金利上昇の過程にあるいま、営業利益はいくら必要か?従来の目安である、営業利益率などとは別に、必要な営業利益の目安があり、注目されていることを理解しておきましょう。
営業利益はいくら必要か?
きょうは、2024年10月10日。日銀の追加利上げが待たれるいま、今後は、金利の上昇が予想される状況にあります。だとすれば、会社にとっては、融資金利の上昇が気になるところです。
日銀が利上げをすれば、融資金利も上がります。融資金利が上がれば、会社の返済負担は増えるのであり、社長にとっては悩ましい事態だといえるでしょう。
そんな金利上昇とあわせて、社長が考えておきたいことが「営業利益はいくら必要か?」です。
と聞いて、「なにをいまさら…」と、おもわれるかもしれません。営業利益については、「営業利益率(営業利益÷売上高)は〇%以上が望ましい」などといった目安があるじゃないか。そう、おもわれるかもしれません。
たしかに、それも目安のひとつではありますが、金利上昇のいま、もうひとつ忘れてはいけない目安があるのです。忘れてはいけないというか、注目されるようになる目安があるのです。
営業利益>支払利息という目安
そもそも営業利益とは、「売上高ー売上原価ー販売管理費」で計算される利益です。会社の本業における利益であり、本業の収益力をあらわすのが営業利益だとされています。
これだけを聞いても、営業利益が重要な数字であることがわかるでしょう。そして、営業利益は多ければ多いほどいい、ということもわかります。
とはいえ、利益を増やすのもカンタンではないからこそ、「必要な営業利益は?」という目安のハナシにもなるわけです。
この点、営業利益率(営業利益÷売上高)でいえば、一般的には「5%以上は優良」などといわれています。これは、「率」の話ですね。いっぽうで、「額」で見た場合にはどうでしょう?
それが、「営業利益>支払利息」です。ここでいう支払利息とは、損益計算書の営業外費用として記載されている「支払利息」の金額であり、銀行への利息支払額です。
その支払利息よりも、営業利益のほうが大きい。これが、営業利益の「額」として求められる目安になります。そしていま、この目安が注目を集めていることを覚えておきましょう。
額の目安が注目されるワケ
ではなぜ、「営業利益>支払利息」という、「額」の目安が注目されるのか?
勘のよいあなたはお気づきのこととおもいますが、融資金利が上昇傾向にあるからです。冒頭、金利上昇にともなう、融資金利の上昇についてはお話をしました。
融資金利が上昇すれば、会社が支払う利息の額は増えるのであり、その支払利息は営業利益でまかなう必要があります。
損益計算書のつくりを見ると、「営業利益ー支払利息=経常利益」です。なので、「営業利益<支払利息」となってしまえば、経常利益はマイナス(赤字)なのであり、支払利息は営業利益に対して過大をあらわします。
言い換えると、会社は利益から見て借りすぎであり、銀行にしてみれば「貸しすぎ」です。だとしたら、要注意の融資先であり、「早く回収しなければ(これ以上は貸せない)」となるでしょう。
金利上昇によって、支払い利息の額も増えているいまだからこそ、銀行は「営業利益>支払利息」の目安に注目をしています。ゆえに、社長もまた、注目をするようにしましょう。
まずは支払利息のシミュレーションを
「営業利益>支払利息」に注目するといっても、過去の決算書を持ってきて、チェックしているだけではいけません。繰り返しですが、今後は、支払利息が増えるからです。
なので、社長は「今後の支払利息」をシミュレーションしておく必要があります。といっても、難しいことではありません。
まずは、自社の「借入水準(常時、どれくらいの額を借りているか)」を確認します。たとえば、おおむね5,000万円ということであれば、その金額に利率を乗じればよいだけです。
この場合の利率は、自社の平均借入金利であり、過去の実績については、過去の決算書を見れば簡易的に計算できます(支払利息÷借入金)。
その平均借入金利に対して、金利上昇分を上乗せすれば、今後の支配利息をシミュレーションすることが可能です。
たとえば、過去の借入金利が2%だったとします。借入水準が5,000万円であれば、支払利息は「100万円(5,000万円×2%)」です。
そのうえで、今後0.5%上がったら?1%上がったら?といった金利で計算をしてみます。0.5%であれば、5,000万円×2.5%で125万円となり、1%であれば、5,000万円×3%で150万円です。
支払利息の増加額は、それぞれ25万円、50万円であり、今後はそれくらいの営業利益を増やす必要あることがわかります。
ここからが社長の腕の見せどころ
支払利息のシミュレーションができたら、ここからが、社長の腕の見せどころです。金利上昇によって増えるであろう支払利息分の営業利益を、どのように増やすのかを考えます。
まさに、社長の仕事です。これが「後手」にまわると、社長は「資金繰り」に追われることになります。金利上昇時に「営業利益<支払利息」となることで、銀行融資も受けづらくなり、資金繰りに四苦八苦することになるのです。
そのような「後追い」の資金繰りは、社長の仕事とはいえません。社長が、資金繰りに追われると、社長の仕事(経営)がおろそかになってしまいます。結果として、ますます資金繰りが悪くなる(経営改善が遅れる)のが問題です。
社長にとっての資金繰りは、後追いではなく、前さばき。あらかじめ算段しておくことで、おカネの心配をしなくてすむようにしましょう。そのための具体的な手段のひとつが、前述した、支払利息のシミュレーションです。
まとめ
金利上昇の過程にあるいま、営業利益はいくら必要か?従来の目安である、営業利益率などとは別に、必要な営業利益の目安があり、注目されていることを理解しておきましょう。
それが、「営業利益>支払利息」であり、営業利益は最低でも「銀行に支払う利息以上が必要」だということです。でなければ、銀行融資も受けづらくなってしまいます。