売上計上の現金主義は銀行融資で問題になる

売上計上の現金主義は銀行融資で問題になる

売上計上が現金主義である会社は、けして少なくありません。ところが、売上計上の現金主義は、銀行融資で問題になることの1つであるため気をつけましょう。その理由をお伝えします。

目次

顧問税理士がいる会社でも

会社が銀行融資を受けるにあたって、問題になることはいろいろあります。そのなかの1つに挙げられるのが「売上計上の現金主義」です。が、会社の側では意外とルーズになっています。

ちなみに、売上計上の現金主義とは、売上を「入金時」に計上することです。いっぽうで、正しい計上が「発生主義」であり、売上の「発生時(納品時や出荷時など)」に計上します。

こうしてみると、現金主義は発生主義に比べて、売上の計上が遅すぎるという問題があるわけですが、それとは別に、銀行融資を受けるうえでも問題がある。つまり、融資が受けにくくなることに注意が必要です。

ではなぜ、売上計上の現金主義が銀行融資で問題になるのか?おもには次のとおりです↓

売上計上の現金主義が銀行融資で問題になる理由
  • 正しい損益把握ができない
  • 経常運転資金がつかめない
  • 粉飾決算が疑われる

このあと順番に解説していきます。売上計上の現金主義は、けして少なくはない会社で見られる状況でもあるので(顧問税理士がいる会社でも)、あらためて確認をしておきましょう。

売上計上の現金主義が銀行融資で問題になる理由

正しい損益把握ができない

売上計上の現金主義が銀行融資で問題になる理由として、まずは、正しい損益把握ができないことが挙げられます。損益把握とは、言い換えると利益の把握です。

たとえば、発生主義であれば11月に売上計上になるところ、現金主義であるために売上計上が12月になったらどうでしょう。当然、11月の利益と12月の利益は、実態とは異なるものになります。

つまり、11月の試算表と12月の試算表がおかしくなるということです。また、これが決算月にからむものであれば、決算書の利益もおかしくなってしまいます。

もっとも、期中は現金主義でも、決算時だけは発生主義にあらためる会社がほとんどでしょう。さすがに決算書が間違っているのはマズいからです(現金主義は、税務署的にNG)。

なら、決算時だけ発生主義ならいいのかといえば…銀行的にはNGです。だって、試算表では正しい損益把握ができないじゃん、そんな試算表では経営判断ができないじゃん、となるからです。

いやいや、試算表など見なくても、数字はアタマのなかに入っているからだいじょうぶ。などというハナシは通用しませんし、逆効果でしょう。勘・経験・度胸に頼る社長(客観性に欠ける社長)、とレッテルを貼られるのがオチです。

銀行に対してはいつでも、正しい損益把握の結果(試算表)を見せられるようにしましょう。

経常運転資金がつかめない

売上計上の現金主義が銀行融資で問題になる理由として、経常運転資金がつかめないことも挙げられます。経常運転資金とは、「売掛金+棚卸資産ー買掛金」で計算される金額です。

経常運転資金は、会社が事業を続けるうえで立て替えが必要な金額であり、その分の銀行融資を受けるのが財務のセオリーだといえます。ところが、売上計上が現金主義ならどうでしょう?

現金主義の場合には入金時に売上計上するため、経理上「売掛金」という勘定科目を使うことがありません(仕訳でいうと、預金/売上高)。実際には、売上代金の請求から入金までのあいだ、売掛金が生じているのにもかかわらずです。

いっぽう、発生主義の場合には、売上代金の請求時(あるいは出荷時や納品時など)に売上計上するため、経理上「売掛金」が生じることになります(仕訳でいうと、売掛金/売上高)。

両者を比べれば、経常運転資金の額に差が出ることがわかるでしょう。現金主義のほうは、売掛金がない分だけ、経常運転資金の額が実態よりも少なくなってしまいます。

すると、必要なはずのおカネ(経常運転資金)について、じゅうぶんな融資を受けられなくなるのが問題です。銀行としては、経常運転資金の額をつかめなければ、融資はできません。

現金主義が、銀行融資を受けにくくすることを理解しておきましょう。

粉飾決算が疑われる

ここで、実例をひとつ。社長個人から会社におカネを貸し付けた際(会社から見ると入金)、その入金を「売上」としていた会社があります。いうまでもなく、粉飾決算です。

このときの仕訳は、「預金/売上高(正しくは、預金/借入金とすべき)」であり、これまで見てきた売上計上の現金主義とは同じ見た目となります。銀行からすれば、粉飾決算の会社に融資などできませんから、その点からも現金主義には警戒をしているのです。

さらには、おカネの動きさえともなわない、まったくの架空売上もありえます。仕訳でいうと「現金/売上高」です。預金にはまだ証拠がありますが(通帳の履歴)、現金には証拠がありません。

証拠がないだけに、いくらでも架空売上を計上できてしまいます。だから銀行は、現金残高にも注目をしていることは覚えておいたほうがよいでしょう。

つまり、粉飾決算などしていなくても、試算表や決算書の現金の金額が大きいと、粉飾決算を疑われるということです。

それはさておき、売上計上の現金主義は、銀行から粉飾決算を疑われることもあり、ひいては融資が受けにくくなるのが問題となります。

まとめ

売上計上が現金主義である会社は、けして少なくありません。ところが、売上計上の現金主義は、銀行融資で問題になることの1つであるため気をつけましょう。その理由をお伝えしました。

売上計上の現金主義は、顧問税理士がいる会社(顧問税理士が経理処理を確認している会社)でも散見されるものであり、税理士任せにせず、会社の側でも注意が必要です。

売上計上の現金主義が銀行融資で問題になる理由
  • 正しい損益把握ができない
  • 経常運転資金がつかめない
  • 粉飾決算が疑われる
売上計上の現金主義は銀行融資で問題になる

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

目次