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利益剰余金を増やすメリット

利益剰余金を増やすメリット

利益剰余金は、社長が財務を考えるうえで重要な勘定科目の1つです。では、なぜ重要なのか?その手がかりとして、利益剰余金を増やすメリットをお話ししていきます。

目次

利益剰余金を知らない社長たち

利益剰余金という勘定科目はご存知でしょうか?と、たずねると。「?」という反応の社長が少なくありません。では、自社の利益剰余金はいくらか?と、たずねると。さらに「?」です。

というように、ある意味では「マイナー」な利益剰余金ではありますが。財務を考えるうえでは、極めて重要な勘定科目の1つだと言ってよいでしょう。銀行融資を必要とする会社はとくに、です。

もっとも、銀行融資を必要としない中小企業は少数派なので、利益剰余金は多くの中小企業にとって重要な勘定科目なんだ!とも言えます。

というわけで、利益剰余金の重要性を知る手がかりとして、利益剰余金を増やすメリットについて、お話をしてみることにしましょう。具体的には次のとおりです↓

利益剰余金を増やすメリット
  • 債務超過を避けられる
  • 融資が受けやすくなる
  • 資金使途違反を免れる

それではこのあと、順番に解説をしていきます。

利益剰余金を増やすメリット

債務超過を避けられる

そもそも「利益剰余金」とは、貸借対照表のうち、純資産の部を構成する勘定科目の1つです。資本金の下あたりに位置しています。では、利益剰余金とは何なのか?

端的にいえば、創業から現在までの「税引後利益の累計額」です。たとえば、毎期100万円の税引後利益が10期続いていれば、利益剰余金の金額は1,000万円ということになります。

だとすれば、利益剰余金の金額を期数で割り算すれば、その会社の平均的な年間税引後利益を推し測ることもできるわけです。実際、銀行などはそのような見方もしています。

それはそれとして、利益剰余金は「純資産の部を構成する勘定科目の1つ」だといいました。純資産の部を大雑把に算式であらわすと「資本金+利益剰余金」となります。

いっぽうで、純資産の部は「資産ー負債」であることは、貸借対照表を見ればわかるでしょう。そのうえで、純資産の部がマイナス、つまり「資産<負債」となることを「債務超過」と呼びます。

文字どおり、債務(負債)が資産を超過している状態であり、危険な状態です。なにしろ、いまある資産をすべて現金化してもなお、債務を解消できないということをあらわしています。

では、自社が債務超過を避けるにはどうしたらよいのか?純資産をプラスにすることです。それも、できるだけプラスを大きくすることです。その純資産は「資本金+利益剰余金」であることは前述しました。

ならば、利益剰余金を大きくすればよいとわかります。利益剰余金は「税引後利益の累計額」なのですから、毎期利益を積み重ねることが債務超過を避ける手段になるわけです。

融資が受けやすくなる

毎期利益を積み重ねることが、債務超過を避ける手段になるといいました。だとすれば、いわゆる「節税」が必ずしも、自社にとってよいことではないとわかるでしょう。

ちなみに、ここでいう節税とは「利益を減らして税金を減らすこと」をいいます。たとえば、利益が出ている会社が交際費を増やせば、利益は減るので税金(法人税)は減る、といった具合です。

ところが、節税をすると税引後利益が減るために、その分だけ債務超過のリスクが高まります。納税を嫌うあまり、わざと赤字にしているような会社は典型例です(実際にありますね…)。

すると、どうなるか?債務超過のリスクが高いほど、銀行からの融資は受けにくくなります。いうまでもありませんが、債務超過とは危険な状態であり、銀行が忌み嫌うものの1つだからです。

債務超過とは、実質的に財務破綻している状態であり、そのような会社に融資をする道理はありません。節税自体が悪ではないにしても、債務超過のリスクをふまえて考えるべきでしょう。

つまり、利益剰余金がまだ少ないときに、節税をしようとするのは時期尚早だ、ということになります。節税を考えるなら、利益剰余金がじゅうぶんな金額になってからです。

ひとつの目安として、2年連続で赤字が続いても純資産がプラスを維持できるくらい。これが最低ラインの目安です。

いっぽうで、節税もそこそこに利益剰余金を積み上げるとどうなるか。純資産はどんどん増えるので、債務超過の可能性が遠のきます。債務超過のリスクが小さい会社を、銀行は好むことを覚えておきましょう。

すると、融資が受けやすくなるし、融資条件(金利、担保・保証など)の交渉もしやすくなります。これもまた、利益剰余金を増やすメリットです。

資金使途違反を免れる

もうひとつ、利益剰余金を増やすと得られるメリットがあります。それは、資金使途違反を免れる(かもしれない)というものです。どういうことかというと…

そもそも「資金使途違反」とは、銀行から借りたおカネを、当初の資金使途(使いみち)とは違うことに使ってしまうことをいいます。銀行からしたら、大問題です。

銀行は、使いみちを見ておカネを貸すのであり、それが違う使いみちだったのであれば「ウソつき!」ということになってしまいます。結果として、全額一括返済を求められたり、その後、いっさいの融資が受けられなくなることもあるほどです。

なので、社長は「ついつい」や「うっかり」で資金使途違反をしないように気をつけましょう。そのうえで、資金使途違反を免れるかもしれないケースとして、「純資産が潤沢」が挙げられます。

繰り返しですが、純資産とは「資本金+利益剰余金」であり、誰にも返す必要がないおカネ(=自己資金)です。だとすれば、「銀行から借りたおカネじゃなくて、自己資金を使っただけだよ」との言い訳が成り立ちやすくなります。

おカネに色はないとはよく言いますが、それでも、純資産(自己資金)が潤沢であるほど、資金使途違反であっても「弁明をしやすい(あくまで「しやすい」だけではあるものの)」という一面はあるものです。

資金使途違反をしてはいけないのはもちろんですが、銀行から借りたおカネ(とくに運転資金)があるていど自由に使いやすくなるのは、利益剰余金を増やすメリットだといえるでしょう。

いってみれば、付随的なメリットではありますが、押さえておきたいところです。

まとめ

利益剰余金は、社長が財務を考えるうえで重要な勘定科目の1つです。では、なぜ重要なのか?その手がかりとして、利益剰余金を増やすメリットをお話ししてきました。

自社の利益剰余金がいくらかを知らない社長も少なくありませんが、銀行融資の受けやすさにもかかわるところですから、利益剰余金の意味を理解し、金額の増減にも注目をするようにしましょう。

利益剰余金を増やすメリット
  • 債務超過を避けられる
  • 融資が受けやすくなる
  • 資金使途違反を免れる
利益剰余金を増やすメリット

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