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対銀行で金額が多いほどよい勘定科目

対銀行で金額が多いほどよい勘定科目

銀行は決算書の内容を重視している、ということで。対銀行で金額が多いほどよい勘定科目についてお話をしてみます。自社の決算書を見ながら、各勘定科目の金額を確認してみましょう。

目次

細かなことはキリがない

銀行融資を受ける会社は、自社の決算書の内容に注意する必要があります。いうまでもなく、銀行が決算書の内容を重視しているからです。

とはいえ、銀行は決算書のどこを見ているのかな?決算書をどのように改善すれば、銀行に評価してもらえるのかな?と疑問におもっている社長は、少なくないものと想像します。

もちろん、銀行による決算書の見方もさまざまであり、細かなことを言い始めればキリがありません。なので、ここでは「最低限に的を絞って」お伝えをしてみることにしましょう。

題して、対銀行で金額が多いほどよい勘定科目。具体的には次のとおりです↓

対銀行で金額が多いほどよい勘定科目
  • 預金
  • 法人税等
  • 借入金

それではこのあと、順番に確認をしていきます。

対銀行で金額が多いほどよい勘定科目

預金

まずは、預金です。決算書に記載されている「預金」に関する勘定科目の金額は多いほどよい。なぜなら、銀行から見て「預金が多いほど安心」だからです。

預金が少なければ、貸したおカネの回収が危ぶまれます。逆に、預金が多ければ、貸したおカネを回収しそびれる可能性は少なくなります。ゆえに、銀行は預金が多い会社を好むわけです。

銀行から好まれれば、当然、融資が受けやすくなったり、融資条件がよくなることが期待できます。とはいえ、「預金が多ければ苦労はしない」とおもわれるかもしれません。

預金がないからこそ銀行融資を受けたいのだし、預金がないと融資が受けにくくなるのであれば身もフタもないハナシじゃないか…そう、おもわれるかもしれません。

たしかに、預金を「自力」で増やそうとするのであれば、そうでしょう。自力とはつまり、利益のことであり、利益を増やすのもカンタンではありません。では、どうするか?

銀行融資を活用することです。ここでいう預金とは、銀行から借りたおカネも含まれます。利益で増やしたおカネであろうと、借りたおカネであろうと、同じおカネはおカネです。

借りたおカネだから返済には使えない、なんてことはありません。だから銀行は、「借入が多いとしても、まず預金があるかどうか」を見ています。

だとすれば、借りてでもおカネを増やしましょう、との理屈はわかるはずです。

いやいや、だから、おカネがないから困っているのだし、だとすれば融資が受けにくくなるのでしょう?と、おもわれるのであればそのとおりです。では、どうするか?

おカネがあるうちに借りることです。多くの社長はこれができていません。おカネがなくなってから、あわてて融資を受けようとするのです。だから、銀行から嫌われてしまいます。

以上をふまえて、社長は、決算書の預金について「多いほどよい」と考えるようにしましょう。少なくなってきたらマズいし、少なくなる前に借りることを考えるようにしましょう。

ちなみに、ひとつの目安は「平均月商(年間売上高 ÷ 12か月)の2か月分」です。これよりも、預金が少なくなるようだと、銀行からは「預金が少ない」と見られやすくなります。

法人税等

預金が多いと、銀行から好まれるといいました。もう1つ、多いと銀行から好まれる勘定科目が「法人税等」です。決算書でいうと損益計算書の末尾、当期純利益のひとつ上にあります。

法人税等とは、文字どおり、法人税ほか(法人住民税、事業税など)の税金であり、会社の利益に対して課税される税金です。つまり、利益が多いほど法人税等も多くなります。

すると、何が起きるか?

