預金を持つほど借りるな、という考え方があります。もっともらしい考え方ではあるものの、真に受けているようだと、会社が窮地に陥ることもあるので気をつけましょう。という、お話です。
もっともらしい考え方ではあるものの
会社の銀行融資について、「必要以上の預金を持つほど借りるな」という考え方があります。もっともらしい考え方ではあるものの、あまり現実的とはいえない面もあるでしょう。
そもそも、「必要以上の預金」とはいくらをいうのか?
それがわからないものだから、「おカネがあるなら返済をしたほうがいい(繰り上げ返済)」とか、「できるだけ借りないほうがいい」といったハナシにもなるものです。
すると、その先にあるのは「厳しい資金繰り」というケースが少なくありません。そこで、おすすめをしたいのは「必要以上の預金」などもともとないのだ、という考え方です。
しかし、さすがにそれも不親切なので、しいて目安を示すのであれば「年間売上高の半分」です。したがって、預金残高が年間売上高の半分になるまでは借りられるだけ借りればいい。
いやいや、それはさすがに乱暴すぎるでしょう?という声も聞こえてきそうなので、このあと解説をしていきます。
売上ゼロなら仕入も減るだろう?
必要以上の預金の目安は、年間売上高の半分だといいました。つまり、年間売上高の半分までの預金については必要だし、あったほうがよいということです。
これは、会社が有事の際にも生き延びるため、という目的にもとづいています。
たしかに、平時においてはそこまでの預金は必要ありません。が、有事の際には違います。わかりやすい例を挙げるのなら「新型コロナ」です。
これまでの生活様式が一変したことで、半年近くにわたり(場合によってはそれ以上にわたり)、売上が激減した会社もあります。激減を「売上ほぼゼロ」ととらえるのであればどうでしょう?
半年ものあいだ売上がゼロ。それでも生き延びるためには、売上半年分、つまり、年間売上高の半分の預金が必要になります。
いやいや、売上がゼロなら「仕入」や「経費」も減るだろう?と、おもわれるかもしれません。そうですね、そのまま何もせずにいるのならそのとおりです。
が、そのまま何もせずにいた会社がどうなったのか?コロナ後も苦戦をしいられています。生活様式の変化によって、従来の商売が通用しなくなったからです。
逆に、コロナをへて業績を上げたような会社は、従来の商売を変化させた(飲食店がテイクアウトやネット通販をはじめるとか)といった話は、見聞きしたことがあるのではないでしょうか。
先立つものはおカネです
では、従来の商売を変化させるためには何が必要か。先立つものはおカネです。あらたに設備や機材が必要になったり、あらたに技術が必要であれば外部委託費用もかかるでしょう。
というように、半年ものあいだ売上がゼロになるようなケースでは、「別途」おカネが必要になるのです。
おカネがないからといって、黙ってそのまま何もせずにいれば、会社はますます窮地に陥るばかりでしょう。ところが、そういった会社はけして少なくないのが現実です。
だから、「必要以上の預金を持つほど借りるな」という考え方は、あまり現実的とはいえず、むしろ、有事を迎えるその前に、借りられるだけ借りておくことをおすすめしています。
少なくとも、年間売上高の半分くらいの預金になるまでは。
という話をすると、「それはさすがに借りすぎだろう?」との反論はあるものです。そんなに借りたら、会社がつぶれてしまう!というハナシです。
ところが、現実には「借りすぎ」はありません。なぜなら、会社が「借りすぎ」るほど、銀行が「貸しすぎる」ことはないからです。
倒産の原因が借入はありえない
いやいや、倒産をする会社が「負債〇〇億円」などというニュースだってあるじゃないか。と、おもわれるかもしれません。ですが、それをもって「借りすぎが倒産の原因」とはいえません。
だって、そうでしょう。仮に、銀行から1億円を借入したとして、借入した瞬間には、1億円の預金も増えるのですから、いつだって返済できる状態です。この状態で倒産はしませんよね?
結論、倒産した会社に借入があっただけであり、倒産の原因は借入とは別のところにある(≒事業の失敗)。そういう話です。
そもそも、会社の規模や状況などから見て、貸しすぎになるまで銀行は貸しません。「貸しても返してもらえるであろう金額」を審査したうえで、融資をしています。
よって、理屈としても、銀行が貸しすぎることはないのです。それでも借りすぎるのであれば、借りたときには借りすぎではなくても、借りたあとに会社が問題を起こして、結果的に借りすぎになってしまうケースに限られます。
だとすれば、銀行から借りられる限り、その借りる時点において「借りすぎ」はないわけで、借りられるだけ借りることに問題はない、ということにもなるわけです。
以上をふまえて、「必要以上の預金を持つほど借りるな」という考え方には、気をつけましょう。
まとめ
預金を持つほど借りるな、という考え方があります。もっともらしい考え方ではあるものの、真に受けているようだと、会社が窮地に陥ることもあるので気をつけましょう。という、お話でした。
いずれくるかもしれない有事のことも考えて、借りてでも預金を増やすことも考えてみましょう。