銀行融資は、「複数行から借りましょう」というアドバイスについて。ウチは複数行から借りられているからだいじょうぶ、とおもわれるかもしれませんが。勘違いしているかも…というお話です。
だいじょうぶ、とおもわれるかもですが
会社の銀行融資について、「複数行から借りましょう」というアドバイスがあります。つまり、1つの銀行からだけではなく、いくつかの銀行から融資を受けましょう、ということです。
その理由は、おもに2つあります。まずは、1つの銀行からだけしか借りていないと、その銀行となにかあったときに困ってしまうから。そして、1つの銀行からだけしか借りていないと、その銀行から足元を見られるために、融資条件が悪くなりがちだからです。
これを聞いて、「いやいや、ウチは複数行から借りられているからだいじょうぶ」とおもわれるかもしれません。が、それも勘違いというケースがあるので気をつけましょう。というのが、このあとのお話です。
具体的には、次のようなケースが挙げられます↓
- 保証付き融資のみ
- 日本公庫と民間1行
- 大きすぎる銀行
これらのケースについて、順番に解説をしていきます。
「ウチは複数行から借りられている」が勘違いのケース
保証付き融資のみ
民間金融機関からの融資には、信用保証協会の保証付き融資と、プロパー融資とがあります。
このうち、保証付き融資とは、信用保証協会の保証が付いた融資であり、会社が返済できない場合には、信用保証協会が肩代わりして銀行に返済をする融資です。
いっぽうで、プロパー融資には信用保証協会の保証はなく、会社が返済できない場合には、銀行が100%損をこうむることになります。よって、銀行はリスクが小さい保証付き融資を好むものです。
では、民間金融機関であるA銀行とB銀行から融資を受けていたとして、そのどちらも保証付き融資だけであるとしたらどうでしょう。この場合、本当の意味で複数行から借りられているとはいえません。
なぜなら、A銀行もB銀行も、保証付き融資によってリスクを回避しているために、いざというときには「積極的な支援」を期待しづらいからです。これに対して、A銀行やB銀行からプロパー融資を受けられている場合はどうでしょう?
もし、自社が返済できなくなれば、100%損をこうむるのがプロパー融資なのですから、自社がつぶれないようにと、銀行も積極的に支援せざるをえなくなります。会社にしてみれば、いざというときには助けてもらえる可能性が高まる、ということです。
ゆえに、複数行から借りられているとは、保証付き融資ばかりではなく、プロパー融資でも借りられている状態であることを理解しておきましょう。
日本公庫と民間1行
日本政策金融公庫(以下、日本公庫)は、公的金融機関です。その日本公庫と、民間金融機関1行から融資を受けている場合もまた、本当の意味で複数行から借りられているとはいえません。
日本公庫の役割は、「民間金融機関の補完」であり、民間金融機関と競合関係にはないからです。よって、民間金融機関であるC銀行が、融資金利を引き下げたとしても、それを見て日本公庫が金利を引き下げるといった「競争」は起きません。その逆もしかりです。
つまり、複数行取引のメリットである「銀行どうしの競争による融資条件の改善」が、望めないケースとなります。したがって、民間金融機関のうち2行以上から融資を受けられるようにしましょう。
そのうえで、日本公庫からも融資を受けておくことは大切です。前述したとおり、日本公庫の役割は、民間金融機関の補完なのですから、民間金融機関から融資が受けられないときには、日本公庫が頼りになります。
なお、日本公庫からじゅうぶんに借りられるようにするには、民間金融機関からも融資を受けておくことも大切です。ところが、民間金融機関から融資を受けていなかったり、融資額が少なかったり、あるいは、プロパー融資を受けていなかったりすると、日本公庫からは融資が受けづらくなります。
日本公庫ばかりが融資をするカタチとなり、そうなると、民間金融機関の補完ではなく「民業圧迫」になってしまうからです。なので、日本公庫と民間金融機関、両方からバランスよく借りましょう。
大きすぎる銀行
たとえば、年間売上高1億円の会社が、都市銀行であるD銀行と、信用金庫であるE金庫から融資を受けているとします。この場合もまた、本当の意味で複数行から借りられているとはいえません。
なぜなら、D銀行は自社にとって「大きすぎる銀行」だからです。そもそも、都市銀行は大企業向けの銀行であり、年間売上高1億円という規模の会社に、積極的な支援はしないものです。
結果として、都市銀行からの融資は、保証付き融資ばかりとなります。これがよくないことは、1つめのケースでお話をしたとおりです。
したがって、民間金融機関から融資を受けるときには、自社に合った銀行を選ぶことが大切になります。1つの目安として、年間売上高1億円までは信用金庫、1億円を超えたら地方銀行とも取引をはじめるのがよいでしょう。
ちなみに、都市銀行から積極的な支援を受けられるようになるのは、年間売上高が数十億円を超えてからです。
以上をふまえると、多くの中小企業は、信用金庫あるいは地方銀行に加えて、日本公庫から融資を受けるのがよいとわかるでしょう。ときおり、都市銀行ばかりから、保証付き融資だけを受けている会社がありますが、資金調達の観点からいえば危険な状況だといえます。
まとめ
銀行融資は、「複数行から借りましょう」というアドバイスについて。ウチは複数行から借りられているからだいじょうぶ、とおもわれるかもしれませんが。
実は、勘違いしているかも…というケースについて話をしました。ときおり見かけるケースなので、自社があてはまっていなか、確認をしておきましょう。
- 保証付き融資のみ
- 日本公庫と民間1行
- 大きすぎる銀行