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値上げより付加価値アップが先、という正論の危うさ

値上げより付加価値アップが先、という正論の危うさ

ちまたには、「値上げよりも先に付加価値アップだ」とのアドバイスもありますが。一見すると正論ではありながら、そこには危うさもあるよね、という注意喚起のお話をしていきます。

値上げより付加価値アップが先、は危うい

社長が取りうる打ち手の1つに「値上げ」があります。つまり、自社の商品・サービスの販売価格を引き上げるということであり、社長の一存ですぐにでも決めることが可能です。

最近では(2024年5月20日現在)、物価高騰や人件費高騰といった背景もあり、価格転嫁としての値上げをする企業が増えています。また、値上げを検討している企業も多いことでしょう。

この点、「値上げよりもまず付加価値アップが先だ!」とのアドバイス(あるいは批難)があります。なるほどたしかに正論です。が、わたしはその正論には危うさがあると考えています。

あえて雑な言い方をすれば、「付加価値アップよりも値上げが先」だということです。いやいや、そんなことをしたら客離れが起きてしまうだろう!と、お叱りを受けそうではありますが。

それでもなお、値上げが先だといえる「根拠」がこちらです↓

付加価値アップより値上げが先の根拠
  • そもそも値決めを誤っている
  • 付加価値アップの原資になる
  • 値上げ+絞り込み=利益UP

それではこのあと、順番に解説をしていきます。

目次

付加価値アップより値上げが先の根拠

そもそも値決めを誤っている

付加価値アップより値上げが先だといえる根拠として、そもそも値決めを誤っていることが挙げられます。もう少し具体的にいうと、そもそもの販売価格が安すぎるということです。

その背景には、長く続いたデフレがあります。日本では、ここ20年くらいのあいだ、ほとんど消費者物価が上がっていませんでした。ゆえに、価格据え置きがあたりまえだったわけです。

むしろ、大企業などは値下げを推し進める状況であり、客離れを恐れて追随する中小企業も少なくありませんでした。が、値下げは大企業の「大資本」ゆえに取りうる戦術です。

値下げをすれば、当然、1商品あたりの利益は少なくなります。それでも、数を売って利益を積み上げるという「薄利多売」が成り立つのは、大資本(たくさんのおカネ)があってこそです。

大企業に比べてはるかに小資本の中小企業に、薄利多売が成り立たないことはいうまでもありません。たくさんの商品を仕入れる、たくさんの在庫を抱えられるだけのおカネはないのです。

にもかかわらず、価格を据え置く・値下げをすることで、中小企業の販売価格は「本来あるべき販売価格(=本来の商品価値)」に対して、相当に低いものになってしまいました。

平たくいえば、現状の販売価格が安すぎる。そういう意味では、そもそも値決めを誤っているのです。であれば、まずは「本来あるべき販売価格」まで値上げをすることが必要になります。

少なくとも物価高騰・人件費高騰分は価格転嫁をすべきです。でなければ、遅かれ早かれ事業の継続が困難になります。とはいえ、値上げをしたら客離れが心配だ…と、おもわれるかもしれません。

そのあたりの考え方については、このあとお話をしていきます。なにはともあれ、まずは、いまの販売価格が安すぎる中小企業が多い、という事実を理解することからはじめましょう。

付加価値アップの原資になる

さて、ちまたには「値上げよりもまず付加価値アップが先だ」とのアドバイスがあることは前述しました。ですが、そのアドバイスは現実的ではなく、机上の空論だともいえます。

なぜなら、付加価値アップをするにも原資が必要だからです。付加価値アップとは、端的にいえば、商品価値を高めることですが、それにはおカネもかかるだろう…と、そんなハナシです。

たとえば、商品開発・改良にかかるコストとか、サービス向上・改善のための人件費とか。先立つものは、いつだっておカネなのです。なので、おカネがなければ付加価値アップもできません。

すると、いつまでたっても値上げはできないじゃないか…ということになってしまいます。

そこで、まずは値上げです。値上げをすることで、1商品あたりの利益は増えます。その増えた利益を原資にして、付加価値アップに取り組むという流れです。

もちろん、値上げをすれば、いくらかの客離れはあるでしょう。ですが、値上げが「本来あるべき販売価格(=本来の商品価値)」の範囲内であり、従来の価格が低すぎたのであれば、利益の総額が減るような客離れは起きないものと考えます。

