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借入金の決算書表記で社長が気をつけること

借入金の決算書表記で社長が気をつけること

借入金の決算書表記について、税理士に任せきりにしていると、銀行融資・銀行対応の面で自社が不利益をこうむる可能性があります。では、社長が気をつけるべきこととは…?についてのお話です。

目次

税理士に任せきりにしていると

自社の決算書をどれくらい見ているか?については、社長によって差があるものです。決算書のことは、顧問税理士にお任せで細かいところまでは見ていない…そんな社長もいるでしょう。

であれば、借入金の決算書表記に気をつけましょう!というのが、このあとのお話です。ひとくちに借入金と言っても、いろいろありますから、決算書への記載もさまざまあります。

だったらやっぱり、税理士に任せておけばいい。かというと、必ずしもそうでもありません。ここでいう「気をつける」とは、銀行融資・銀行対応の面を含んでいて、必ずしもすべての税理士がそれを理解しているわけではないからです。

つまり、決算書を税理士に任せきりにしていると、銀行融資・銀行対応において(銀行に決算書を提示したときにおいて)、自社が不利益をこうむる可能性がある…というお話をしています。

では、借入金の決算書表記で社長が気をつけることとは、具体的に何なのか?おもなところでは、次のとおりです↓

借入金の決算書表記で社長が気をつけること
  • 流動・固定の分類をする
  • 役員借入金を単独表記する
  • 当座貸越を内訳書に記載する

借入金の決算書表記で社長が気をつけること

流動・固定の分類をする

まずは、銀行借入について。大きく2つに分類されることを理解しておきましょう。流動負債と固定負債です。決算書の貸借対照表を見れば、負債の部が2つに分かれていることがわかります。

そのうえで、毎月分割返済の借入(=証書貸付)については、1年以内に返済する金額と、1年を超えて返済する金額とに分けましょう。たとえば、毎月の返済が10万円で、借入残高が500万円だとしたら…

10万円×12か月(1年以内)で120万円は、流動負債に「1年以内返済長期借入金」の勘定科目で記載します。残りの380万円は、固定負債に「長期借入金」の勘定科目で記載します。

これにより、社長は「向こう1年のあいだに、どれだけの返済をしなければいけないか」がわかるのがメリットです。また、いわゆる流動比率(流動資産÷流動負債)を正しく把握もできます。

いっぽうで、銀行借入をいっしょくたにして、流動負債あるいは固定負債に表記している決算書が散見されるので気をつけましょう。銀行からすれば、「この決算書で、社長は財務状況を把握できているのだろうか?」と不安になります。

実際にも、把握するのが困難だから問題なのです。

なお、返済期限が1年以内で一括返済の借入(=手形貸付)については、流動負債に「短期借入金」の勘定科目で記載します。よって、銀行借入は「短期借入金」「1年以内返済長期借入金」「長期借入金」の3つに分かれる、ということを覚えておきましょう。

そのうえで社長は、自社の決算書を見て、きちんと3つに区分されているかを確認です。

役員借入金を単独表記する

銀行からの借入とは別に、会社が社長(あるいはその他の役員)から借入していることもあるでしょう。この場合、「役員借入金」の勘定科目として、銀行借入と分けて記載することをおすすめします。

いうまでもなく、銀行からの借入金と役員からの借入金とでは、銀行の見方も異なるからです。何が異なるかはいくつかありますが、一例として「返済の優先度」が挙げられます。

銀行からの借入であれば、返済期限には何としてでも返済しようと考えるものですが、社長からの借入であれば、会社の資金繰りが苦しいならムリに返済してもらわなくてもいい、と考えるのが社長でしょう。

この点、社長に「返済を求める意志がない場合(=会社が長らく借りっぱなしで返済をしていない場合)」、銀行には「役員借入金 ≒ 資本金」という見方があります。

つまり、「返済をしなくてもいい借入なのであれば、それはもう出資といっしょだよね」との考え方です。すると、役員借入金の金額を資本金とみなすことにより、決算書の見た目よりも「実質的な自己資本」は増えます。

自己資本(純資産)が多いほど、債務超過(資産<負債)に陥る可能性が下がるため、銀行としては安心です。よって、役員借入金を資本金とみなされることは、会社にとっては有利だといえます。

ところが、役員からの借入を「短期借入金」や「長期借入金」などの勘定科目としている場合はどうでしょう。銀行が、役員借入金の存在に気づかず、資本金とみなしてもらえないかもしれません。これは、会社にとって不利益です。

なので、社長は、役員からの借入が「役員借入金」の勘定科目で表記されているかを確認しましょう。そのうえで、「返済を求める意志がない場合」には固定負債に、「返済を求める意志がある場合(=ときおり返済をしている場合)」には流動負債に記載されているかも確認です。

ちなみに、固定負債の役員借入金は自己資本とみなされることはお話をしたとおりですが、流動負債の役員借入金は、実質的な自己資本とは見られず、銀行からは負債として評価されることになります。

当座貸越を内訳書に記載する

ケースとしては少ないですが、「当座貸越」という借りかたをしている会社があります。当座貸越とは、銀行が決めた「極度額(限度額)」の範囲内であれば、いつでも借りたり返したりできる融資です。

銀行から見れば、「貸しっぱなし」になる可能性があるためリスクが高く、基本的には優良企業向けの融資だといえます。それはそれとして、当座貸越で借入している場合の決算書表記はどうするか。

流動負債に「短期借入金」の勘定科目で記載します。

当座貸越は、一般的に契約期間が1年以内の融資だからです。期間を迎えたら、契約更新するかどうかの審査となりますが、業績が大きく悪化しているなどの変化がない限りは、契約更新が基本的な考え方になります。

何にせよ、契約期間が1年以内なので「短期借入金」とするわけです。

当座貸越については、もうひとつ、社長が気をつけるべきことがあります。それは、決算書に付属する「勘定科目内訳明細書」です。文字どおり、各勘定科目の内訳明細を記載する書類であり、借入金の内訳明細を記載するページがあるので探してみましょう。

そのいちばん右には「担保の内容」という項目があります。当座貸越については、「担保の内容」の欄に「当座貸越、極度額〇〇万円」と記載するのがおすすめです。

前述したとおり、当座貸越は優良企業向けの融資であり、当座貸越があることは自社が優良企業であることの証になるからです。決算書や勘定科目内訳明細書は、取引銀行みなが見ているものですから、当座貸越で借りている銀行以外の銀行に対して、自社のアピールになります。

ところが、「担保の内容」の欄が未記載だと、当座貸越の存在に気づいてもらえません。なお、「担保の内容」の記載に代えて、決算書(貸借対照表)の流動負債に「当座借越」の勘定科目で記載するのも1つの方法ではあります。

まとめ

借入金の決算書表記について、税理士に任せきりにしていると、銀行融資・銀行対応の面で自社が不利益をこうむる可能性があります。では、社長が気をつけるべきこととは…?について、お話をしました。

いうまでもなく、決算書は会社のものであり、社長はその内容に責任を持たねばなりません。税理士に任せるのはよいにしても、「任せきり」にはならないよう、社長自身でも決算書を確認しましょう。

借入金の決算書表記で社長が気をつけること
  • 流動・固定の分類をする
  • 役員借入金を単独表記する
  • 当座貸越を内訳書に記載する
借入金の決算書表記で社長が気をつけること

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