銀行融資を受けるにあたり、決算書は黒字がよいのは皆の知るところです。が、その黒字も、実は純資産しだいだということはご存知でしょうか?といったお話をしていきます。
貸借対照表と損益計算書とをあわせ見る
会社が銀行融資を受ける場合、「決算書は黒字がよい」というのは皆の知るところでしょう。ですが、銀行から見た場合、黒字が必ずしもよいというわけでもありません。
つまり、黒字だからといって、必ずしも評価されるわけでもない、ということです。では、銀行による黒字の評価はどのようになっているのか?
ひとことでいえば、「純資産しだい」です。ここでいう純資産とは、貸借対照表の「純資産の部」の合計額のことであり、おもには「資本金」と「利益剰余金」とで構成されています。
いっぽう、黒字かどうかは、損益計算書の末尾にある「当期純利益」がプラスかどうかです。よって、貸借対照表と損益計算書とをあわせ見て、黒字は評価されることになります。
とはいえ、具体的にどう見るの?ということについて、このあと確認をしていきましょう。
黒字の評価は純資産しだい、とは?
黒字少ない→純資産増えない
決算書は黒字がよい、という点について。たとえ1円でも黒字は黒字であり、赤字よりは評価されることは間違いありません。ただ、黒字であったとしても、その額が少なければどうでしょう?
当然、「ビミョー」だと感じるはずです。では、「なぜ」にビミョーなのか。
銀行は、「純資産が増えない」からビミョーだ、という見方をしています。純資産とは、前述したとおり、貸借対照表の純資産の部の合計額です。純資産が、資本金と利益剰余金とで構成されていることも前述しました。
このうち、利益剰余金は「過去の利益(税引後利益)の累計額」です。つまり、黒字が大きいほど、利益剰余金は積み上がり大きな額になる。当然、純資産の額も大きくなります。
いっぽうで、黒字の額が少なければ、純資産の額はなかなか大きくなりません。
純資産とは、別の見方をすると「資産ー負債」です。貸借対照表も、そのようなつくりになっています。純資産が小さいということは、資産と負債がひっ迫していることをあらわすわけです。
ひっ迫を通り越して「資産<負債」となったらどうなるか。純資産がマイナス、いわゆる「債務超過」です。実質的な破たん状態にあることから、銀行はこれ以上の融資を控えるようになります。
だとすれば、その債務超過の可能性を減らすには、より多くの黒字を積み上げることであり、純資産の額を大きくすることが必要だとわかるはずです。
よって、純資産の額がなかなか大きくならないほど、黒字が少額の場合には、銀行からの評価がえにくくなることを理解しておきましょう。
純資産少ない→黒字たまたま
こんどは、大きな額の黒字だったとします。これなら、純資産の額を増やすこともできるでしょう。ところが、その純資産の額が、いま現在少ないとしたらどうなるか。
銀行は、「今回の黒字はたまたまなのかな」という見方をするものです。純資産の額が少ないということは、過去にはあまり黒字が出ていなかったということであり、今回はラッキーパンチかも。
といった見方をされるのでは、会社としてはツラいでしょう。だから、毎期しっかりと黒字を出しておく必要もあるわけです。銀行は、「平均的な利益額」で評価しています。
ここでいう平均的な利益額とは、「利益剰余金の額 ÷ 期数」です。たとえば、利益剰余金の額が3,000万円、いまの期数が10期だとすれば、平均的な利益額は300万円になります。
そのうえで、今期の利益が300万円であれば、「いつもどおりの利益だ」という評価になるでしょう。
ところが、利益剰余金の額が300万円、いまの期数が10期だとすればどうなるか。平均的な利益額は30万円です。今期の利益が300万円であれば、「たまたまかな」という評価にもなるわけです。
銀行が、純資産に注目していることは前述しました。だとすれば、その純資産を構成している利益剰余金は大きいほうがよく、そのためには、平均的な利益額も大きいほうがよいのです。
したがって、純資産の額が少ないと、せっかくの黒字もあまり評価をされにくくなってしまいます。やはり、毎期の黒字を少しでも大きくすること、純資産の額を積み上げることが大切です。
純資産マイナス→黒字の3倍
純資産の額を積み上げましょう、といいました。が、その純資産の額がすでにマイナスだ…という場合にはどう考えればよいのか。この点、銀行は「プラスにできるのか?」を気にしています。
具体的には、3年でプラスに戻せるのかどうかです。仮に、いまの純資産の額がマイナス600万円だとすれば、600万円÷3年なので、毎期200万円の黒字を出せるのか?となります。
よって、今期の利益が200万円を超えていれば、「回復の見込みあり」として、以降の融資をしてもらえる可能性もあるでしょう。ところが、今期の利益が200万円未満となると、「回復の見込みなし」として、融資をしてもらえなくなる可能性が高まります。
ですから、純資産のマイナス額は「年間黒字の3倍未満」が目安になることを覚えておきましょう。とはいえ、純資産のマイナス額が、年間黒字の3倍を超えているならどうするか?
経営改善計画書を作成し、銀行に提示することで、来期以降の利益が改善すること(黒字が増えること)を説明できるようにしましょう。
さきほどの例でいえば、「今期の利益は200万円未満だったけれど、来期以降は200万円以上の黒字が出せますよ」ということを、銀行に納得してもらいましょう、というわけです。
いっぽうで、なにもせずにいれば、融資をしてもらえなくなる可能性が高まることは、前述したとおりです。融資が受けられなければ、資金ショートの可能性も高まります。
したがって、「純資産のマイナス額>年間黒字の3倍」である場合には、すみやかに、経営改善計画書の作成に取り組みましょう。
まとめ
銀行融資を受けるにあたり、決算書は黒字がよいのは皆の知るところです。が、その黒字も、実は純資産しだいだということはご存知でしょうか?といったお話をしました。
黒字(利益)が純資産につながっていること、また、銀行が純資産に注目していることを理解して、黒字(損益計算書)と純資産(貸借対照表)とをあわせ見るようにしましょう。