変化の速いこの時代、会社の持続・成長に欠かせないものの1つが「新規事業」です。とはいえ、銀行から嫌われる新規事業もありますよ、というお話をしていきます。
新規事業における本質にからむ話
銀行から融資を受けている会社、これから融資を受けようとする会社は、自社がはじめる新規事業に気をつけましょう。場合によっては、銀行から嫌われるかもしれません。
と、聞いて。いやいや、新規事業は大事でしょう。そうおもわれるかもしれません。変化の速いこの時代、既存事業だけでは遅かれ早かれ衰退は目に見えているじゃないか?
というのであれば、そのとおりです。ここでお話をしたいのは、あくまで「銀行対応」の視点であり、銀行融資を受けようとするときにはご注意くだいさい。と、そういうことです。
とはいえ、銀行対応だけに限った話でもなく、新規事業における「本質」にからむ話でもあります。新規事業に取り組む際のポイントとして、ぜひいちど確認をしておきましょう。
そのポイントについて、具体的には次のとおりです↓
- 既存事業が赤字
- 社長が入れ込む
- 本業とは無関係
このあと、順番に解説をしていきます。
銀行から嫌われる新規事業の特徴3選
既存事業が赤字
典型例として、既存事業が赤字になっているタイミングで、新規事業をはじめるための資金を借入しようとするケースがあります。これは、銀行から嫌われることを覚えておきましょう。
そもそも、新規事業とは「リスクが大きい」ものです。これまで経験がないから「新規」なのであり、だとすれば、うまくいくかどうかはかなり不透明なものだといえます。
よって、ベストなのは、新規事業が少々うまくいかなかったとしても、既存事業の黒字でカバーできる状態です。これであれば、多少は余裕をもって新規事業をはじめることができるでしょう。
それに、新規事業をはじめた当初から売上が順調であることはめずらしく、時間がたつにつれて(標準的には半年くらい)、少しずつ売上が増えていくのがふつうの流れです。
すると、当初は新規事業の赤字が出ますから、既存事業も赤字では会社がつぶれかねません。そういったことから、銀行には「新規事業をはじめるなら、既存事業は黒字であるべき」との見方があります。
ここから導かれる結論は、「新規事業をはじめるなら、既存事業が黒字のうちに」です。にもかかわらず、既存事業が赤字になってようやく、新規事業を検討する会社が多くあります。
それでは遅すぎる、ということです。遅すぎれば銀行の協力が得にくくなり、新規事業をはじめるのに必要な資金調達もしにくくなってしまいます。新規事業は「早め」の検討が大切です。
なお、新規事業をはじめるにあたり銀行融資を申し込むのであれば、既存事業と新規事業を区分した資金繰り予定表(向こう1年分くらい)を用意しましょう。
区分することで、既存事業では「利益黒字かつ資金黒字」であり、新規事業を支えるチカラ(=おカネ)があることを示すのが狙いです。すると、銀行も融資を検討しやすくなります。
社長が入れ込む
これは、社長が新規事業について、銀行に伝えるときの「姿勢」の話です。新規事業に対する思いが強すぎるあまり、既存事業をそっちのけで新規事業について熱く語り続ける社長がいます。
銀行からすれば、「おいおい、既存事業はどうした?」という話であり、既存事業の調子が悪いようであればなおさらです。
実際、社長が新規事業に入れ込みすぎて、既存事業がなおざりとなった結果、新規事業は軌道に乗らず、既存事業は状態が悪化…会社が危機的な状況におちいるケースは、枚挙にいとまがありません。銀行もそれを知っています。
だから、新規事業に入れ込む社長を、銀行が嫌うことはあるものです。結果として、融資が受けにくくなります。仮に、既存事業のために融資をしても、社長が新規事業に使ってしまうかもしれないからです。
なので、新規事業について、社長は冷静に考えて、冷静に伝える必要があります。いやいや、じぶんはいつだって冷静だ!と、おもわれるかもしれませんが。銀行に対しては、口先だけでは不十分です。
新規事業については、既存事業の現状分析をふまえた「事業計画書」をつくりましょう。文書にすることで、新規事業の妥当性・必要性に客観性をもたせることができるようになります。
銀行は、「口先だけ」の熱量を信じないものです。それだけの熱量があるのなら、きちんと「可視化(文書化)」をしてほしいと考えるのが銀行でもあります。
以上をふまえて、社長はとにかく冷静に。既存事業と新規事業、どちらも同じ熱量で話ができるようにしましょう。計画を「文書化」する過程には、冷静になるというメリットもあります。
本業とは無関係
新規事業というと、まったくのあたらしい事業というイメージがあるかもしれません。事実、まったくのあたらしい事業をはじめようとする社長がいます。
たとえば、建設業の会社が飲食業をはじめようとするのなどは典型です。聞けば、社長が「飲食業をやってみたかったから」という理由であり、まったくもっての門外漢…みたいな。
すると、せっかくの新規事業も失敗の可能性は高まります。なので、銀行も「本業(既存事業)とは無関係」な新規事業については、強く警戒するものであることを覚えておきましょう。
というか、対銀行以前に、社長自身がそのことに注意が必要です。とはいえ、表面的なところだけを見て、「本業とは無関係」かどうかを判断するものでもありません。
さきほどの例でいえば、建設業の会社が飲食業をはじめることが、必ずしもダメだとはいえないということです。たとえば、その会社が「飲食店の外装・内装工事」を専門にしているのだとしたらどうでしょう。
この場合、飲食業についてまったくの門外漢とはいえません。むしろ、専門家に近いといってよいでしょう。で、なにがいいたいのか?
新規事業は、本業(既存事業)とからめた事業が望ましい。いいかえると、本業から一歩二歩、軸足をズラしたくらいのところが、うまくいく可能性が高いだろうということです。軸足をズラしすぎると、難易度が高くなります。
よって、新規事業は「本業との関連性」が高いほど銀行の理解もえやすく、新規事業のための融資も受けやすくなります。なので、新規事業を検討する際には、本業との関連性についても考えてみるようにしましょう。
まとめ
変化の速いこの時代、会社の持続・成長に欠かせないものの1つが「新規事業」です。とはいえ、銀行から嫌われる新規事業もありますよ、というお話をしました。
とはいえ、対銀行だけに限った話でもなく、新規事業における「本質」にからむ話でもあります。新規事業に取り組む際のポイントとして、ぜひいちど確認をしておきましょう。
- 既存事業が赤字
- 社長が入れ込む
- 本業とは無関係