借入を減らそうと考える社長が少なくありません。ですが、目指すなら借入減少よりも借入増加です。その根拠について、そして、借入増加の具体的な方法についてもお話をしていきます。
目指すなら借入減少よりも借入増加
会社の財務について、目指すなら借入減少よりも借入増加だ、といったら。暴論だ!無責任だ!などと叱られるのでしょうか。それはそれで受け入れますが、それでも借入増加をおすすめできる根拠はあります。
ひとことでいうなら、多くの中小企業においては「借入減少=預金減少」を意味するからです。ちなみに、ここでいう借入とは「銀行借入」のことであり、しなくてよいならしないほうがよい借入であるのは間違いありません。
ところが、借入がなければ預金が過少になる会社(利益だけでは十分におカネを増やせない会社)は多く、だとすれば、借入によって相応の預金残高を維持することも必要になるはずです。
また、ちまたには「返済すれば、また貸してもらえる」といった考え方もあるようですが、現実は必ずしもそうではありません。また貸してもらおうとしたときに、自社の業績が悪かったりすれば、銀行が貸さないことだってふつうにあります。
にもかかわらず、なぜ、借入を減らそうとするのか。そうではなくて、借入を増やすことを目指しましょう。そのための具体的な考え方と方法について、このあとお話をしていきます↓
- 折り返し融資をする
- プロパー融資を狙う
- 繰り上げ返済しない
それでは、順番に確認をしていきましょう。
借入増加の考え方と方法
折り返し融資をする
毎月返済を続けていれば、借入残高が減りますが預金残高も減ります。返済するには預金が必要だからです。これをそのままにしていると、資金繰りが厳しくなってしまいます。
そこで、まず考えたいのが「折り返し融資」です。折り返し融資とは、返済した分をまた借り直すことをいいます。たとえば、当初1,000万円の借入をしたのち、これまで400万円返済していたら、その銀行から400万円を借りることで借入残高を1,000万円に戻すのです。
これにより預金も400万円増えますから、資金繰りが改善します。逆に、借入を早く減らしたいと考えて、返済するいっぽうの会社がありますが、資金繰りを悪くしているのであれば本末転倒です。
なお、折り返し融資のタイミングで、自社の業績が好調なときなどは、+αの借入を相談してみましょう。さきほどの例でいえば、400万円を借りるのではなく、それよりも大きな額の借入を目指すということです。
実際に借入できれば、資金繰りはさらによくなります。借入が増えたら返済がタイヘンになる…というのであれば間違いです。借りたおカネを使わずに置いておくのであれば、返済はそのおカネを返すだけであり、実質的に返済負担が増えるものではありません。
返済がタイヘンになるのだとすれば、借りたおカネをムダ使いしたり(利益を生まない資産を買うとか)、赤字の補てんに使ったりしたときです。が、それは借入とは別の問題であり、借入をしたから返済がタイヘンになったわけではありません。混同しないように注意です。
注意といえば、折り返し融資の対象は「運転資金」の借入に限られます。いっぽうで、「設備資金(設備投資をするためのおカネ)」の借入について、折り返し融資は受けられないということです。
設備資金の借入の返済原資は、その設備から生じる利益であり、「利益<返済」となれば資金繰りに問題が生じること、その穴埋めを折り返し融資ではできないことを理解しておきましょう。
プロパー融資を狙う
民間金融機関からの融資には、信用保証協会の保証付き融資と、プロパー融資とがあります。保証付き融資とは、会社が返済できなくなった場合に、信用保証協会が肩代わりしてくれる融資です。
ゆえに、銀行としては安心であり貸しやすい、会社にとっては借りやすいという特徴があります。とはいえ、保証付き融資には制度上の限度額あることから、保証付き融資だけだと借入増加は見込めません。
では、どうするか?お察しのとおり、プロパー融資を受けることです。プロパー融資は、保証付き融資とは別に借りられる融資であり、制度上の限度額もありません。
ですから、保証付き融資とプロパー融資の両方を受けることで、会社の借入はより増加する、つまり、その分だけ預金も増加することになり、資金繰りはよりよくなります。
とはいえ、プロパー融資は、保証付き融資よりも難易度が高い融資です。保証付き融資のように、信用保証協会の肩代わりがないため、銀行も慎重にならざるをえません。だから借りにくい。
それでもプロパー融資を受けるにはどうするか。いちばんは、自社の業績をよくすることです。すると、銀行の不安もやわらぎますので、プロパー融資が受けやすくなります。
加えて、銀行とのコミュニケーションを深めることも大切です。具体的には、定期的に試算表や資金繰り表を提示・説明して、銀行には自社の状況をより把握してもらうようにしましょう。
逆に、会社のほうからの情報提供がないと、銀行員の足は遠のくものです。ますます会社の状況がわからなくなりますから、銀行はプロパー融資の検討もしづらくなってしまいます。
以上をふまえて、借入増加を目指すべく、プロパー融資を狙っていきましょう。
繰り上げ返済しない
ちょっと預金が増えると、繰り上げ返済する会社があります。借金(借入)を少しでも減らしたいという社長の気持ちもわかりますが、預金が減れば資金繰りが悪くなることは前述したとおりです。
預金100万円で借入ゼロの会社と、預金1億100万円で借入1億円の会社とどちらがいいですか。といっても、どちらも「正味100万円の預金」に変わりありません。
極端な例ではありましたが、借入が1億円であろうが、100万円であろうが本質はいっしょです。つまり、借入をしている会社のほうが預金を増やすことができます。
いくら借入が少なくても、預金が少なくて資金ショートすれば会社はおしまいです。いっぽうで、いくら借入が多くても、預金が潤沢であれば資金ショートの可能性は小さくなります。もし収入がなくなっても、おカネがあればある分だけ、粘ることができるわけです。
それでもまだ、借入減少を目指しますか?というお話をしています。借入減少を目指すのであれば、借入をせずとも預金が潤沢になったときです。では、預金が潤沢とはどのような状態か。
ひとつの目安として「最低でも年間売上高の半分」というのが、わたしの考えです。それだけあれば、売上がゼロになっても半年は持ちこたえることができます。
ただそれとて、絶対に大丈夫とはいえません。だとすれば、「少なくとも、いちど借りたら繰り上げ返済はしない」ということも、わたしはおすすめをしています。
冒頭でもふれたとおり、返済したからといって、また貸してもらえるわけでもないからです。
まとめ
借入を減らそうと考える社長が少なくありません。ですが、目指すなら借入減少よりも借入増加です。その根拠について、そして、借入増加の具体的な方法についてもお話をしてきました。
借入を減らそうとすれば、資金繰りに悪影響があることを理解して、だったら借入増加を目指すことも考えられるようにしましょう。資金繰りの改善につながるところです。
- 折り返し融資をする
- プロパー融資を狙う
- 繰り上げ返済しない