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決算書に役員借入金が残ったときにどうするか

決算書に役員借入金が残ったときにどうするか

自社の決算書に、役員借入金が残っている場合、いくつかの問題が生じることがあります。その問題とはどのようなことなのか。問題を解決するにはどうしたらよいのかについて、お話をします。

目次

いくつかの問題が生じることがある

自社の決算書を見たときに、役員借入金が残っているという場合には、気をつける必要があります。ここでいう役員借入金とは、会社が社長個人から借入をしているおカネです。

その借入をする行為自体に問題はありませんが、決算書に役員借入金が残っている場合には、いくつかの問題が生じることがあります。

たとえば、社長が亡くなった場合、役員借入金(社長個人から見れば貸付金という債権)の額が、相続財産として相続税の対象になるとか。相続税が高くなる、という点で問題です。

また、銀行融資の面でも問題が生じるケースがあります。役員借入金とは「負債」ですから、負債が増えることで「資産<負債」となれば、債務超過として融資が受けにくくなるとか。

こういった問題が見過ごされたまま、決算書に役員借入金が残ってる場合には気をつけましょう。いざ、問題が顕在化したときには手遅れ…ということもあるのですから。

ひとまず、銀行融資の面から考える

では、どうしたらよいのか?ひとまず、銀行融資の面について考えてみます。決算書には役員借入金を残したまま、債務超過の問題をクリアしうる方法があるのです。

まずは、その考え方を理解するところからはじめましょう。

銀行は、役員借入金を自己資本(純資産)とみなすことがあります。その役員借入金に「返済の義務」がないケースであり、言い換えると、社長が会社に対して返済を急いでないケースです。

だとすれば、役員借入金は「出資(資本金)」のようなものだとして、負債ではなく自己資本と「みなす」ということになります。

たとえば、貸借対照表の資産が5,000、負債が5,500の債務超過だとして。負債のうち1,000が役員借入金だという場合に、その役員借入金に返済の義務がなければ、役員借入金は負債ではないとみなして、負債は4,500(5,500ー1,000)となるわけです。

結果、「資産>負債」と変わるので、債務超過ではなくなります。

と、考え方がわかったところ、方法としてはどうするか?つまり、どうしたら役員借入金を銀行に自己資本とみなしてもらえるのか?

いちばんは、役員借入金を貸借対照表の「固定負債」に「役員借入金」の勘定科目で計上することです。

これに対して、流動負債に計上していると、「1年以内に返済される」と見られるために自己資本と見てもらいづらくなります。

また、固定負債に計上していても、「役員借入金」という勘定科目ではなく「長期借入金」などとしていると、銀行が役員借入金の存在に気づきにくくなるものです。

すると、役員借入金は負債のまま評価されるので、自己資本とみなされるチャンスを逃します。というわけで、「役員借入金」の勘定科目で、「固定負債」として計上しましょう。

加えて、もうひとつ。社長個人の「確定申告書」や「資産・負債の一覧」を銀行に提示することも大切です。いくら、役員借入金を固定負債に計上しても、銀行は「返済の義務」を疑います。

社長は、本当に返済してもらわなくても大丈夫なのか?というハナシです。この点、社長に「十分な収入」や「十分な資産」があれば、大丈夫だと考えやすくなるでしょう。

なので、社長個人のことについても、銀行に対する情報提供が重要になるのです。

問題はそれだけではない

ここまでお話をしたとおり、役員借入金を自己資本とみなすことで、債務超過の問題をクリアできる可能性はあります。ところが、問題は債務超過にとどまりません。

役員借入金が「増えていく」ようだと、銀行は「銀行から融資が受けられないのか?」とも疑います。会社の状況が悪く、どの銀行からも融資を断られてしまう。だから、しかたなく社長が個人のおカネを会社に貸しているのでは…ということです。

こうなると、銀行からの融資が受けにくくなります。もはや、自己資本とみなすかどうかは別の話です。

また、役員借入金が多いと、経営者保証が外れにくくなるという問題もあります。銀行は「役員借入金がないと、資金繰りが回らないほど収益力がない会社だ」との評価をすることもあるからです。これまた、自己資本とみなすかどうかは別の話となります。

さらには、冒頭でもふれたとおり、相続税の問題もあるわけで。役員借入金が自己資本とみなしてもらえれば万事解決!というものでもありません。

だとすれば、「根本的な解決」が求められることはわかるでしょう。根本的な解決とは、つまり、役員借入金の存在自体を解消することです。では、どうするか?

真っ先に思い浮かぶのは、会社が社長個人に返済をすることでしょう。が、それができれば苦労はしないバナシです。できればとっくにしているに違いありません。では、どうするか?

よくいわれる方法に、債権放棄があります。つまり、社長が「もう返済してもらわなくてもいいよ」という意思表示を明確にすることで、会社は債務免除されることになるわけです。

たしかに、役員借入金は解消されますが、社長個人は「返済してもらえない(社長個人の資産が減る)」というのは大きなデメリットだといえます。

なお、債務免除によって、法人税や贈与税が生じるケースがあるので、実行する前には税理士に相談をしましょう。

では、ほかに方法はないのか?銀行から借入をして、そのおカネで役員借入金を返済するという方法があります。業績がよい会社であれば、それを銀行から提案してもらえるケースもあります。

これなら、社長個人の資産が減ることもありません。ただし、会社に返済力(=利益)がなければ、銀行も融資はできないのですから、やはり業績を上げることが大事だとわかるでしょう。

これまた、それができれば苦労しないシリーズです。だとすれば、そもそも社長が会社におカネを貸し付けたりしないことだとわかります。

にもかかわらず、銀行から借入をするのがメンドーだからと、安易に役員借入金が増えていくケースはけして少なくありません。少額であっても、社長が会社におカネを貸すことは控えましょう。

いちどが二度になり、二度が三度になります。気がつけば、解消が困難になるほど多額になります。

まとめ

自社の決算書に、役員借入金が残っている場合、いくつかの問題が生じることがあります。その問題とはどのようなことなのか。問題を解決するにはどうしたらよいのかについて、お話をしました。

さいごは身もフタもない話ですが、そもそも、少額であっても、社長が会社におカネを貸すことは控えましょう。たった1回のつもりでも、その後の繰り返しにつながることがあります。

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