東京商工リサーチによる調査結果、金利が0.5%上がったら借入返済する会社が6割。これをどう見るか。あまり合理的とはいえない考え方だよね、というお話をしてみます。
合理的ばかりではいられませんが
2024年8月16日付けで、東京商工リサーチから次のような調査結果が公表されました↓
要約すると、「使途がない借入金がある会社のうち6割が、金利が0.5%上がったら、その借入を返済する」とのこと。使いみちのないおカネは返してしまおう、と。個人的には、驚きでした。
何に驚いているのかといえば、現状や今後を考えるのであれば、「その借入を返済する」というのは、あまり合理的とはおもえないからです。
もちろん、ヒトの考えることですから、必ずしも合理的ばかりではいられませんが、こと経営や財務という「より合理性が求められる場面」においては、少々心配な調査結果でもあります。
ではなぜ、あまり合理的とはいえないのか。おもな理由は次のとおりです。
- 支払利息がそれほど増えるわけではないから
- 今後はさらに金利が高くなるだろうから
- 今後は融資審査が厳しくなるから
このあと、順番に解説をしていきます。
金利が0.5%上がったら借入返済するのが合理的でない理由
支払利息がそれほど増えるわけではないから
金利が0.5%上がったら、使いみちなく借りているおカネは返してしまう会社が6割。ではなぜ、それほど多くの会社がそのように考えるのか?
銀行に支払う利息がもったいない、と考えるからです。では、その「もったいない」とは、具体的にいくらをいうのか。ひとつの例として、借入1,000万円で考えてみましょう。
1,000万円の借入について、金利が0.5%上がったときに、年間で増える支払利息は…5万円です。ひと月あたりなら、4千円ちょっとです。
あえて繰り返しますが、1,000万円「も」借りているのに、増える利息は月4千円に「しか」なりません。月4千円であれば、それを負担してでも、手元に1,000万円あったほうが安心だ。
そうは、考えられないでしょうか。わたしが社長であればそう考えます。実際、わたし自身(社長ではなく、個人事業主ですが)、借りられるだけ借りているところです。安心だから。
昔よりも世界がつながった(身近になった)ことで、影響や被害が増幅されることは、新型コロナや、つい先日の「令和のブラックマンデー(急激な円高、急激な株安)」からもわかります。
この先も、なにが起きるかはわかりません。だからこそ、会社は使いみちのないおカネを、コストをかけてでも手元に置いておく必要性もあるのではないか。との考え方も、検討しましょう。
今後はさらに金利が高くなるだろうから
日銀がついに利上げに踏み切りました。このあと、急激に利上げが進む可能性は低いものの、長期的に見れば、利上げは進んでいくでしょう。結果として、借入金利も上がっていきます。
すでに、その兆候は出始めていますし、実体験として借入金利が上がっている会社もあるでしょう。
では、これからも借入金利が上がるのだとしたら、なぜいま、将来に比べて相対的に金利が低い既存の借入を返済してしまうのですか?というハナシです。
金輪際、未来永劫、2度と借入はいたしません!というのなら、それもいいでしょう。ですが、そのようなことを断言できる中小企業はほとんどありません。
いずれは借入することがあるかもしれない、というのが中小企業の実態です。いずれ借入するときには、いまよりも金利が上がるのだとしたら、いまの金利で借りっぱなしにしておけばいい。というほうが、合理的におもえます。
にもかかわらず、目先の支払利息を惜しんで、返済をしてしまう。いずれおカネが必要になって借入しようとしたら、金利が高かった…うーん、あのとき借りっぱなしにしておけばよかった。という、後悔はありえます。
今後、世の中の金利が上がれば、借入金利はどうなるのか?を、社長は理解しておきましょう。
今後は融資審査が厳しくなるから
でも、やっぱりいったん返済しておいて、またおカネが必要になったら借りればいいでしょう?と、考える社長もいます。これまた、合理的とはいえない考え方です。
なぜなら、借入金利が上がると、融資審査は厳しくなります。そうなれば、借りたくても借りられない…ということは起きるわけです。なので、「必要になったら借りればいい」との考え方は、合理的とはいえません。
ではなぜ、借入金利が上がると融資審査が厳しくなるのか。金利が上がると、会社は支払利息が増える。すると、返済できなくなる会社が増えるからです。
返済してもらえなくなるのは、銀行は困るので、融資審査を厳しくすることで予防します。
おカネが必要になったら借りるという場合、おカネがなくて困っていたり、その原因として、業績不振におちいっていたりもするでしょう。となれば銀行は、そのような会社にはただでさえ貸しづらいのに、金利の上昇もあいまってなお貸しづらくなります。
それでも、「おカネが必要になったら借りればいい」などといえるのか。
いちど借入をしたら、そうカンタンには返済したりしない。約束どおりに返済をする必要はありますが、約束よりも早く返済をする必要まではない。そのような考え方も、できるようになりましょう。
まとめ
東京商工リサーチによる調査結果、金利が0.5%上がったら借入返済する会社が6割。これをどう見るか。あまり合理的とはいえない考え方だよね、というお話をしてみました。
もちろん、借入返済もひとつの考え方であり、選択肢の1つではありますが。それが合理的ではないところも理解したうえでのことなのか、本記事の内容を確認しておきましょう。
- 支払利息がそれほど増えるわけではないから
- 今後はさらに金利が高くなるだろうから
- 今後は融資審査が厳しくなるから