銀行から融資を受けるなら、最終利益は黒字がよいというけれど。特別利益のおかげで最終利益が黒字だというのなら、問題点もありますよ。そんなお話をしてみます。
大いに問題があります
会社が銀行から融資を受けるにあたって、決算書が黒字であるのがよいことはご存知でしょう。ここでいう黒字とは、最終利益(当期純利益)が対象です。
この点、損益計算書の後半は、次のような構成になっています↓
経常利益+特別利益ー特別損失ー法人税等=当期純利益
ここからわかるのは、「特別利益のおかげで最終利益が黒字」という決算書がありうる、ということです。言い換えると、経常利益は赤字だけど、特別利益のおかげで最終利益は黒字になりました、というのもありうるわけです。
それでも、最終利益が黒字なのだから銀行に対してはいいよね。と、いえるのかどうか。結論としては、大いに問題があります。つまり、最終利益が黒字でも、融資が受けやすくなるとはいえない、ということです。
では、何が問題なのか。このあと、お話をしていきます。
特別利益のおかげで最終黒字の問題点
経常利益は赤字
損益計算書の後半について、再掲します↓
経常利益+特別利益ー特別損失ー法人税等=当期純利益
特別利益のおかげで最終利益が黒字とは、たとえば、経常利益が100万円の赤字、特別利益が150万円のケースです(特別損失、法人税等は便宜的にゼロとします)。
このとき、当期純利益(最終利益)は50万円の黒字となります。というわけで、たしかに、最終利益は黒字であるものの、銀行は「経常利益」も見ていることを忘れてはいけません。
最終利益も見ているけれど、経常利益も見ているし、もっといえば、営業利益や売上総利益なども見ています。経常利益や営業利益、売上総利益は、最終利益と「比べる」と、より事業の収益力をあらわしている利益です。
収益力としての純度が高い、ともいえます。特別利益とは文字どおり、特別な利益ですから、その特別利益を除いた経常利益などのほうが、よりふだんの収益力をあらわしているわけです。
そういう意味では、最終利益が黒字であっても経常利益が赤字では、その会社の収益力には問題があるといわざえるをえません。翌期以降は、特別利益もないのですから、最終利益も赤字になってしまうことでしょう。
だとすれば、最終利益の黒字が評価されるのは、経常利益や営業利益、売上総利益もまた黒字であってこそだといえます。
おカネが増えない利益もある
そうはいっても、特別利益だって利益じゃないか。といわれれば、そのとおりです。特別利益があろうがなかろうが、最終利益が赤字よりは黒字のほうがよいこともたしかです。
とはいえ、特別利益のなかには「おカネが増えない利益」もあります。最たるものは、債務免除益です。たとえば、社長個人からの借入金について、社長が債権を放棄するケースがあります。
すると、会社は債務がなくなりますので(返済しなくてよくなる)、利益が発生するわけで。その利益が、債務免除益です。
債務免除益もまた、臨時的・一時的な利益であるため、特別利益とされますが、はたして債務免除益は「おカネの入金」をともなう利益なのかどうなのか。
返済を免除されるだけであって、おカネの入金はありません。債務免除益が1,000万円であっても、1,000万円のおカネを受け取れるわけではありません。
そもそも、銀行が最終利益を評価しているのは、「手元に残るおカネ」を評価しているからです。つまり、「利益=おカネの入金(増加)」という前提があります。
ところが、債務免除益のように、おカネの入金をともなわない特別利益があるのなら、その分のおカネは増えていないので、そこは評価することができません。
たとえば、債務免除益1,000万円、最終利益300万円だとしたら。今期は、おカネが700万円減っていました…ということになります(300万円ー1,000万円)。
これもまた、特別利益のおかげで最終利益が黒字でも、問題となるポイントです。
おカネは増えても一時的
おカネが増えない特別利益がある、といいました。いやいや、おカネが増える特別利益もあるでしょう。といわれれば、それもそのとおりです。たとえば、不動産の売却益とか。
売却額の分だけ、利益とともにおカネも増えます。とはいえ、です。不動産の売却は、あくまで臨時的・一時的なものにすぎません(不動産業でもない限りは)。
だとすれば、売却益は今期限りであって、来期以降も期待できるおカネではないことがわかるでしょう。銀行は、利益も評価しますが、おカネも評価することは前述しました。
よって、いくら最終利益が黒字でも、それが特別利益のおかげである限り、おカネの面でも、銀行が最終利益の黒字を評価することはありません。
ただし、財務改善(使わない不動産を売却して、手元の預金を増やす)の手段として、不動産を売却したことは評価の対象になりますので、そこは会社もアピールするのがよいでしょう。
ですから、やはり、経常利益や営業利益、売上総利益の黒字が大事なのだ、ということになります。最終利益の黒字化を狙って、特別利益を検討するのでは本末転倒です。
ただ、それでも特別利益のおかげで最終利益が黒字を検討するのであれば、「債務超過を避けるため」という場面はありえます。債務超過になれば、銀行融資は極端に受けにくくなるため、債務超過を回避する、債務超過を解消するために特別利益を利用するのは1つの手段です。
まとめ
銀行から融資を受けるなら、最終利益は黒字がよいというけれど。特別利益のおかげで最終利益が黒字だというのなら、問題点もありますよ。そんなお話をしてみました。
特別利益の意味を理解したうえで、最終利益の黒字の良し悪しを判断できるようになりましょう。最終利益が黒字だからといって、必ずしも銀行から評価されるわけではありません。