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社長が知っておきたい純資産(自己資本)の見方

社長が知っておきたい純資産(自己資本)の見方

社長が、「決算書の見方がわからない」というのでは困ってしまいます。その決算書のなかでもとらえづらい項目の1つである「純資産(自己資本)」について、見方を押さえておきましょう。

目次

いちどくらいは聞いたことがある

社長たるもの、決算書が読めるようになりましょう。というハナシを、いちどくらいは聞いたことがあるでしょう。何をもって「読める」のかはさておき、社長が「決算書の見方がわからない」というのでは困ってしまいます。

まず、自社の状態を「数字」で把握できないことになりますし、だとすれば、銀行や社員などに対しても「数字」で話ができない…ということになってしまうからです。

とはいえ、決算書の見方もいろいろで、ゆえに、いろいろと見るべき点もあります。だからこそ、見方がわからない、決算書を読むのは難しいということにもなるのでしょう。

この点、本記事では「純資産(自己資本)」に的を絞ってお話をします。純資産もまた、決算書のなかではとらえづらい項目の1つです。これを機会に、ぜひ見方を押さえておきましょう。

おもなところでは、次のとおりです↓

社長が知っておきたい純資産(自己資本)の見方
  • 自己資本比率もほどほどで
  • どれだけ赤字に耐えられるか
  • 実態でもプラスといえるのか

このあと、順番に解説をしていきます。

社長が知っておきたい純資産(自己資本)の見方

自己資本比率もほどほどで

自己資本比率を高めましょう。というのも、よく聞くハナシです。が、ほどほどにしておきましょう。少なくとも、現金預金を大きく減らしてまで自己資本比率を高めるものではありません。

たとえば、負債8,000万円、純資産2,000万円(総資本は1億円)の会社があったとします。この会社の自己資本比率は20%です(2,000万円÷1億円)。

では、現金預金3,000万円のうち、2,000万円で繰り上げ返済したらどうでしょう。負債は6,000万円に減ることから(総資本も8,000万円に減る)、自己資本比率は25%に高まります(2,000万円÷8,000万円)。

とはいえ、現金預金は1,000万円まで減りました。総資本1億円の会社にとって、現金預金1,000万円は心もとない金額だといえます。だとすれば、自己資本比率と引き換えに資金ショートの確率が高まったわけです。

というように、自己資本比率を高めたところで、資金繰りが悪化するということはありえます。よって、自己資本比率を高めるのであれば、現金預金残高とのバランスをとりましょう、ということです。

これに関連して、銀行は「現金預金の過少」を嫌うことを覚えておきましょう。現金預金が少ないと、資金ショートの確率が高く、貸したおカネを返済してもらえない確率も高まるからです。

この点、現金預金残高は「平均月商(年間売上高÷12か月)の2か月分以上」が目安になります。逆に、これを下回るようだと、銀行融資が受けにくくなるということです。

なお、自己資本比率が一ケタになるのもよくありません。倒産する会社が増える、というデータがあるからです。したがって、自己資本比率は最低でも二ケタ以上、かつ、現金預金は平均月商の2か月以上、というバランスをとるようにしましょう。

どれだけ赤字に耐えられるか

純資産がマイナスになることを、「債務超過」と呼びます。純資産がマイナスということは、同時に「資産<負債」の状態でもあるからです。負債が資産を超えている、ゆえに債務超過となります。

だとすれば、危険な状態であることはわかるでしょう。資産をすべて現金化しても、負債を完済することはできない。なので、債務超過になると銀行融資は極端に受けにくくなります。

こうなると、資金繰りはきわめて厳しくなるのですから、社長はなんとしても債務超過を避けねばなりません。そこで、「債務超過までどれだけの余裕があるか」を確認しておきましょう。

仮に、純資産が2,000万円であれば、2,000万円の赤字までは耐えられるということです。これは、「税引後利益の増減だけ純資産も増減する」という決算書のしくみによっています。

では、純資産が500万円ならどうでしょう。さきほどとは違い、赤字が500万円でも債務超過に陥ってしまいます。1年で2,000万円の赤字を出すことはなくても、500万円の赤字ならじゅうぶんにありうる…というのであれば、純資産500万円は危険信号です。

というように、純資産の金額は「どれだけ赤字に耐えられるか」をあらわしているともいえます。その耐えるチカラを高めるためには、純資産の金額をできるだけ増やしておくことです。

どうやって増やすかは、さきほどの話を思い出せばわかります。「税引後利益の増減だけ純資産も増減する」のですから、毎年の税引後利益を増やせば純資産も増えていくわけです。

ポイントは「税引後」にあります。つまり、税金を払わなければ、税引後利益は増えないし、純資産も増えないということです。税金を嫌ってばかりいると、純資産は増えないことを理解しておきましょう。

税金を嫌えば、赤字に耐えるチカラは弱まり、会社の寿命を縮めることにもなりかねません。

実態でもプラスといえるのか

債務超過になると、銀行融資が極端に受けにくくなるといいました。では、債務超過でなければよいかといえば、必ずしもそうではありません。

たとえば、決算書の資産が1億円、負債が8,000万円の会社であれば、「資産>負債」ですから債務超過ではなく資産超過です。ところが、資産1億円のうちに、その金額ほどの価値がないものが混じっているとしたらどうでしょう。

たとえば、決算書には棚卸資産(在庫)3,000万円とあるが、陳腐化・劣化しているものもあり、実際に在庫としての価値があるものは1,000万円分でした…みたいな。

こういった場合に銀行は、その棚卸資産を3,000万円ではなく1,000万円として、決算書を修正したうえで評価しています。というように、銀行は決算書を表面的に見ているのではなく、「実態」で見ているのです。

これにより、決算書の資産は1億円から8,000万円となります。負債も8,000万円なのですから、ほかにも同じような修正があれば、たちまち債務超過です。

たとえば、決算書の売掛金のなかには、回収できない金額が混じっているとか。決算書の貸付金は、回収見込みがないとか。固定資産について、法定限度額まで減価償却をしていないケースなども、修正の対象です。

したがって、社長は「実態で見ても、純資産はプラスといえるのか」を確認するようにしましょう。これは、社長も「銀行の見方」ができるようになりましょう、ということです。

それができないと、社長の見方と銀行の見方とにギャップが生じ、社長は「どういうわけか融資が受けられない、おかしいなぁ…」ということになってしまいます。

まとめ

社長が、「決算書の見方がわからない」というのでは困ってしまいます。その決算書のなかでもとらえづらい項目の1つである「純資産(自己資本)」について、見方を押さえておきましょう。

これにより、社長は自社の状態をより把握できるようになりますし、自社の状態を銀行に伝えるにあたっても、より的を射た伝え方ができるようになるはずです。結果として、融資の受けやすさにもつながります。

社長が知っておきたい純資産(自己資本)の見方

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