経常運転資金分のおカネは、短期継続融資で借りましょう。という財務のアドバイスはあるけれど、銀行から「一括返済」を求められるのは不安…そのあたりについてのお話です。
一見すると、よい借りかた
会社の銀行融資について、短期継続融資という借りかたがあります。具体的には、短期の手形貸付や当座貸越によって、経常運転資金分のおカネを借りる、という借りかたです。
経常運転資金とは、「売掛金+棚卸資産ー買掛金」で計算される金額であり、その分のおカネがないと資金繰りが厳しくなるため、銀行借入でまかなうのが財務のセオリーとなります。
たとえば、経常運転資金が500万円だとして、返済期間5年の毎月分割返済だとしたらどうでしょう。500万円のおカネが常時必要だから借りたのに、毎月返済するごとに、借りたおカネは500万円からどんどん減っていきます。
すると、資金繰りが厳しくなってしまうわけです。だとすれば、経常運転資金分の借入は、毎月の返済がないほうがよいことになります。そこで、短期継続融資です。
短期の手形貸付であれば、返済期日に銀行の審査をへ、問題がなければ期日が更新されます。つまり、実質的には返済することなく、借りっぱなしにすることが可能です。
また、当座貸越であれば、銀行が定めた限度額の範囲内で、会社は自由に借りたり返したりができるため、やはり借りっぱなしにすることができます。
これにより、経常運転資金分のおカネを、常時、手元に置いておくことができる、というのが短期継続融資の効果であり、メリットです。
と、一見すると、よい借りかたにはおもえるものの、社長からはいまいち不人気だったりします。なぜなら、「銀行から一括返済を求められたら怖い」と考えるからです。
売上減少時に注意を要する
たしかに、短期継続融資については、銀行から一括返済を求められる可能性はあります。とはいえ、銀行もやみくもにそれらを求めるわけではありません。理由があってのことです。
その理由のうち、ありがちなことでいえば「売上の減少」でしょう。
売上が減ると、通常は「売掛金」や「棚卸資産」の金額も減ります。すると、経常運転資金の金額も減ることがわかるでしょう(買掛金も減りますが、売掛金や棚卸資産が減るほどではないはずです)。
たとえば、これまでは経常運転資金が500万円であったところ、売上減少によって300万円にまで減ったとしたら。短期継続融資が500万円のままでは、銀行としては「貸しすぎ」です。
そもそも、銀行が短期継続融資(=貸しっぱなし)に応じることができるのは、短期継続融資の対象が経常運転資金だからです。経常運転資金とは、「売掛金+棚卸資産ー買掛金」であり、だとしたら、いずれ売掛金や棚卸資産が現金化されることで、貸したおカネは回収できます。
つまり、経常運転資金の範囲内で融資をしている限り、銀行が回収しそびれることはない。だから、銀行は、短期継続融資にも応じることができるわけです。
ゆえに、短期継続融資の対象である経常運転資金の額が減ったとなれば、そのままにしておくことはできません。さきほどの例でいえば、経常運転資金が減った200万円分のおカネは返してもらわねばならないと、銀行は考えます。
と聞けば、社長は「やっぱり、短期継続融資は不安だ…」となるでしょう。
ふだんからの計画書が大事
ところが、です。銀行も、一括返済を求めることで、会社がつぶれてしまうようでは困ります。売上減少のピンチに加えて、一括返済では会社がつぶれかねません。
なので、実際には「なにがなんでも一括返済しろ」というようなハナシにはならないものです。さきほどの例でいえば、経常運転資金が減った200万円については、「返済期間〇年で分割返済をお願いします」といったハナシに落ち着くことが多くなります。
と聞けば、社長の不安も少しはやわらぐのではないでしょうか。
ただし、それでも返済はしなくてはならないのですから、その分、資金繰りは厳しくなります。社長としては、いままでどおりの短期継続融資を継続してほしい…というのが願いでしょう。
では、どうするか?
ひとつの方法が、計画書の提出です。今後の売上については、従来の水準に回復できる旨を説得できるだけの計画書をつくって、銀行に提示・説明します。これにより、銀行を納得させることができれば、いままでどおりの短期継続融資を継続してもらうことも可能です。
いっぽうで、ただただ「お願いします!」と懇願するのでは、銀行も応じることはできません。銀行が納得できるだけの材料として、計画書を提出しましょう。
とはいえ、銀行に信用してもらえる計画書をつくるのも、カンタンではありません。日ごろから、計画書をつくっていないような会社はとくに、です。結果として、「はじめて」銀行に計画書を提出するようなケースでは、銀行は警戒します。
どうせ絵に描いた餅だろう、という見方が銀行にはあるからです。
ところが、ふだんから計画書を銀行に提出していて、かつ、その計画をおおむねクリアできている実績があれば、銀行からは「計画書に対する信用」をえられます。そうなると、いざ、短期継続融資の継続を相談するときにも、計画書がチカラを発揮するものです。
いざというときの備えとしても、ふだんの計画書づくり、計画の進捗管理が大事であることを理解しておきましょう。
まとめ
経常運転資金分のおカネは、短期継続融資で借りましょう。という財務のアドバイスはあるけれど、銀行から「一括返済」を求められるのは不安…そのあたりについてのお話でした。
だしかに、その不安が現実になることはあるものの、対処の方法はあります。本記事でお話をした内容を理解したうえで、過度な不安を持たないように気をつけましょう。
不安のあまり、短期継続融資を毛嫌いして、資金繰りを悪くしているのでは本末転倒です。