銀行融資について税理士が意外と知らないことがある、と感じています。知らずにいると、顧問先の銀行融資によくない影響を与えている可能性もあるので気をつけましょう。そんなお話です。
よくない影響を与えているかもしれない
銀行融資の支援、という仕事をしています。そのなかで、「銀行融資について税理士が意外と知らないことがある」と、感じることはあるもので。
とはいえ、わたしの「気のせい」ということでもなく、相談を受けた会社の社長から、顧問税理士に関する話として複数回にわたり耳にしていることなので、「実態」だろうと考えています。
もちろん、ていど加減はあるでしょう。つまり、すべての税理士が知らないなんてことはありませんし、知っている税理士もいます。でも、知らない税理士もそこそこいる。そういうことです。
また、銀行融資の支援については、税理士の方からもご相談をいただきます。そのなかでもやはり、意外と知らないことがあると感じるものです。では、具体的にどのようなことなのか。
おもなところでは、次のとおりです↓
- 節税すると融資が受けにくくなる
- 資金繰り表のつくり方・考え方
- 融資を受けるのによいタイミング
これらを税理士が知らずにいると、顧問先の銀行融資によくない影響を与えている「可能性」があります。というわけで、このあと順番に確認していくことにしましょう。
銀行融資について税理士が意外と知らないこと
節税すると融資が受けにくくなる
知っている人からすれば、「そんなバカな」とおもわれるかもしれませんが。実際に、節税の効果ばかりを伝えて、節税が銀行融資に与える影響までは伝えない税理士がいます。
ちなみに、ここでいう節税とは、利益を減らすことで税金を減らすことです。で、節税すると〇〇万円の税金が減りますよ。とは伝えるものの、それによりどれだけの融資が受けにくくなるかは伝えていない、伝えられていない税理士がいます。
などとエラそうにいっているわたしですが、その昔のわたし自身がそうでした…当時のお客さまには、申し訳ないばかりです。
それはさておき、節税をするとなぜ融資が受けにくくなるのか。利益が少なくなるからです。銀行には「利益=返済力」という見方があるので、利益が減った分だけ融資に消極的になります。
具体的には、どれくらいの融資が受けにくくなるのか。イメージとして、節税により減少した税引後利益の10倍です。たとえば、節税前の税引後利益が350万円、節税後の税引後利益が210万円だとしたら、「(350万円ー210万円)×10」で1,400万円になります。
なお、この節税により減る税金は、おおむね60万円です。なので、目先の60万円の税金を惜しんだばかりに、1,400万円もの銀行融資を受けにくくしていることになります。さて社長、それでも節税をしますか?と、税理士が伝えられているのかどうか。
繰り返しですが、以前のわたしは伝えられていませんでした。そしていま、ご相談のなかでお話を聞く限り、伝えられていない税理士はいることがわかります。
いわれてみれば、あたりまえのことですが、そのあたりまえを理解しましょう。節税すると、融資は受けにくくなるのです。節税したい、でも融資も受けたい。そのハナシにはムリがあります。
資金繰り表のつくり方・考え方
融資のご相談を受ける社長から、「顧問税理士が資金繰り表をつくってくれない」という話を聞きます。これは、その税理士が自身の業務範囲の問題として「つくらない」ということもあれば、能力の問題として「実は、つくれない」というケースもあるようです。
あるようです、などと憶測でモノをいうな!と、税理士の方々からはしかられそうですが。実際に、税理士ご本人から「つくり方がわからない」というご相談もうかがっています。
何を隠そう、やはり以前のわたしもまた、資金繰り表のつくり方がわからない時期がありました。本当に申し訳ない…でも、税理士の資格を取るにあたって、資金繰り表の勉強はありません(という言い訳)。
ところで、「オレは・ワタシは、資金繰り表をつくれるよ」といわれる税理士のなかには、つくり方はわかっていても、考え方まではわかっていない税理士もいます。
ここでいう考え方とは、銀行による資金繰り表の見方といってもよいでしょう。では、その見方について最たるものをお話しすると、「月末資金残高の推移」です。
そもそも、銀行融資において資金繰り表をつくるのは、資金繰り表の提示を銀行から求められたり、求められずとも銀行対応において有効な資料だからです。
この点、せっかくつくった資金繰り表の「月末資金残高」が、将来に向かって「減少」で推移をしていた場合、正直、その資金繰り表は銀行に見せないほうがマシだといえます。
と、少々もの言いが強くなってしまいましたが、事実、そのような資金繰り表を銀行に提示すれば、銀行は「貸しても返済してもらえないかも」と、警戒を強めるばかりです。
ゆえに、つくり方さえわかっていればいい、つくれればいい、というわけでもありません。誤解なきように申し添えると、月末資金残高が増加するようにつくればいい、というわけでもありません。
ただつくるだけであれば、それは絵に描いた餅です。絵に描くのはよいにしても、その絵をどのように実現させるのか。そこまで考えるのが、「資金繰り表をつくる」ということです。
融資を受けるのによいタイミング
融資のご相談を受けるなかで、よく感じるのが「相談をするタイミングが遅い…」ということです。言い換えると、「もっと早く相談してもらえれば、融資も受けやすかったのに」となります。
では、顧問税理士からは「もっと早く」にアドバイスはなかったのか。わたしが知る限り、アドバイスがないケースが多いようです。だから、タイミングを逸した相談にもなっているわけで。
また、「顧問税理士は、融資のことは話をしてくれないので」といった趣旨の話は、何人もの社長からうかがっています。そのうえで、いざ資金繰りが厳しくなってから「早く借りたほうがいいと、税理士からいわれた」ともうかがっているところです。
つまるところ、「税理士は意外と、融資を受けるのによいタイミングを知らないのだ」ということになるでしょう。なお、融資を受けるのによいタイミングとは?
端的にいえば、利益が出ているとき・おカネがあるときです。が、そのようなときには「融資の必要性」を感じられないことから、融資を受けようとは考えない社長・税理士が少なくありません。
利益が出ているということは、銀行から見て「返済力がある」ということであり、おカネがあるということは、銀行から見て「安心だ(ちょっと赤字になっても耐えられる)」ということです。
ゆえに、利益が出ているとき・おカネがあるときには、銀行のほうから「融資を受けませんか?」といってくるものでもあります。で、社長は顧問税理士に「銀行から融資を勧められている」と相談をするわけですが、税理士は「いまは必要ないでしょう」とアドバイスをしてしまう。
と、せっかくのチャンスを逃しておきながら、その後、資金繰りが厳しくなってから「早く借りたほうがいい」ということでは、社長も困ってしまうでしょう。銀行としては、融資をしたくないタイミングです。
社長も税理士も、融資を受けるのによいタイミングを知りましょう。そして、「実際」にも、そのタイミングで動けるようにしましょう。知ってはいても動かない社長・税理士が少なくありません。
まとめ
銀行融資について税理士が意外と知らないことがある、と感じています。知らずにいると、顧問先の銀行融資によくない影響を与えている可能性もあるので気をつけましょう。
社長であれば、顧問税理士が知らずにいるかもしれないことを、税理士であれば、自身が知らずにいるかもしれないこととして、本記事の内容を押さえていただければとおもいます。
- 節税すると融資が受けにくくなる
- 資金繰り表のつくり方・考え方
- 融資を受けるのによいタイミング