週刊/税理士ジョーの銀行融資マガジン 購読受付中

社長は融資金利を交渉してはいけない

社長は融資金利を交渉してはいけない

融資金利の交渉をしましょう、というアドバイスがありますが。むしろ、社長は融資金利の交渉をしてはいけない、というお話をしていきます。金利のある世界を迎えるいま、大事なお話です。

目次

なにごともバランスが大事

会社の銀行融資について。融資金利の交渉しましょう、というアドバイスがあります。

つまり、会社にとって融資金利は低いほうがよいものですから、銀行に対して、金利を下げてもらうよう交渉するということです。が、本質的には、金利を交渉してはいけません。

この点、わたしも「金利交渉」という言葉を使いはします。でもそれは、便宜的に使っているにすぎず、「銀行に対し、ガチで金利引下げを迫る」との意味で使ったことはありません。

では、金利は「銀行の言い値」でよいのか?といえば、もちろんそれもまた違います。銀行から言われるがまま、高い金利を受け入れるのではかないません。

というわけで、そのあたりの「バランス」をどう考えるか。実際、どのようにバランスをとっていけばよいのかについて、このあとお話をしていきます。

金利が上がってあたりまえ

まずは、前提条件の確認から。2024年3月、長らく続いたマイナス金利が解除となり、いよいよ「金利のある世界」がやってきます。

いますぐ、急激に金利が上がることはなくても、長い目で見れば、いまよりも金利が上がっていくことは間違いありません。なにしろ、いままでの金利が低すぎるのです。

いわゆる政策金利が上昇すれば、融資金利も上昇するのがセオリーであり、そういう意味で「今後は、融資金利が上がってあたりまえ」という環境になります。

にもかかわらず、社長がいままでの融資金利にこだわり、銀行が金利引き上げを提示してきた際、「もっと金利を下げろ!」と交渉をすればどうなるか?

銀行としては、「それなら、借りていただかなくてもけっこうです」となるでしょう。なにしろ、世の中の金利は上がっているからです。

たとえば、ある銀行が、これまではA社とB社に、1,000万円ずつ融資をしていたとします。ここで、融資金利の水準がいまの倍に上がったとしたらどうでしょう。

この銀行は、A社かB社のどちらかに1,000万円を貸すだけで、いままでと同じ利息収入を得ることができます。「だったら、うるさいこと(金利交渉)をいう会社には貸さない」ともなるわけです。

なので、金利交渉が過ぎれば、銀行からは嫌われやすくなる。ひいては、融資が受けられなくなることも理解しておきましょう。

上がった金利は利益で吸収

しかし、融資金利が上がれば、会社は支払う利息が増える…その増えた利息はどうすればよいのか?と、おもわれるかもしれません。

結論、利益を増やすことで吸収しましょう。

いやいや、なにをあたりまえのことを言っているのか。それができれば苦労はしない、ともおもわれるかもしれませんが。いうほどの苦労でもない、という考え方もあります。

なぜなら、世の中の金利が上がるということは、それだけ世の中の景気がよいともいえるからです(経済のセオリーとして)。だとすれば、自社の利益も増えるはず。

とはいえ、黙っていて利益が増えるほど、経営は底浅いものではないでしょう。ここで、おもに2つのポイントがあります。利益を増やすためのポイントです。

まず1つめは、値上げをして利益率を上げること。2つめは、銀行借入をテコにして、利益を増やすこと。

1つめの「値上げ」については、文字どおり、自社商品・サービスの販売価格を挙げましょう、という話です。人件費や物価の高騰もあるのに、それすら価格転嫁できなければ、遅かれ早かれ会社はつぶれてしまいます。

2つめの「借入をテコ」については、「融資金利<自社の利益率」であれば、借入したおカネを事業に投資していくことで、自己資金だけの事業よりも利益を増やすことが可能になる、という話です。

なお、値上げについては、いろいろと「できない理由探し」をしてしまうものですが、実際には「えいやっ!」で値上げしたところ、お客さまにもふつうに受け入れられた…というケースが多かったりもします。

そもそも販売価格が安すぎる、そのうえ販売価格を据え置きしてきた中小企業が多いからです。

交渉はせずに牽制をする

さきほどから、銀行に対して金利交渉はしないほうがいい、という話をしています。ですが、社長が金利に無頓着すぎれば、銀行から足元を見られることはあるでしょう。

つまり、融資金利が銀行に言われるがまま、上がり過ぎてしまう。ここでいう「上がり過ぎる」とは、「世間相場に対して、自社の融資金利が上がり過ぎてしまう」ことを意味しています。

たとえば、多くの会社は金利2%で借りられているのに、自社は4%だ…みたいな。自社に問題がある場合(業績が悪すぎるとか)は別として、銀行にボラれている可能性があります。

ボラれているなどというと、銀行から叱られそうですが。取れるとこから取るのは、銀行に限らず、世の中では多かれ少なかれ起きていることでしょう。あとは、ていどの差でしかありません。

それはそれとして、融資金利の世間相場なんてわからないし…というのであれば、日銀がネットで毎月公表している「貸出約定平均金利」が役立ちます。都市銀行、地方銀行、信用金庫それぞれについて、融資金利の平均値が掲載されているので確認しておきましょう。

そのうえで、自社の金利と比べてみて、自社のほうがだいぶ高いということであれば、銀行に「貸出約定平均金利と比べて、自社の金利が高いのはなぜですか?」と、たずねてみます。

すると銀行も、うかつに高い金利を提示できなくなるものです。要は、社長が「金利に無頓着ではない」と、アピールすることが大切になります。

ただただ、金利を下げろと言うだけの「交渉」が銀行に嫌われることは前述しました。だから、交渉はせずに、貸出約定平均金利などのハナシをしながら、「牽制」をするのです。

金利以外のメリットを獲れ

にしても、やっぱり融資金利が上がるのはデメリットだよね、という社長の気持ちはわかります。そこで、金利の代わりになるメリットを獲りにいきましょう。

融資条件は、金利だけではありません。融資金利が上がることを許容する代わりに、ほかの条件を、会社にとって良い条件にしてもらう、ということです。

たとえば、プロパー融資(信用保証協会の保証がない融資)。社長が銀行に、「金利が上がってもいいから、プロパー融資にしてほしい」と言えば、プロパー融資を受けられる可能性は高まります。

プロパー融資は、信用保証協会の保証付き融資のように、制度上の限度額がなく、ほかの銀行からもプロパー融資を引き出しやすくなることから、会社にとってはメリットがある条件です。

また、社長が銀行に、「金利が上がってもいいから、経営者保証を外してほしい」と言うのもよいでしょう。やはり、経営者保証が外れやすくなります。社長にとって、経営者保証はなければないほうがよいものであるはずです。

というように、あえてこちらから金利の引き上げを提示しつつ、金利以外の条件を「交渉」することで、金利以外のメリットを獲りにいくことも狙ってみましょう。

交渉するなら金利ではなく、金利以外の条件を交渉するのがおすすめです。

まとめ

融資金利の交渉をしましょう、というアドバイスがありますが。むしろ、社長は融資金利の交渉をしてはいけない、というお話をしてきました。

金利のある世界を迎えるいま、大事なお話です。あらためて、融資金利や金利交渉について考えてみましょう。今後の融資の受けやすさや、資金繰りの良し悪しにも影響するところです。

社長は融資金利を交渉してはいけない

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

良い記事があればシェア
  • URLをコピーしました!
目次