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保証付き融資の経営者保証はアリでもいいのか

保証付き融資の経営者保証はアリでもいいのか

信用保証協会の保証付き融資について、経営者保証ではアリでもよいと考える社長は少なくありません。はたして、それでよいのか?銀行の見方もふまえて、考えてみましょう。

目次

経営者保証はアリでもよいと考える社長

先日、次のような調査結果(東京商工リサーチ)を見かけました↓

『信用保証協会の保証付き融資について、「経営者保証の提供に躊躇はない」と回答する中小企業の割合は24.62%、「保証料率の上乗せがゼロなら経営者保証を外したい」との回答が35.63%』

つまるところ、約6割の中小企業は「保証付き融資の経営者保証はアリでもよい(しかたない)」ということをあらわしています。

もっとも、中小企業の社長にしてみれば、「会社と社長(じぶん)は一心同体」なのだから、経営者保証があろうがなかろうが、実質的にはどちらだって同じことだとおもわれるかもしれません。

実際に会社がピンチになれば、社長個人のおカネを会社に投入だってするのだし、みたいな。

この点、2024年3月からは、保証料率の上乗せにより経営者保証を提供しないことを選択できる制度(事業者選択型経営者保証非提供制度)がスタートしているわけですが、「別に経営者保証がアリでもいいんじゃないの?そんな制度を使う意味ないんじゃないの?」と考える社長もいるようです。

はたして、本当にそうなのか?

経営者保証ナシが今後のスタンダードに

結論として、「保証付き融資の経営者保証はアリでもよい」との考え方は、これからの銀行融資・銀行対応においてはおすすめできない、というのが私見です。

いまは国の後押しもあって、地方銀行を中心に「経営者保証なしの融資」が急速に広まっています。プロパー融資(信用保証協会の保証がない融資)については、「原則、経営者保証なし」を表明する銀行もあるほどです。

新規融資に占める経営者保証なしの融資の割合は5割弱とのデータも公表されています。この流れが止まることはないでしょう。金融庁が銀行に対し、経営者保証なしの融資を推してもいるからです。

ゆえに銀行は、プロパー融資の経営者保証はできれば外したいわけですが、無条件にそれができるわけでもありません。

安全な会社については外してもよいけれど、危険な会社まで外すことはできない、ということです(そのあたりの基準として、「経営者保証に関するガイドライン」があります)。

つまり、銀行にしてみると「できれば経営者保証を外したい、でも、外せない会社もある」。では、どうするか?だったら、経営者保証ナシにできる会社とだけ取引をしよう!

と、そこまで極端ではないにしても、そいういう「傾向」になることはじゅうぶんに考えられます。もっとも、一部の銀行では、すでにその傾向がではじめていることは現場でも確認済みです。

経営者保証を外そうとする姿勢が大事に

では、銀行が「経営者保証ナシにできる会社とだけ取引をしよう」と考える場合にはどうなるか。「経営者保証はアリでもよい」との社長の考えには、注意を要することがわかるでしょう。

経営者保証はアリでもよいということは、経営者保証を外す気がないということです。ひいては、経営者保証を外すために、経営改善・業績改善を進める気がない。少なくとも、銀行からはそのように見られる可能性があります。

だったら、今後の取引(融資)は控えよう、と銀行が考えるのは自然なことです。これはプロパー融資に限ったことではなく、保証付き融資についても同じことがいえます。

もし、前述した「保証料率の上乗せにより経営者保証を提供しないことを選択できる制度」を利用している・利用しようとしている会社があったらどうでしょう。

制度を利用するにも、一定の要件(債務超過でない、連続赤字でないなど)をクリアする必要があります。だとすれば、制度を利用するためには、会社の意志と努力も必要です。

よって、制度を利用している会社・利用しようとしている会社は、銀行から「経営者保証ナシにできる会社」と見られやすくなる一面はあるものと考えます。

事実、制度の利用に向けて経営改善・業績改善に取り組めば、おのずとプロパー融資の経営者保証も外れやすくなるものです。結果として、銀行からの支援も受けやすくなるでしょう。

まとめ

「保証料率の上乗せにより経営者保証を提供しないことを選択できる制度」は、2027年3月までの次元措置として、上乗せされる保証料率の一部を国が補助してくれます。これを活用することで、保証料率の上乗せを0.1%にまで抑えることも可能です。

そのくらいであれば、コストをかけてでも経営者保証を外してみようか、と考えることもできるのではないでしょうか。

繰り返しですが、保証付き融資の経営者保証を外す効果は、プロパー融資にまで及びうるものです。経営者保証の解除については、広い視野・長期的な視点で考えるようにしましょう。

経営者保証の解除を軽く見ていると、銀行が離れていく、融資自体が受けにくくなる可能性があります。

保証付き融資の経営者保証はアリでもいいのか

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