社長にとって、融資金利は気になるもののひとつでしょう。融資金利が上がるのはイヤだ。ところが、融資金利が上がるのを許容すべきときもある。と、そんなお話をしていきます。
バチバチに交渉すればいい、ともいえない
銀行融資を受ける会社の社長にとって、「融資金利」は気になるもののひとつでしょう。融資金利が上がれば、支払利息が増えるのは負担にもなるのでイヤだからです。
とはいえ、銀行から見れば、融資金利は高いほうがよいわけで。社長の思いとは相反することになります。では、社長がバチバチに銀行と交渉をすればいいかというと、そうでもありません。
端的にいえば、融資金利が上がるのを許容すべきときもある。そういうことです。
そのうえで、そもそも融資金利が上がりやすいのはいつどんなときなのか?おもには次のとおりです↓
- 新規融資を受けるとき
- 保証をはずすとき
- おまとめをするとき
これらについて、なぜ融資金利が上がるのか、また、社長はどのように対応するのがよいかを、このあとお話ししていきます。
融資金利が上がりやすいのはいつどんなとき?
新規融資を受けるとき
これまで、A銀行から融資を受けていたとして。このたび、あらたにまたA銀行から融資を受ける。このとき、これまでの融資に比べて、あらたな融資の金利が高くなることがあります。
銀行にとって、既存の融資の金利は上げにくいものですが、新規の融資となれば話は別です。なぜか?融資金利が高くなる理由は、いくらでもあるといえばあるからです。
いまであれば、「マイナス金利の解除もあって、長期金利なども上がっていますので…」とか。また、「御社の業績や状況も、以前とは異なりますので…」とか。
ちなみに、自社の業績が悪くなれば、融資金利は高くなるものです。業績が悪いということは、返済力が下がっていることをあらわします。だとすれば、銀行はリスクが高まりますから、見返りとして金利を高くするのは当然でしょう。
ゆえに、低い金利で融資を受けたければ、社長はできるだけ業績をよくすることが大切です。目先の税金を嫌って、あえて利益を減らすようなことをしていると、金利は高くなってしまいます。
では、これまでよりも高い金利を提示されたらどうするか?もちろん、交渉をするのは自由ですが、交渉を強めれば強めるほど、銀行としては貸すのがイヤになるでしょう。
結果として、「だったら貸しません」といわれてもよいのかどうか。よいのであれば、バチバチに交渉をするのも選択肢の1つですが、いわれて困るのであれば交渉はほどほどにすべきです。
この点、日銀が毎月公表している「貸出約定平均金利」の動きが参考になります。貸出約定平均金利は金利の相場にあたる指標ですから、それと乖離するような交渉のしかたはおすすめできません。
保証をはずすとき
ここでいう保証とは、信用保証協会の保証や経営者保証です。社長であれば、それらの保証を外したいと考えるものでしょう。すると、基本的には融資金利が上がります。
いうまでもありませんが、保証を外せば、銀行側のリスクが高まるからです。貸したおカネが回収できなくなったときのことも考えて、利息で回収を早めようということになります。
にもかかわらず、社長が「保証は外したい、でも、金利が上がるのはイヤだ」というのであれば、それはワガママというものです。ワガママをいうのも自由ですが、その分、保証は外れにくくなりますし、場合によっては融資そのものが受けにくくなります。
保証を外したいのであれば、少々金利が上がることは容認するのがコツです。つまり、社長は銀行に対して「金利は上がってもいいから、保証を外してほしい」と伝えることになります。
いやいや、金利がめちゃめちゃ上がったらどうするの?と、おもわれるかもしれませんが。保証を外したからといって、金利が2%も3%も上がることはないはずです。
多くの場合、ゼロコンマ数%〜1%ていどといったところでしょう。それでも、割合だけで見ているとだいぶ高くなったように感じるかもですが、金額に置き換えるとそうでもないとわかります。
たとえば、1,000万円の借入で金利が0.5%上がったとしても、年間で増える金利は5万円です(返済が進めばもっと減っていきます)。そのくらいのコストで保証が外れるならよし、と考えることもできるでしょう。
保証をはずすときには金利が上がるものだ。この理解が大切です。
おまとめをするとき
おまとめとは、言い換えると「一本化」です。既存の融資が複数本ある場合に、それらを1本にまとめて借り直すことをいいます。
たとえば、B銀行に対して、残高1,500万円・残り返済期間3年の借入と、残高500万円・残り返済期間2年の借入があったとして。あらたに2,000万円を借入して、既存の2本の借入を返済する。つまり、おまとめをするとします。
このとき、あらたに借入する2,000万円について、返済期間を5年にするとしたらどうでしょう。完済までの期間がこれまでよりも延びることから、銀行としてはリスクが高まることを意味します。
だったら、融資金利を上げようというのは当然の考え方でしょう。実際、おまとめをしようとすると、融資金利が高くなることは少なくありません。
おまとめには、資金繰り改善(毎月の返済額が減る)の効果がありますから、それはそれで有効な銀行対応ですが、金利が上がりやすいことは覚えておくとよいでしょう。
ただそれでも、前述したように「割合(金利)」で見るだけではなく、「金額(利息額)」で見ることも大切です。割合で見るほど、金額は増えていないということはよくあります。
だとすれば、金利が上がっても資金繰り改善(おまとめ)をすべき、という判断もあるはずです。
まとめ
社長にとって、融資金利は気になるもののひとつでしょう。融資金利が上がるのはイヤだ。ところが、融資金利が上がるのを許容すべきときもある。と、そんなお話をしました。
融資金利については、バチバチに銀行と交渉をすればいいわけでもありません。そのあたりの理由や、具体的な対応方法もふまえて押さえておくようにしましょう。
- 新規融資を受けるとき
- 保証をはずすとき
- おまとめをするとき