たとえば、販売価格100円・原価40円の商品が10個売れていたところ、10%値上げをしたとします。その結果、10%の客離れが起きて、売れるのは9個となった場合はどうでしょう。

  • 値上げ前の利益の総額は、(100円ー40円)×10個=600円
  • 値上げ後の利益の総額は、(110円ー40円)×9個=630円

あら、びっくり!10%の客離れが起きても、利益の総額は値上げ前よりも増えているではありませんか。って、利益の総額が増えるかどうかは、どれだけ値上げをするかによるし、どれだけ客離れが起きるかにもよるだろう?と、おもわれるのであればそのとおりです。

とはいえ、繰り返しになりますが、「本来あるべき販売価格」の範囲内であれば、10%の値上げで20%も30%も客離れが起きることはないはずです。

にもかかわらず、大きな客離れが起きるのであれば、そもそもの商品価値に問題があるということであり、値上げ以前の問題だといってよいでしょう。

でも実際には、中小企業の多くが、真摯に商品価値の維持・向上に取り組んでいるものであり、いっぽうで、価格を据え置き(あるいは値下げ)しているために値上げの余地は残されている。というのが、わたしの考えです。

値上げ+絞り込み=利益UP

さきほどの事例を再掲します↓

  • 値上げ前の利益の総額は、(100円ー40円)×10個=600円
  • 値上げ後の利益の総額は、(110円ー40円)×9個=630円

値上げをすれば、1商品あたりの利益が増えるとはいえ、現実にこのとおりうまくいくのか不安だ…という社長もいるでしょう。この点、追加の安心材料があるのでお伝えします。

値上げをすることにより利益が増えるのは、値上げ分だけではありません。値上げにより、原価やその他コストが引き下げられることにより増える利益もあります。

三度(みたび)、さきほどの例を取り上げると。これまでは10個売らなければ、600円の利益を確保できませんでした。ですが、値上げ後は9個売るだけで利益を確保できます。

だとすれば、営業時間を短くすることができるでしょう。すると、人件費や光熱費などを引き下げることにつながります。また、販売個数が少なくなると、在庫量を減らすこともできるものです。すると、在庫管理コスト(人件費、保管料など)も引き下げることができます。

いやいや、人件費を引き下げるといっても、人を辞めさせられるわけではないじゃないか(つまり、人件費は下げられない)!と、おもわれるかもしれません。

たしかに、辞めさせることはできないにしても、「人手」に余裕が生まれます。その生まれた余裕を、商品・サービスの改善に充てて、さらなる付加価値アップをはかる。すると、さならる値上げもできるようになるはずです。そうして、好循環が生まれます。

というわけで、値上げをするときのポイントは、「値上げ+絞り込み」です。ここでいう絞り込みとは、前述したように、営業時間を減らしたり、在庫量を減らしたり。ちなみに、絞り込みに関していえば、取り扱い商品数を減らすのも効果的です。

いままで10品扱っていたところ、9品に減らすことができれば、在庫管理コストや在庫ロスを減らせる可能性があります。すると、ますます利益が増えることがわかるでしょう。メニューの品数が多すぎる飲食店などは、その典型です。

以上をふまえて、「値上げ+絞り込み=利益UP」に取り組んでいきましょう。

値上げをしなければ、お客さまは喜ぶかもしれませんが、そのウラで社長や社員が疲弊している(もうからないのに忙しい…)のでは、あまりに不条理というものです。

まとめ

ちまたには、「値上げよりも先に付加価値アップだ」とのアドバイスもありますが。一見すると正論ではありながら、そこには危うさもあるよね、という注意喚起のお話をしました。

過度な顧客志向(値上げをするとお客さまに悪い)は、値上げの判断を鈍らせ、ひいては事業を窮地に陥れる可能性があります。あらためて、値上げについて考えてみましょう。

付加価値アップより値上げが先の根拠
  • そもそも値決めを誤っている
  • 付加価値アップの原資になる
  • 値上げ+絞り込み=利益UP
値上げより付加価値アップが先、という正論の危うさ

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