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資金繰りが悪いのは顧問税理士のせいではない

資金繰りが悪いのは顧問税理士のせいではない

社長のなかにはいちぶ、「資金繰りが悪いのは顧問税理士のせいだ」との考え方もあるようです。でも、そうでもないよねという話と、社長自身が資金繰りや銀行融資を学びましょう、という話をします。

目次

むしろ誠意ある税理士だ

社長から銀行融資のご相談をうかがっていると、「顧問税理士」の話になることがあります。

聞けば、「顧問税理士が銀行融資についてアドバイスをしてくれない」とか、あるいは「顧問税理士に聞いても、銀行融資のことはよくわからないといわれる」とか。

だから、自社の資金繰りがうまくいかない、資金繰りが悪くなっているのだ。と、明言されるケースもあれば、言外に思いがあふれでているケースもありますが。

いずれにせよ、端的にいえば「顧問税理士のせい」で、資金繰りが悪いとの考え方はいちぶにあるようです。この点、わたしは「税理士もいろいろですから」との回答しかできません。

なにしろ税理士は税金の専門家であり、資金繰りや銀行融資の専門家ではないわけで。税理士になるにあたって、それらの勉強が必須でもないのです。

そのうえで、会社は税理士に「税務(税金計算や税金相談など)」を依頼しているのだから、その税理士が銀行融資のアドバイスができずとも、銀行融資のことがわからずとも、しかたのないことだともいえます。

だとすれば、前述した「アドバイスしてくれない」や「よくわからないという」のは、無責任にアドバイスされたり、テキトーなことをいわれるよりはむしろ、誠意ある税理士だといえます。

そんなことをいっていると。おいおい、なんのポジショントークだ?と、お叱りを受けそうです。わたしもまた税理士ですし、以前は銀行融資のことがわかっていませんでした。

だからこそ、資金繰りを「顧問税理士のせい」にしてもしかたがない、「顧問税理士のせい」にするのではなく、社長自身が資金繰りや銀行融資について学ぶことをおすすめしています。

その一環として、税理士が資金繰りについて誤った解釈をしているケースについて、わりとよくあるものを挙げてみることにしましょう。次のとおりです↓

税理士が資金繰りについて誤った解釈をしている例
  • 預金を減らして借入を減らす
  • 利益を減らす節税をすすめる
  • 売掛金・在庫を減らしすぎる

このあと、順番に解説をしていきます。

税理士が資金繰りについて誤った解釈をしている例

預金を減らして借入を減らす

顧問先に、繰り上げ返済をアドバイスする税理士がいます。が、多くの場合、繰り上げ返済はしないほうがよいものです。いうまでもなく、繰り上げ返済した分だけ預金が減ってしまいます。

繰り上げ返済をすすめるおもな理由として、利息がもったいないから、あるいは、借入を減らせば決算書がよくなるから、というものがあるようです。

たしかに、ただ利息を払うのはもったいない。けれども、いずれまた銀行融資を「受ける可能性」があるのなら、利息は「保険料」のようなものであり、必要コストだといえます。

繰り上げ返済をしたのち資金繰りが悪くなり、融資を受けようとしても受けられるかどうかはわかりません。資金繰りが悪くなっている分、銀行も警戒しますから、難易度は高くなります。

だったら、将来のリスクに備えて借りたままにしておくほうがよくないですか?という話です。

また、借入を減らせば決算書がよくなるとの考えは、机上の空論でもあります。たしかに、借入が減ることで自己資本比率が改善するなど、「表面的」にはよくなるでしょう。

ですが、繰り上げ返済をした分だけ預金が減ることは前述したとおりです。自己資本比率がいくら改善したところで、資金ショートを起こしていたのでは元も子もありません。

この点、銀行は「預金残高」に注目をしています。目安として、平均月商の1か月分を割り込むようなら「危険」、2か月を割り込むようなら「警戒」という見方です。

よって、繰り上げ返済の結果、預金残高が平均月商の2か月を下回るようなら、その後の銀行融資を考えると、繰り上げ返済をしないほうが「よい対応」だといえるでしょう。

繰り上げ返済のアドバイスが必ずしも誤りではないにしても、アドバイスの「根拠」については確認をする必要があります。根拠もわからずに、アドバイスにしたがうのは危険です。

