまった、という会社もあるでしょう。

ちなみに、ここでいう「コロナ時の借入」とは、いわゆるコロナ融資(実質無利子・無担保のゼロゼロ融資)のことであり、多くの会社が利用した融資制度です。

そのコロナ融資について。自社の借入残高を見たときに、コロナ融資しかない。あるいは、ほとんどがコロナ融資であり、それ以外の融資で借入はしていない。というのであれば、気をつけましょう。

なぜなら、借入残高がコロナ融資ばかりという状況には、いくつかの問題点が挙げられるからです。具体的には、次のとおりとなります↓

借入残高がコロナ融資ばかりの問題点
  • 折り返しができない
  • 銀行が及び腰になる
  • プロパー融資が受けられない

それではこのあと、順番に確認をしていきましょう。

借入残高がコロナ融資ばかりの問題点

折り返しができない

コロナ融資は、信用保証協会の保証が付いた融資です。その保証には「限度額」があり、一般保証と特別保証とに分かれます。

このうち一般保証は、無担保であれば8,000万円が限度です。いっぽうの特別保証は、一般保証とは別枠の保証であり、コロナ融資は特別保証にあたります。

そのうえで、一般保証の融資には「折り返し」があり、コロナ融資(特別保証)には「折り返し」がないことを理解しておきましょう。折り返しとは、当初の借入額まで借り直すことです。

たとえば、当初1,000万円の融資を受けて、その後に毎月返済を続けることで400万円を返済したとします(借入残高600万円)。ここで400万円を借りて、当初の借入残高1,000万円まで戻すのが「折り返し」です。

銀行や信用保証協会にしてみれば、いちどは1,000万円まで貸した実績があるし、その後にきちんと返済をしてくれているのだから、また1,000万円までは貸しても大丈夫だろうと考えます。ゆえに、折り返しは比較的受けやすい融資です。

この点、一般保証の融資であれば、定期的な折り返しによって、資金繰りを安定させることができます。これは、会社にとってメリットでしょう。

ところが、コロナ融資は「特別」な融資であり、借りたら返しておしまいです。つまり、折り返しの考え方がありません。よって、自社の借入がコロナ融資ばかりとなると、折り返しはできないことから、資金繰りが不安定になります。

ですから、一般保証の保証付き融資なり、プロパー融資(信用保証協会の保証がない融資)なりを受けることで、折り返しができる状況をつくるのがよいでしょう。

銀行が及び腰になる

信用保証協会の保証は、責任共有が原則です。もう少し具体的にいうと、信用保証協会が8割で、銀行が2割。つまり、保証付き融資をしたあと、会社が返済をできなくなったときには、信用保証協会が8割を負担し、銀行は2割を負担します。

この点、責任共有には例外があります。たとえば、コロナ融資。基本的には、責任共有の例外であり、会社が返済をできなくなったときには、信用保証協会がすべてを負担することになります。

銀行には、「痛み」がないということです。すると、どうなるか。銀行は、会社に対する支援が及び腰になります。誤解を恐れずにいえば、融資先がつぶれてしまったとしても、銀行には損がないため、つぶれないように支援しようとは考えにくくなるわけです。

だから、借入残高がコロナ融資ばかりの会社は、資金繰りが厳しくなっても、銀行からの支援は受けにくくなります。当然、会社にとってはデメリットでしょう。

これに対して、責任共有がある一般保証の融資であればどうなるか。2割とはいえ、責任があるわけですから、融資先につぶれられては困る。と、銀行は考えるようになります。

責任共有がまったくないプロパー融資であれば、なおさらです。融資先がつぶれてしまえば、融資している金額のすべてが損失になるのですから、銀行は積極的な支援を考えることになります。

いまは資金繰りが厳しくても、改善の見通しがあるのなら、追加の融資をしたり、コンサルやビジネスマッチングによって事業の支援をしたり、ということになるわけです。

借入残高がコロナ融資ばかりで、銀行が自社の支援に及び腰になることがないように。一般保証の融資や、プロパー融資も受けておくことを検討しましょう。

プロパー融資が受けられない

いましがた、一般保証の融資や、プロパー融資を受けましょうといいました。そもそも、プロパー融資は、一般保証の融資よりもハードルが高い融資であることを覚えておきましょう。

前述したとおり、プロパー融資には責任共有がなく、会社が返済をできなくなったときには、銀行がすべての損失を負うことになるからです。だとすれば、銀行としては、だれかれかまわずプロパー融資をするわけにはいきません。

プロパー融資をするのであれば、業績が良い会社、資金繰りが安定している会社だけにしよう。というのが、銀行の考え方です。そのうえで、プロパー融資をさらに受けやすくする方法があります。

それが、一般保証の融資です。責任共有があるとはいえ、何かあったときの銀行の責任は2割に限られます。プロパー融資に比べて、2割のリスクで融資をすることが可能です。

ゆえに、一般保証の融資でリスクを抑えることで、追加のプロパー融資を検討しやすくなります。言い換えると、会社は一般保証の融資を受けることで、その銀行からプロパー融資を引き出しやすくなる、ということです。

逆に、借入残高がコロナ融資ばかりとなると、一般保証という「呼び水」がありませんから、プロパー融資を受けることは難しくなります。コロナ融資ばかりでは、銀行が及び腰になることは前述したとおりです。

喉元過ぎれば熱さを忘れる、といわれます。コロナのときには、コロナ融資でおカネを借りたけれど、いまはそれほどおカネに困っていないから、もう借入しなくてもいいだろう。そのような考えでいると、コロナ融資の返済一辺倒になるため資金繰りは悪くなります。

また、いざというときにも、手元のおカネが不足しがちです。借入残高がコロナ融資ばかりにならないよう、一般保証の融資やプロパー融資もいまのうちに受けておくことをおすすめします。

まとめ

コロナ融資の返済が本格化したいま、自社の借入がコロナ融資ばかり…という会社があります。つまり、コロナ融資以外の借入がない。このときの問題点を取り上げてみました。

会社の資金繰りを安定させるには、常日ごろから借入をすることで、銀行との関係性を築いておくことが重要になります。コロナ融資では、関係性が築けないことを理解しておきましょう。

借入残高がコロナ融資ばかりの問題点
  • 折り返しができない
  • 銀行が及び腰になる
  • プロパー融資が受けられない
借入残高がコロナ融資ばかりの問題点

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

良い記事があればシェア
  • URLをコピーしました!
目次