銀行から借入をしている会社の社長が、把握しているほうがよいのに、実際には把握していないというものがいくつかあります。把握できないままではマズいので、気をつけましょう。
ところが、そのままにしていると
銀行から借入をしている会社の社長が、「コレ、把握していないことが多いよね」というものがいくつかあります。いうなれば、社長が銀行借入について把握していないあるある。
ところが、そのままにいると、のちのち困ったことになったり、損をしてしまったりということになりかねません。なので、把握できていないことに気づきましょう。
というわけで、「社長が銀行借入について把握していないあるある」がこちらです↓
- 年間返済額
- 保証付き融資の残高
- 実質金利
このあと、順番に解説をしていきます。
社長が銀行借入について把握していないあるある
年間返済額
会社の資金繰りを考えるうえで、絶対に見逃してはいけないのが「年間返済額」です。これから1年のあいだに、銀行にどれだけ返済をすればよいのか。さて、把握していますか?
これが意外と、把握できていない社長が少なくありません。えっと…いくらだっけ?みたいな。
極端をいえば、どれだけ利益が出ていても、それを上回る返済額であれば、資金繰りは厳しくなります。なぜなら、利益(それも税金を払ったあと)のなかから、返済をするからです。
もし、利益に対して返済額が大きすぎるのであれば、複数ある借入を「1本化(ひとつにまとめて返済期間を延ばす)」するなどして、バランスをとる必要があります。
とはいえ、それも年間返済額を把握していてこそです。おすすめの方法は、決算書に記載する銀行借入を「1年以内返済長期借入金」と「長期借入金」の2つの勘定科目に区分すること。
1年以内返済長期借入金は、文字どおり、決算日から向こう1年以内に返済する分の借入金であり、これにより年間返済額があきらかになります。
で、長期借入金は、その1年以内返済長期借入金を除く、残りの銀行借入の金額です。つまり、決算日から1年を超えて返済をする分、ということになります。
ところが、これら2つの金額がいっしょくたにされて、「長期借入金」などとされている決算書はあるものです。すると、社長が決算書を見たところで「年間返済額」の把握はできません。
決算書の作成を税理士に任せているのであれば、勘定科目を2つに分けてもらうよう相談をしてみましょう。
保証付き融資の残高
銀行借入の残高(借入総額)を把握はしていても、その内訳は把握できていない、というのもあるあるです。ここでいう「内訳」とは、借入総額のうち、信用保証協会の保証付き融資の残高はいかほどか、ということです。
そもそも、内訳は大きく3つに分かれます。民間銀行からの保証付き融資と、プロパー融資(保証付き融資以外の融資)。それから、公的銀行(≒日本政策金融公庫)からの融資の3つです。
ではなぜ、保証付き融資の残高を把握する必要があるのか?保証付き融資には、制度上の限度額があるからです。無担保の一般保証であれば、8,000万円が限度になります。
なお、必ずしも8,000万円まで借りられるわけではなく、会社の規模や業績などによっては、それよりも少ない額までしか借りられない点には注意です(年間売上高の3〜5割くらいが目安)。
そのうえで、自社の保証付き融資の残高はいくらなのか。あとどれくらいの余力がありそうなのかを考えます。保証付き融資は、プロパー融資よりも借りやすい融資であり、いざというときのためにも余力は残しておきたいところです。
つまり、余力を残しつつ、プロパー融資を増やしていくことが大切になります。
とはいえ、銀行にとってはプロパー融資のほうがリスクは高く、貸しにくい。そこで、いちぶ保証付き融資でリスクを軽減できると、プロパー融資もしやすくなります。
だとすれば、社長は保証付き融資の余力を把握し、余力を銀行に提供することで、プロパー融資を引き出すことも考えなければいけません。たとえば、「今回は保証付き融資でかまいませんが、次回はプロパー融資でお願いします」とか。
借りやすいからといって、ただただ保証付き融資を受けているのではいけません。
実質金利
借入金額1,000万円、借入金利は年利2%というときの「2%」は、「表面金利」です。これに対して、「実質金利」という考え方があります。
たとえば、1,000万円の借入をしている銀行に、600万円の預金をしているとしたら。会社が銀行に支払う年間利息は、ざっくり20万円です(1,000万円×2%)。
ところが、会社は銀行に600万円を「貸している(=預金)」のであり、だとすれば、会社は400万円しか借りられていないともいえます。これをふまえて、金利を考えると…
20万円÷(1,000万円ー600万円)=5%
というように、実質的には5%もの金利で借りていることになります。これが、実質金利です。銀行は実質金利を必ず把握しているいっぽうで、社長のほとんどは把握していません。
すると、どうなるか。合理的かつ効果的な金利交渉はできなくなります。
前述の実質金利が5%の銀行が、A銀行だとして。それとは別に、B銀行からはA銀行と同じく表面金利2%で1,000万円を借入しているとします。いっぽうで、B銀行への預金は200万円です。
このとき、B銀行の実質金利は2.5%になります(じぶんで計算してみましょう)。
というわけで、A銀行の実質金利は5%で、B銀行の実質金利は2.5%です。では、どちらの銀行が、金利の引き下げ交渉をしやすいかといえば、A銀行です。
同じ1,000万円を貸すのでも、A銀行のほうがもうかっているので、金利を下げる余地が大きいから、ということになります。社長は、各銀行の実質金利も把握するようにしましょう。
まとめ
銀行から借入をしている会社の社長が、把握しているほうがよいのに、実際には把握していないというものがいくつかあります。把握できないままではマズいので、気をつけましょう。
というわけで、本記事で取り上げた内容を把握しているか、要確認です。
- 年間返済額
- 保証付き融資の残高
- 実質金利