週刊/税理士ジョーの銀行融資マガジン 購読受付中

初期費用がかからないから融資は受けない→良識ある考え方なのか?

初期費用がかからないから融資は受けない→良識ある考え方なのか?

初期費用がかからないから融資は受けない。一見すると、良識ある考え方のようではありますが、はたして本当にそうなのか?あらためて検討してみましょうよ、というお話をします。

目次

良識ある考え方の先にある後悔

先日、とある本を読んでいたところ、こんなことが書かれていました↓

「初期費用がかからない事業だったので、銀行融資は受けずに自己資金でスタートしました」

一見すると、良識ある考え方のようではありますが。必ずしもそうとはいえません。といわれたら、「なぜ、必ずしもそうとはいえないのか」を説明できるでしょうか。

といっても、融資を受けないという選択を非難する意図はありません。選択は人それぞれです。ただし、本当に選択をしたのか?選択をするための検討がなされたのかは、また別の話でしょう。

実際、初期費用がかからない事業であっても、「融資を受けておけばよかった…」と後悔の声を見聞きしていますし、「融資を受けておいてよかった!」という満足の声も見聞きしています。

そこで、「初期費用がかからないから融資は受けない」のは、必ずしも良識ある考え方なのか?について、このあと確認していきましょう。

事業がうまくいく、という過信

事業をはじめる人の多くには「自信」があるようです。たとえば、会社員をやめて事業をはじめるくらいですから、自信がなければ困るだろうというハナシでもありますが。

なにはともあれ、自信は悪いものではありません。ところが、行き過ぎた自信が「過信」となっている場合はどうでしょう。あまり良いものでないだろうことは、お察しのとおりです。

ここでいう過信とは、「事業がうまくいく」ということであり、もう少していねいに言い換えると、「おカネが足りなくなるようなことはないはずだし、足りなくなっても、じぶんのおカネでなんとかなるだろう」ということになります。

ところが、事業はそれほどカンタンなものでないことは、先人たちが証明済みです。創業後〇年で〇割の会社がつぶれてしまう、といったデータもあります。

また、事業がうまくいくにしても、軌道にのるまでには半年ていどの時間を要するとのデータもあります。この点、「初期費用がかからないから」というのは、助けになりません。

初期費用がかかろうが、かかるまいが、日々の経費(人件費やら家賃やら)は支払わねばならないのですから、事業が軌道にのらないあいだはおカネが減り続けることになります。

というと、「いやいや、ひとり社長の会社だし、運転資金も必要ないから」などの反論もあるわけですが、「いやいや、最低でも社長が給料とらなきゃ、社長が生活できないでしょ?」というハナシです。

社長が給料を必要としない慈善事業だというのであれば、それはそれでよいでしょう。ですが、多くの会社は、慈善事業をしているのではないはずです(そもそも、会社の目的は利益)。

じぶんのおカネを使いたがる、なぜ

でもさぁ、本当に会社のおカネがなくなったら、じぶんのおカネを会社に貸すから大丈夫。だという、社長もいます。たしかに、それもひとつの考え方です。

たとえば、社長が個人のおカネとして500万円を持っているのであれば、いざというときには500万円を会社に投じることができる。でも、それでおわりです。

いっぽうで、事業をはじめるときに、会社が500万円のおカネを銀行から借りていたらどうでしょう。まずは、会社が借りた500万円を事業に使うことができます。

そのうえで、もしそれでもおカネが足りなければ、そのときはさらに、社長が個人のおカネ500万円を会社に投じることができる。つまり、延べ1,000万円までのおカネを事業に使えます。

だとすれば、融資を受けておいたほうが、「事業がうまくいかなかったとき」に耐えられる可能性が高まることはわかるでしょう。500万円のおカネでは半年もたなかったけど、1,000万円あれば半年をのりきって、軌道にのせることができた!みたいな。

けして少なくはない社長が、じぶん(個人)のおカネを使いたがるのですが、事業の継続を考えるのであれば、じぶんのおカネを「さいごの切り札として温存する」ことも検討しましょう。

それでもなお、じぶんのおカネを使う、つまり、融資を受けるくらいなら会社がつぶれてもかまわない。というのであれば、それは各人の選択の問題であって、非難されるものでもありません。

ですが、「会社がつぶれるくらいなら、融資を受けたい」と考える社長もいるはずです。ならば、事業をはじめるときに融資を受けましょう、という話をしています。

必要になったら借りる、という不理解

でもさぁ、おカネが必要になったら、そのときに借りればいいでしょう。と、考える社長がいます。これはもう、選択の問題ではなく、さすがに不理解というものです。

なぜなら、おカネが必要になったらとは、会社がピンチのときなのであり、そんな会社におカネを貸したいと考える銀行はありません。ゆえに、おカネが必要なときほど借りにくいのが銀行融資だ、ということは理解しておきましょう。

この点、事業をはじめる前(創業時)であれば、会社がピンチになったときよりも、格段に融資が受けやすいのはたしかです。だから、わたしは創業融資を受けることをおすすめしています。

「会社がつぶれるくらいなら、融資を受けたい」というのであれば、いま(創業時)に借りるのも、あと(ピンチのとき)になって借りるのも変わりません。だったら、借りやすいときに借りておくほうがよいはずです。

いまは、さまざまな原因で倒産が増えています(人件費高騰や物価高騰など)。また、マイナス金利が解除となり、融資金利の上昇もはじまっているところです。すると、銀行はいままで以上に融資に対して慎重になることを覚えておきましょう。

そもそも、ピンチの会社は融資が受けにくいところ、今後はますます融資が受けにくくなるということです。おカネが必要になったら借りるという考え方は、もはや通用しない。そう考えておくのが無難です。

以上をふまえて、「初期費用がかからないから融資は受けない」とは、本当に良識ある考え方といえるのかを、あらためて検討するようにしましょう。

まとめ

初期費用がかからないから融資は受けない。一見すると、良識ある考え方のようではありますが、はたして本当にそうなのか?あらためて検討してみましょうよ、というお話をしました。

せっかくはじめた事業で、「あのとき借りておけばよかった」との後悔だけはないように。借りるにしても借りないにしても、融資の検討を怠らないようにしましょう。

初期費用がかからないから融資は受けない→良識ある考え方なのか?

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

良い記事があればシェア
  • URLをコピーしました!
目次