あとになってから、「やっぱり貸してほしい」と考える社長がいます。が、銀行融資では通用しないケースがあります。そのタイミングを逃したらおしまい、ということがあるのです。
そんなことがあるのか?
会社の銀行融資について、大事なことの1つがタイミングです。漏れなくじゅうぶんに融資を受けるためには、融資を受けるタイミングを逃してはいけません。
そのタイミングを逃しておきながら、あとになってから「やっぱり貸して」といっても借りることはできないのです。あのタイミングだったら借りることができたのに、いまはムリ。
これを聞いて、「そんなことがあるのか?」とおもわれる社長がいます。あのタイミングで借りることができたのなら、いまだって借りることはできるだろう。その考えは間違いです。
銀行融資には、あとになってから「やっぱり貸して」が通用しないケースがあります。おもなところでは次のとおりです↓
- 設備投資
- 増加運転資金
- 銀行からの営業
このあと、順番に解説をしていきます。
あとになってから「やっぱり貸して」がダメなケース
設備投資
会社が設備投資をするときには、おカネがかかります。そのときに、銀行から「設備投資をするためのおカネ(=設備資金)」を借りることが可能です。
ただし、借りることができるタイミングは「設備投資をするとき」であって、そのときに自己資金で設備投資をしておきながら、あとになってから「やっぱり貸して」は通用しません。
設備投資における融資は、「銀行から借りる→借りたおカネで設備投資する(支払いをする)」というおカネの流れが重要なのです。これが逆になることはありません。
いうまでもなく、借りたおカネが別のことに使われてしまうかもしれないからです。
したがって、設備投資をするためのおカネを借りるのであれば、設備投資をする(支払いをする)前に借りるようにしましょう。ちなみに、自己資金での設備投資はおすすめしません。
繰り返しですが、あとになってから「やっぱり貸して」は通用しないからです。設備投資をするときに借入をしておけば、その分だけ自己資金を温存することができます。
事業は山あり谷あり。いつなにが起きるかはわからないのですから(設備投資が失敗するかもしれないし)、できるだけ預金残高を高い水準に保つこと(自己資金を温存すること)が大切です。
増加運転資金
そもそも経常運転資金とは、「売掛金+棚卸資産−買掛金」で計算される金額であり、会社が資金繰りを回すために必要なおカネです。売上が増えると、その経常運転資金も増えます。
つまり、売上が増えると、よりおカネが必要になるわけです。より必要になるおカネが「増加運転資金」であり、銀行から借りるのが財務のセオリーとなります。放っておけば、資金繰りが厳しくなるので注意が必要です。
よって、売上が増えるとわかった時点で借りるようにしましょう。にもかかわらず、そのときには借りずに、あとになっておカネが不足してから「やっぱり貸して」という社長がいます。
同じ増加運転資金の融資であっても、おカネがあるうちと、おカネが不足してからとでは、銀行の姿勢も変わるものです。おカネが不足しているのでは、不安なので貸しづらくなるでしょう。
となれば、タイミングを逃しているともいえます。増加運転資金の借入は、いかに早く借りられるか、いかにおカネがあるうちに借りられるかがポイントです。
そのためには、売上が増えるとわかった時点で、銀行に融資の相談をすることであり、売上が増えることがわかる資料(受注書や請求書など)も、銀行に提示できるとよいでしょう。
売上が増えればおカネも増えると、タカをくくっているとあとになって資金繰りに窮します。
銀行からの営業
業績がよい会社などではとくに、銀行のほうから融資提案をされることがあります。いわゆる営業であり、セールスです。これを断る社長がいます。それも1つの判断であり、選択です。
ところが、あとになってから「やっぱり貸して」といっても借りられるものではありません。つまり、社長としては「あのとき、貸してくれるって言ったじゃん」ということなのですが、銀行はそうは考えてはいない、ということになります。
銀行としては、「あのときはあのとき」にすぎません。しかも、「やっぱり貸して」などというときには、会社の業績も悪くなっていたり、資金繰りも悪くなっていたり…カンタンに貸せるものではないでしょう。
ゆえに、会社はうまく借入ができずに苦労することになります。だったら、営業されたときに借りておけばよかったのにね、というハナシです。
しかし、前述したとおり、銀行から営業されるような会社は、その時点では業績がよく、預金も多かったりするので、社長は「借りる必要はない」と判断しがちな状況にあります。
とはいえ、借りる必要がないのは「いま現在」に限ったことであり、「これから将来」についてはわかりません。わからないなら、借りておいたほうがいいのでは?というのが私見です。
まとめ
あとになってから、「やっぱり貸してほしい」と考える社長がいます。が、銀行融資では通用しないケースがあります。そのタイミングを逃したらおしまい、ということがあるのです。
いずれのケースも、「いまは借りなくてもだいじょうぶ」と考えがちなので気をつけましょう。