銀行は、取引先(融資先)の売上計画を気にしています。そこで、社長が銀行に売上計画を伝える際の勘所を押さえておきましょう。でなければ、肝心なことが伝わらず…になりかねません。
肝心なことが伝わらず
銀行は、取引先(融資先)の「売上」を気にしています。いうまでもなく、売上が利益の源泉であり、利益が返済力という見方があるからです。だとすれば、売上は大事。
その売上がいまはよかったとしても、将来にわたってよくなければ困ってしまう。売上が減って、利益も減って、貸したおカネを返済できなくなってしまったら、銀行は困ってしまいます。
なので、銀行は「将来の売上見込み」としての「売上計画」も気にしていることを、社長は理解しておきましょう。つまり、社長は「売上計画」を銀行に伝えられるように、ということです。
このときのポイントは、次のとおりとなります↓
- 文書は保守、口頭は楽観
- 質より量、外部より内部
- 達成に執着、定期で報告
これらは、銀行に売上計画を伝える際の「勘所」であり、そこを押さえていないと、肝心なことが伝わらず、せっかくの売上計画も銀行に対しては効果なし…ということにもなりかねません。
社長が銀行に売上計画を伝える際の勘所
文書は保守、口頭は楽観
大前提として、売上計画は「文書」で伝えましょう。銀行に、売上計画を文書として渡す、ということです。いっぽうで、「文書はメンドー」だからと、口頭だけで済まそうとする社長がいます。
すると、銀行には「真剣さ」が伝わらず(口先だけなんじゃないの?)、銀行が記録にも残していなければ、伝えていないといっしょです。これでは、伝える意味がありません。
だから、確実に伝えるためにも、まずは「文書」を用意するところからスタートです。このとき、どういうわけか「大風呂敷」を広げがちになるので気をつけましょう。
銀行に見せる以上、「よい計画でなければいけない」と考えてしまうのか、だいぶ楽観的な計画をつくってしまうケースが散見されます。ここでいう楽観的とは、現実とはかけ離れている、ということです。
いま現在の売上高から見て、計画値が相当に高いとか、これから先、右肩上がりで売上が増加していくとか(これまで低迷を続けているのに…)。これでは、銀行も計画を信用できません。
実際に、その計画を達成できなければ、いっそう信用を失います。なので、「文書は保守的」につくることが基本です。手堅く、達成可能性が高い値の計画をつくる、といういうことです。
そのうえで、文書を銀行に手渡す際、「口頭は楽観的」に伝えます。たとえば、「この計画は必達目標であり、実際には上振れを見込んでいます」といった具合です。
これだと、保守的な計画も過小に評価されることはなくなりますし、期待感を持って計画を受け止めてももらえるでしょう。これが逆になりがちなので、注意です。
口頭では悲観的なことをいいながら(今後の売上見込みは不透明…とか)、なぜか文書は楽観的という社長がいます。これでは、せっかくの売上計画も逆効果です。
質より量、外部より内部
一般的には、「量より質」というハナシがありますが。銀行に対する売上計画については、その逆。質より量という一面があるものと考えておきましょう。
なんだかんだと銀行は、売上が好きなのです。売上が好きとは、売上高が多い会社が好きだ、ということです。冒頭でもいったとおり、売上こそが利益の源泉だからですね。
極端をいえば、売上がゼロなら、利益は生まれませんから。売上が利益の源泉だという見方もわかります。この点、「売上高」が「量」にあたります。なので、計画のなかでは「量」を数字であきらかにしましょう。
これに対して、量をあいまいにしたまま「質」を語ろうとする社長がいます。典型例は、「付加価値アップ、がんばります!」みたいなハナシです。銀行からしてみれば、付加価値ってなに?おカネになるの?ということであり、量を語らずに質を語ることで煙に巻いてはいけません。
また、現状、売上不振の状況にある会社が、不振の原因を語る際にも注意が必要です。その原因を、内部ではなく外部に求めるようだと、銀行からは「他責社長」だと見られてしまいます。
たとえば、「コロナのせいで」とか「円安のせいで」とか、それらは外部の原因です。たしかに、それらも不振の要素ではあるのでしょうが、メインの要素ではありません。
本当の原因は、外部の要素に「振り回される」あるいは「対応しきれない」という、内部にあるのではないですか?というのが、銀行の見方であり、考え方です。事実、同じ外部の要素がありながらも、好調な会社はあります。
したがって、内部より外部のことばかり話す社長は、銀行から好まれません。外部のことはほどほどに、内部のことを語れるようになりましょう。実際にも、そのほうが経営改善につながるはずです。
達成に執着、定期で報告
これは、銀行に計画を伝えたあとのことですが、計画の達成に執着しましょう。そんなのあたりまえでしょう、とおもわれるかもしれません。ところが、現実は違います。
計画をつくったきり、二度とその計画を見ない。計画は、引き出しの奥深くにしまわれたまま。というケースは、けして少なくないのです。まるで、はじめから計画などなかったかのように。
いっぽうで、銀行は計画の「その後」を注視しています。計画が、達成されるのかどうかを気にしているのです。社長は「必達」といったのだから、さぞかし達成にこだわっているのだろう。と、銀行は考えています。
にもかかわらず、後日、社長と会って話をしてみたら、計画の話などまったく出てこない。しかたなく、銀行のほうから話を振ってみれば、「あぁ、計画ね…」などと、いま思い出したかのような対応をされてしまう。これでは今後、銀行に計画を信じてもらうことはできません。
計画を信用してもらうためには、計画をつくったあとが大事なのです。社長がその達成に執着している姿に、銀行は信用を感じることを覚えておきましょう。
したがって、銀行に計画を渡したあとは、定期的に「報告」をすることです。計画に対して、実績はどのようになっているのか。計画を下回っているのであれば、原因と対策も伝えます。
そういった報告により、社長が計画の達成にこだわっていることは伝わるものです。銀行にいわれてから、計画の進捗報告をしているようでは遅すぎます。
まとめ
銀行は、取引先(融資先)の売上計画を気にしています。そこで、社長が銀行に売上計画を伝える際の勘所を押さえておきましょう。でなければ、肝心なことが伝わらず…になりかねません。
- 文書は保守、口頭は楽観
- 質より量、外部より内部
- 達成に執着、定期で報告