利益を減らす節税をすすめる

冒頭、税理士は税金の専門家だといいました。ゆえに、顧問先の税金を減らすこと熱心な税理士がいます。もちろん、悪いことではありませんし、ムダな税金を払わせるようではいけません。

ただ、税金の減らしかたもいろいろです。なかでも、利益を減らす節税には気をつけましょう。銀行融資には悪影響を与えることがあります。

法人税は利益に対してかかる税金であるため、費用を増やして利益を減らせば法人税を減らすことが可能です。たしかに税金は減るのですが、いっぽうで銀行融資が受けにくくなることについては、税理士からアドバイスがありましたでしょうか。

銀行は、「利益の大きさ」を評価します。いうまでもなく、「利益=返済力」だからです。その利益が少なくなれば、銀行からの評価は下がってしまいます。融資が受けにくくなります。

「いやいや、節税だから」などといっても、銀行は聞く耳を持ちません。だって、利益が減ったのでしょう?費用を増やした分、おカネも支出してしまったのでしょう?(=返済力・返済原資の減少)というハナシです。

繰り返しになりますが、節税自体が悪いのではありません。ここでお伝えしたいことは、節税と銀行融資とのバランスを考えましょう、ということです。

税金を減らすことに偏ってしまうと、銀行融資がじゅうぶんに受けられず、結果として資金繰りが厳しくなってしまう。資金繰りが厳しくなると、経営が悪化するのはよくある流れです。

資金繰りに時間や気力を奪われ、社長が経営に集中できなくなるから。また、事業の成長に対して(新規事業や新規出店、商品開発、人材採用など)、おカネを投じることができなくなってしまうからです。

利益を減らす節税には、くれぐれも気をつけましょう。

売掛金・在庫を減らしすぎる

売掛金や在庫が多いと、資金繰りが悪くなる。売掛金や在庫をできるだけ圧縮しましょう、というアドバイスがあります。正しいことのようにおもえますが、必ずしもそうではありません。

売掛金を減らすために、売上先に「もっと早く支払ってくれ」という話をしたらどうなるでしょう?売上先としては資金繰りがツラくなりますから、「だったらほかで買います」ともなりかねません。

すると、売掛金が減っても、売上まで減ってしまう。ひいては、利益が減ってしまいます。ゆえに、売掛金を減らせというアドバイスはあまり現実的とはいえないのです。

では、在庫を減らせというアドバイスはどうでしょう。たしかに、ムダな在庫はよくありませんが、在庫を減らしすぎると欠品が増えたり、納品までの時間が延びてしまったり…

結果として、販売機会を逃してしまったり、ひいては客離れが起きるのであれば問題です。やはり、売上が減る・利益が減るということになってしまいます。

利益が減れば、銀行からの評価が下がり、融資が受けにくくなることは前述しました。では、どうするか?

自社の商売において必要な売掛金・在庫までは減らさないことです。銀行に対しては、その「必要性」を説明し、売掛金・在庫分の融資(=経常運転資金の融資)を受けるようにしましょう。それができれば、売掛金・在庫に起因する資金繰りの悪化は生じません。

もっともらしいアドバイスも、その正否はケースバイケースであることを覚えておきましょう。

まとめ

社長のなかにはいちぶ、「資金繰りが悪いのは顧問税理士のせいだ」との考え方もあるようです。でも、そうでもないよねという話と、社長自身が資金繰りや銀行融資を学びましょう、という話をしました。

顧問税理士が資金繰りや銀行融資に明るいことがベストですが、どちらかといえばレアケースだといえます。社長は、その現実を理解したうえで、資金繰りや銀行融資に臨むのがよいでしょう。

税理士が資金繰りについて誤った解釈をしている例
  • 預金を減らして借入を減らす
  • 利益を減らす節税をすすめる
  • 売掛金・在庫を減らしすぎる
資金繰りが悪いのは顧問税理士のせいではない

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