税金はできるだけ少なくしたいから、利益を減らしてしまおう!と、考える社長があらわれます。極端をいえば、「税金で払うくらいなら、飲み食いして経費を使ったほうがいい」みたいな。

たしかに、それで税金は減るのですが、対銀行としては愚策となります。なぜなら、銀行は「税引後利益=返済力」と見ているからです。税金を払ったあとに残った利益のなかから返済をする、それが銀行の見方になります。

だからもし、税金をゼロにしたいから赤字にするようなことがあれば、税引後利益もゼロです。だとすれば、「税引後利益=返済力=ゼロ」となるので、銀行としては「1円たりとも貸せないぞ」となってしまいます。

というわけで、法人税等の金額を増やしましょう。などというと、「オマエは税務署の回し者か!」と叱られそうですが。なにも、ムダに税金を払いましょうといっているのではありません。

お伝えしたいのは、「出せる利益は惜しまず出しましょう」ということです。飲み食いして経費を増やすのではなくて、そのまま素直に利益を残して税金を払うということです。

結果として、そのほうが会社におカネも残ります。たとえば、飲み食いする前の利益が1,000だったとして、法人税率が30%だとしたら税金は300、税金を払ったあとに残るおカネ(税引後利益)は700です。

では、飲み食いとして700のおカネを使ったらどうでしょう。利益は300に減るので税金は90、税金を払ったあとに残るおカネ(税引後利益)は210です。たしかに、税金は300から90に減りましたが、手元に残るおカネは700から210まで減ってしまいます。

おカネ(預金)が減れば、融資は受けにくくなることは前述したとおりです。税金を減らすのもよいですが、銀行融資(資金調達)とのバランスで考えるようにしましょう。

借入金

さいごに、もうひとつ。対銀行で金額が多いほどよい勘定科目は「借入金」です。ただし、ここでいう借入金は、銀行からの借入に限られます。つまり、銀行からの借入が多いほどいい。

いやいや、借金が多いほどいいだなんておかしいだろ!と、おもわれるかもしれません。ですが、銀行借入に関して言えば、「借入=信用」だといえます。中小企業にとって、1億円の銀行借入となると、したくもそうそうできるものではありません。

なぜなら、銀行から相応の信用をえられなければ、それほどの借入はできないからです。逆に、銀行借入が少ない会社、ましてや銀行借入がゼロの会社は、銀行から「信用がない会社」として見られやすいことは覚えておきましょう。

ちまたでは、無借金経営を称える向きもありますが、それも「銀行借入を必要としない」という前提があってこそです。中小企業の多くは、多かれ少なかれ、遅かれ早かれ銀行借入を必要とするものですから、だとすれば無借金経営はリスクでしかありません。

そのうえで、借入金の額を増やすにはどうしたらよいか。借りたいから貸してくれるほど、銀行はお人好しではないわけで(商売なわけで)。借入金を増やすのもカンタンではありません。

よって、いちど借りたことがある金額が、銀行にとってのハードルになります。たとえば、A銀行から2,000万円借りたことがある場合、その後にまた借りようとしても、融資残高2,000万円を超えて借りるのは難しい、ということです。では、どうするか?

自社の業績ができるだけよいときに、そのハードルを超えて借りるチャレンジをすることです。平たくいえば、利益が出ているときにどんどん借りる(申し込みをする)ということになります。

ところが、多くの社長は業績がよいときほど、融資を控えようとします。いまは業績がよいし、おカネにも困っていないから、おカネを借りる必要がないからです。

結果として、いつまでたってもハードルを超えられない。借入を伸ばせない。ひいては、手元のおカネもなかなか増えない…ということになってしまうのです。繰り返しになりますが、業績がよいときほど、より多くの借入にチャレンジしましょう。

すると将来、事業に投資するときや、おもわぬピンチを迎えたときにも役立ちます。

ちなみに、誤解のないように申し添えると、ただただ借入が増えれば信用が増えるわけではありません。借入が多くても、おカネやその他資産がさっぱりなければ、むしろ信用は下がってしまいます。借りたおカネを有意義に使えていないからです。

よって、借入が信用になるのは、借入金に対して預金が多い、あるいは、借入金に対して価値がある資産を所有している場合に限られます。

まとめ

銀行は決算書の内容を重視している、ということで。対銀行で金額が多いほどよい勘定科目についてお話をしました。自社の決算書を見ながら、各勘定科目の金額を確認してみましょう。

そのうえで、金額の少ないものがあれば増やしていく。すると、銀行融資が受けやすくなり、資金繰りがよりよくなります。

対銀行で金額が多いほどよい勘定科目
  • 預金
  • 法人税等
  • 借入金
対銀行で金額が多いほどよい勘定科目

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