短期継続融資という借りかたがあります。その短期継続融資が借りられない会社は、3つのデメリットを抱えているのはご存知でしょうか。具体的にどのようなデメリットなのか、お話をします。
社長としては困るというもの
会社の銀行融資について、短期継続融資という借りかたがあります。最近では、だいぶ耳にする機会も増えましたが、もしかすると「なにそれ?」という社長がいるかもしれません。
はじめにお伝えをしたいのは、「短期継続融資を利用できるにもかかわらず、それを利用しないというのであれば、3つのデメリットを抱えていることになりますよ」というお話です。
つまり、知らないうちにデメリットを抱えているかもしれず、そのデメリットはいずれも小さなものではなく、経営・財務のブレーキになりえます。社長としては「困る」というものでしょう。
具体的なデメリットをお話しする前に、「短期継続融資とは?」について、カンタンに確認しておくことにします。ご存知であれば読み飛ばして、デメリットの話まで進んでしまいましょう。
では、短期継続融資とは。手段としては、手形貸付あるいは当座貸越による融資です。このうち手形貸付の場合には、銀行を受取人とする、返済期限1年以内の手形を会社が振り出します。
期限が来たら、銀行は審査のうえで期限を更新。これにより、会社は実質的に元金返済なしで(利息のみを支払う)、借り続けることが可能になります。
もうひとつの当座貸越とは、銀行が定めた限度額の範囲内で、会社が自由に借りたり返したりできる融資です。やはり、会社は実質的に元金返済なしで、借り続けることが可能になります。
なお、手形貸付も当座貸越のいずれも、経常運転資金を資金使途とするケースが対象です。つまり、「売掛金・受取手形+棚卸資産ー買掛金・支払手形」が短期継続融資の対象となります。
以上をふまえて、短期継続融資が借りられない会社が抱えているデメリットを確認していきましょう。
短期継続融資が借りられない会社が抱えている3つのデメリット
毎月の返済額が増える
冒頭で、短期継続融資とは?についてお話をしました。勘のよい方であれば、気づかれたこととおもいますが、短期継続融資が借りられないと「毎月の返済額が増える」のがデメリットです。
たとえば、経常運転資金として360万円を、返済期間3年(36か月)で融資を受けているとします。この場合、毎月の返済額は10万円です。利息とあわせて、10万円のおカネが毎月減っていくことになります。
ちなみに、経常運転資金(売掛金・受取手形+棚卸資産ー買掛金・支払手形)とは、事業を続けている限り、会社が立て替えを必要とするものです。なので、せっかく経常運転資金分の融資を受けても、その後に返済を続けていれば、資金繰りが悪化していきます。
さきほどの例でいえば、360万円のおカネが必要だから借りたのに、毎月10万円ずつ返済をすることで手元のおカネが減っていけば、どんどん資金繰りが厳しくなるじゃないか…!ということです。
実際に、わりと多くの会社で、このようなデメリットが生じています。ところが、短期継続融資を知らなかったり、知っていても銀行に相談をせずに、デメリットを抱えていることになるのです。
いっぽうで、短期継続融資を受けている会社はどうかというと。毎月の返済額はないのですから、当初に借りた360万円は手元に残り続けます。よって、時間がたっても、資金繰りが厳しくなることはありません。
信用保証料の負担が生じる
短期継続融資が借りられない会社には、さらに、資金繰りを悪くするデメリットがあります。それが、信用保証協会に支払う「信用保証料」です。
さきほど、短期継続融資が借りられない会社として、「融資金額360万円、返済期間3年」の例を挙げました。このとき、銀行が「信用保証協会の保証付き融資」とすることが少なくありません。
保証付き融資とは、信用保証協会の保証が付いた融資であり、会社が返済できなくなった場合には、信用保証協会が銀行に対して肩代わりをしてくれます(いわゆる代位弁済)。
銀行にとっては安心・安全であることから、銀行が「保証付き融資」にしたがることはあるわけです。それでも融資が受けられるのであれば、会社としてもいいじゃないか、というわけにはいきません。
保証付き融資を受ける場合、会社は信用保証協会に対して、信用保証料を支払わなければいけないからです。その金額は、あまり軽視できるものでもありません。
利用する信用保証制度や、会社の状況などにもよりますが、信用保証料の負担は利息換算で「年利1%ていど」に及ぶことがあります。プロパー融資(信用保証協会の保証がない融資)であれば、その支払いがないのだとすれば、信用保証料の負担が小さなものではないとわかるでしょう。
くわしくは省きますが、これまでの金融行政の影響によって、多くの銀行では「本来は短期継続融資とすべきところを、信用保証協会の保証付きで毎月返済の融資としてきた」という経緯があります。
いまは、金融庁の要請もあって、短期継続融資が増えつつありますが、まだまだ消極的な銀行はあるものです。会社のほうから相談をしなければ、短期継続融資は受けられないものと考えておきましょう。
銀行との関係が希薄化する
いましがた、「本来は短期継続融資とすべきところを、信用保証協会の保証付きで毎月返済の融資としてきた」という話をしました。言い換えると、かつて経常運転資金の融資は、短期継続融資が基本だったのです。
結論として、短期継続融資の場合、銀行と会社の関係性は密接なものとなります。
まず、手形貸付による場合、銀行はたびたび会社に訪問しなければなりません。いうまでもなく、返済期限の更新手続き(審査も含めて)をするためです。よって、訪問を通じて、銀行は会社の状況を理解できるようになります。
会社の状況がわかるということは、会社の問題や課題を把握できるということであり、その先には、銀行による「本業支援(融資先の事業支援)」があります。
銀行が有効な本業支援をできれば、会社は持続・成長できることから、資金ニーズも高まり(銀行は融資を増やせるので)、銀行も会社もWin-Winです。
また、当座貸越の場合でも、会社は資金繰りの状況に応じて借入と返済を繰り返すことから、銀行はそのようすを目の当たりにすることで、やはり会社の状況を把握することができます。
なので、手形貸付にしても当座貸越にしても、銀行が会社の状況を把握しやすくなることから、銀行による支援の幅も広がり、銀行と会社の関係性が密になるのがメリットです。
いっぽうで、短期継続融資が借りられない会社はどうかというと。いまの話の裏返しです。銀行は放っておいても毎月返済で貸したおカネを回収できることから、「放置」しがちになります。
つまり、銀行員が会社に足を運ぶことは少なくなるため、銀行と会社の関係は希薄化するのです。それが会社にとってよいことでないのは、わかるでしょう。
まとめ
短期継続融資という借りかたがあります。その短期継続融資が借りられない会社は、3つのデメリットを抱えているのはご存知でしょうか。具体的にどのようなデメリットなのか、お話をしました。
知らないうちにデメリットを抱えていることがないように。デメリットが、経営・財務のブレーキとなっていることがないように。短期継続融資を受けられるように取り組んでいきましょう。
そのあたりくわしくは、動画にまとめています↓