ついに、日銀が利上げに動き出しました。そしてまず、メガバンクは短期プライムレートの引き上げに動き出しています。ひいては、銀行全体に広がり…会社の借入金利はどうなるのか?
ついに、日銀が利上げ
きょうは、2024年8月5日。今月2日、ついに、日銀が政策金利を0.25%に引き上げました。これまでは、0.0%〜0.1%に誘導していたため、0.15%ほど引き上げたことになります。
これを受けて、なにが起きたのか?といえば。まずは、三菱UFJ銀行が短期プライムレートを、従来の1.475%から1.625%まで引き上げました。やはり、0.15%の引き上げです。
となれば当然(?)、同じメガバンクである三井住友銀行とみずほ銀行も追随します。というわけで、三菱UFJ銀行に遅れること2日、三井住友銀行・みずほ銀行の両行もまた、短期プライムレートを1.475%から1.625%まで引き上げることを発表しました。
となれば、次になにが起きるかは自明です。はい、地方銀行でも短期プライムレートの引き上げがはじまるでしょう。この流れはもう、止めることはできません。
ここで、「そもそも短期プライムレートってなに?短期プライムレートが上がるとどうなるの?」と、おもわれるかもですが。結論、会社の借入金利が影響を受けます。
といわれても、よくわからないなぁ…というのであれば、このあとのお話を確認しましょう。
まずは、自社の借入金利の確認から
そもそも、短期プライムレート(以下、短プラ)とは。銀行が「この会社なら絶対におカネを返してくれる!」と信じている場合の、もっとも低い金利でおカネを貸すときの金利であり、「最優遇貸出金利」などとも呼ばれます。
この点、会社が銀行から借入するときの金利は、「短プラ+スプレッド」で決められているケースが多い、ということを覚えておきましょう。スプレッドとは、銀行が融資にするにあたり、リスクや手数料、利益を考慮して上乗せされる金利です。
以上をふまえて、自社の借入金利はどのように決められているのかを確認しましょう。すでに借入している分については、返済予定表や金銭消費貸借契約書、あるいは、金利に関する特約書といった書類で確認することができます。
返済期間が1年以上の「長期借入金(証書貸付)」であれば、「固定金利」や「短プラ変動金利」が多いはずです。
固定金利とは、文字どおり、金利が固定であり、短プラが変動しようとも影響を受けません。よって、返済がおわるまで、金利は変わらないことになります。
いっぽうで、短プラ変動金利とは、短プラの変動にあわせて上下する金利です。なので、今回のように短プラが引き上げられると、借入金利も自動的に引き上げられることになります。
というわけで、「既存の長期借入金」については、金利の決められかたを確認するのみです。ほかにやることがあるとすれば、短プラ変動金利の場合に、どれだけ支払利息の額が増えるかのシミュレーションでしょう。
これに対して、やるべきこと・やれることがあるのが、新規の長期借入金と、短期借入金(返済期間が1年以内の借入)の金利です。
銀行からの金利交渉にどう対応するか
短プラが引き上げられたことは、前述したとおりです。
また、銀行自身が資金調達をする際の金利であるTIBOR(東京銀行間取引金利、銀行どうしがおカネを貸し借りするときの金利)も上昇しているため、融資金利を引き上げることが必至となります。
つまり、銀行は「ここが融資金利の引き上げどきだ」と、こぞって金利の引き上げ交渉にかかるわけです。ここで問題になるのが、新規の長期借入金と短期借入金であり、会社は注意を要します。
既存の長期借入金については、固定金利や短プラ変動金利であり、会社はいまさらどうしようもないことは前述しました。それは、銀行側も同じです。
ところが、新規の長期借入金については、金利の引き上げどきとして、引き上げ交渉をすることができます。以前と同じような額、同じような返済期間の借入であっても、金利は高く提示される…ということです。
また、短期借入金(手形貸付や当座貸越)も、返済期日を迎えるたびに、銀行は金利引き上げ交渉をすることができます。これに対して、会社はどう対応すればよいのか。
まずは、短プラ上昇分の「0.15%」以内の引き上げであれば、よしとすることです。世の中の金利水準が上がれば、自社の借入金利も上がるのは当然との理解であり、0.15%の引き上げはしかたがない、という考え方になります。
次いで、0.5%以内の引き上げにおさまるかどうかです。短プラ上昇分は0.15%ですが、前述のTIBORなど、銀行自身の調達金利は以前よりも0.5%ていど上昇していることから、0.5%くらいの融資金利引き上げを求める銀行はあるだろうと考えます。
問題は、0.5%を超える金利引き上げを提示されるケースです。これは、世の中の金利水準以上に、引き上げを求められていることをあらわします。だとすれば、その理由・根拠を、銀行に確認することが大切なのであり、納得できなければ、銀行との話し合いが必要です。
話し合いができる状況なのか?
0.5%を超えるような金利引き上げを求められた場合、その理由・根拠を銀行に確認しましょう、といいました。場合によっては、単に「ふっかけられている」こともあるからです。
とくに、金利に無頓着な社長、金利に不勉強な社長だと、銀行からは足元を見られることになるので気をつけましょう。0.5%を超えるような引き上げに対して、なにも言わずに受け入れるのではいけません。
そのうえで、銀行がいう理由・根拠に納得できなければ、銀行との話し合いが必要だといいました。とはいえ、銀行が話し合いに応じるかどうかは「状況しだい」といえます。
たとえば、自社の業績がひどく悪い場合にはどうでしょう。金利を引き上げられるのは当然です。それに応じてもらえないのなら貸さなくてもいいや、と、銀行は強気に交渉ができます。
いっぽうで、自社の業績が良ければ、ほかに金利を低くしてくれる銀行から借りるという選択肢が会社にはありますから、むしろ、会社のほうが強気の話し合いに持ち込むことが可能です。
業績のほかにも、取引銀行の数が少ないと、ほかに借りるアテもないだろうと、高い金利を提示される傾向にあります。あとは、預金残高の多少なども、影響するところです。
したがって、銀行に対して話し合いができる状況なのか?ということは、考えておきましょう。社長は、銀行に対して、できるだけ強気に話し合いができる状況をつくる、ということです。
これから数年のあいだに、「借入金利が数%ていど上がる」とのシナリオは持っておきましょう。そのとき、無策でいたのでは、ムダに借入金利が上昇してしまいます。
まとめ
ついに、日銀が利上げに動き出しました。そしてまず、メガバンクは短期プライムレートの引き上げに動き出しています。ひいては、銀行全体に広がり…会社の借入金利はどうなるのか?
そのうえで、会社はどうすればよいのか。本記事の内容を参考に、いまからすぐにでも動き出しましょう。