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銀行融資は「経営者保証ありでもいい」と考える先の泥沼

銀行融資は「経営者保証ありでもいい」と考える先の泥沼

経営者保証なしの融資が増えているとはいうけれど。別に、経営者保証ありでもかまわない。社長がそのように考えていると、先には泥沼が待っているかも…と、そんなお話です。

目次

経営者保証の変化で融資が受けにくくなる

銀行から融資を受けるときの条件(=融資条件)のひとつに、「経営者保証」があります。つまり、会社が融資を受けるにあたって、社長個人が連帯保証人になるかどうか、ということです。

もちろん、社長にとっては「あるよりはないほうがいい」ものですが、銀行にとってはその逆なので、カンタンに経営者保証をなくせるかといえばそうでもありません。

この点、少し前までは、経営者保証をなくせない会社のほうが多数派でした。が、いまは状況が変わりつつあります。金融庁が公表している資料によれば、新規融資に占める経営者保証なしの融資の割合は約5割、という状況です。

わずか5年ほど前には1割台だったことを考えると、大きな変化でもあります。今後も、この傾向は続くものと考えるべきでしょう。なぜなら、金融庁が銀行に要請していることだからです。

なので、「原則、経営者保証なし」を公言する銀行もあらわれました。金融庁が要請している以上、経営者保証なしの融資を増やさねば…との思いが、各銀行にはあるわけです。

とはいえ、単に経営者保証なしにすればいい、というわけにもいきません。経営者保証をなくすことは「貸し手」にとってはリスクですから、「一定の基準」はクリアしてもらわねば困ります。

その基準となるものの1つが、「経営者保証に関するガイドライン」です。そこには、いわゆる3要件が明記されていますが、これをクリアできるのであれば経営者保証なしでもOK。端的にいえば、そういうことです。

では、その3要件を満たすことができない会社から、「融資を受けたい」といわれたらどうでしょう。前述した「新規融資に占める経営者保証なしの融資の割合」を高めたいと考えている銀行ほど、そういった会社への融資には消極的になるはずです。

つまり、経営者保証なしで融資をできるようなよい会社には融資をするけれど、逆に、経営者保証なしでは融資ができないような悪い会社にはもう融資をしない。結果、後者の会社(3要件を満たせない会社)は、今後は融資が受けにくくなることが推測されます。

銀行には事業継続の視点がある

ガイドラインの3要件を満たせないような会社は、さらに融資が受けにくくなる要素があります。3要件が満たせなければ、経営者保証をなくすことはできない。経営者保証をなくすことができないと、事業継続に問題が生じるのでは…?という懸念につながるからです。

わかりやすい例として、親から子への事業承継で考えてみましょう。現在は、親が社長です。将来的に、子への承継を予定しています。では、現在、経営者保証をなくせない状況だとしたらどうでしょう。承継すれば、子は親の経営者保証を引き継ぐきことになります。

親の心子知らずではありませんが、まだ「社長業」というものがよくわからない子にとって、経営者保証は怖すぎるシロモノです。絶対にイヤだ、経営者保証がなくせないなら社長になどなりたくない!承継するのが子ではなく、親族以外の他人であればなおさらでしょう。

なので、経営者保証が原因となり、承継がうまくいかないこともある。事業の継続が危ぶまれることもある。これは、それほどめずらしいハナシでもありません。

それを知っている銀行は、経営者保証をなくせない会社を見て、「いまはよくても、長い目で見たらわからないな…」と考えるものです。すると、後継者の意思表示(経営者保証ありでも承継する)が明確になるまでは、融資に消極的になることはありえます。

というように、経営者保証をなくせない会社は、いまだけではなく、将来にわたって不安視されてしまう点でも、いっそう融資が受けにくくなることは理解しておいたほうがいいでしょう。

社長が以前のように、「経営者保証はありでもいい」との考えでいると、以前のようには銀行融資が受けられなくなるかもしれない、ということです。

融資の受けにくさは他行にも連鎖する

会社にとっての試練はまだ続きます。銀行には「他行の動き」を気にする、という習性があります。ゆえに、「他行が融資をしないなら、自行も融資を控える」ということはあるものです。

たとえば、A銀行が融資を控えているようだ(融資残高が減少するいっぽう)と、B銀行が気がつきました。ちなみに、A銀行が融資を減らしたのは、経営者保証をなくせない会社だからです。

するとB銀行は、「A銀行が貸せない理由があるほど、会社の状況が悪いのでは?A銀行が融資を控えれば、その分、資金繰りが悪くなっていっそう状況が悪くなるのでは?」と考えます。

そのA銀行が融資を減らした分を、自行に押し付けられたのでは、B銀行もたまりません。ならば、A銀行にならって、自行も融資は控える方針でいこう。ということだって、あるわけです。

A銀行からだけ融資を減らされるならまだしも、他行からも融資を減らされるようだと、資金繰りが大きく悪化してしまいます。だとすれば、「経営者保証はありでもいい」が危うい考え方だともおもえるはずです。

ところで、経営者保証ありの融資を受けている会社が、必ずしも業績が悪い会社かといえば、そうでもありません。なかには、業績は問題がないのに、経営者保証ありの融資だという会社もあります。

その原因のひとつは、会社が銀行に対して「経営者保証なしの融資」を相談していないことです。全体観でいえば、銀行は経営者保証なしの融資を増やそうとはしているものの、銀行個別で見れば、経営者保証なしの融資には消極的なところもあります。

銀行が消極的なのに、会社が黙っていれば、経営者保証ありの融資になってしまうでしょう。なので、経営者保証なしの融資を受けたければ、会社のほうから銀行にそれを伝えることです。

それから、もうひとつの原因が「社長の公私混同」や「粉飾決算」です。業績はよかったとしても、社長と会社のあいだの貸し借りが多かったり、決算書に粉飾(資産や利益の水増し)があると、銀行は経営者保証を外すことはできません(ガイドラインにも、その旨の記載あり)。

以上の点をふまえて、社長は経営者保証なしの融資を受けられるように動きましょう。

まとめ

経営者保証なしの融資が増えているとはいうけれど。別に、経営者保証ありでもかまわない。社長がそのように考えていると、先には泥沼が待っているかも…と、そんなお話でした。

いざ、融資が受けにくくなってからでは遅すぎます。経営者保証なしの融資が受けられるように、できることからひとつずつ、すぐにでも動き出しましょう。

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