「借りれるときに借りれるだけ借りたほうがいい」とはいうけれど。借りたら利息を払わなければいけない。もし、1,000万円余計に借りたら、会社はどれだけ苦しくなるのか?そんなお話です。
わずか、とはいかほどか
会社の銀行融資について。わたしはふだん、「借りれるときに借りれるだけ借りたほうがいい」とお伝えをしています。なぜなら、借りたいときほど借りられないからです。
もし、あなたが、おカネがなくて困っている人におカネを貸したら、返してもらえるかが心配になることはわかるでしょう。銀行だって同じです。おカネがなくて困っている会社に貸したいとは考えません。
なるほど、「借りれるときに借りれるだけ借りたほうがいい」のはわかった。とはいえ、借りれば利息を支払わなければいけないじゃないか。と、おもわれるかもしれません。
そのとおりです。が、それも「わずかな利息ですよね」ということもまた、わたしはよくお話をしています。
とはいえ…と、おもわれるかもしれません。わずか、とはいかほどか?本当にわずかなどといえるのか?利息の負担によって、苦しむことになるのではないか?そう、おもわれるかもしれません。
そのあたり、このあと確認をしていきましょう。1,000万円余計に借りたら、会社はどれだけ苦しくなるか?と、そんなお話です。
1,000万円余計に借りたら会社はどれだけ苦しくなるか?
前提として、年商(年間売上高)が1億円の会社を想定します。この会社が、「借りれるときに借りれるだけ借りる」ために(いうなれば余計に)、1,000万円を借りるとしたらどうなるか?
ちなみに、年商1億円規模の会社にとって、1,000万円のおカネ(預金)があるか・ないかは、大きな違いになるはずです。つまり、1,000万円を余計に借りれば、資金繰りはラクになります。
では、1,000万円を銀行から借りるにあたって、金利は2.5%だとしましょう。信用金庫から信用保証協会付きの融資を受けた場合に、信用保証協会への保証料も含めてそのくらいです。
このとき、会社が当初に支払う利息はざっくり、1,000万円×2.5%で年間25万円となります。実際には、毎月の返済によって借入残高が減るので、年間に支払う利息額は25万円よりも徐々に少なくなりますが、多めに見て年間25万円です。
これを見て、「多いなぁ」と、おもわれるかもしれませんが、実質的な負担はそれほど大きくはありません。なぜなら、支払利息は費用であるため、節税効果があるからです。
法人税率がざっくり30%だとすれば、節税効果は「25万円×30%」で7.5万円。つまり、利息を25万円支払いはしますが、法人税は7.5万円も減ることになります。
だとすれば、会社が1,000万円を借りたことによって、実質的に負担する利息は「25万円−7.5万円」で、17.5万円であることがわかるでしょう。ひと月あたり、1.5万円弱です。
さぁ、どうでしょうか。手元に1,000万円ものおカネに余裕ができる、そのためのコストは月に1.5万円。社長であるあなたは、どうするか。利息を払ってでも、1,000万円をとるか。それとも、1.5万円の利息を惜しんで、厳しい資金繰りを選ぶのか。
ここでは前者、1,000万円のおカネを取りませんか?とおすすめをしたいところです。
黒字でなければ節税できない問題
節税のくだりで、おもわれたかもしれません。黒字でなければ節税できないのではないか?利息に節税効果があるのは、黒字が前提のときに限られる。そうおもわれたかもしれません。
そのとおりです。赤字であれば、そもそも法人税はゼロですから、節税もなにもありません。
なので、黒字を前提にしています。そもそも、「借りれるときに借りれるだけ借りたほうがいい」といいました。ここでいう「借りれるとき」がまさに、黒字のときです。
赤字になったり、おカネが不足してからでは、そもそも借りることが困難であり、黒字のときこそが、銀行借入のベストタイミングであることは理解しておきましょう。
そのうえで、借りれるときに借りることには「副次効果」もあります。それは、「社長が経営に集中できる」ことです。1,000万円のおカネを余計に借りることで、会社の資金繰りはラクになります。すると、社長は資金繰りの心配をしなくてすむでしょう。
いっぽうで、社長が資金繰りの心配ばかりしていると、経営はおざなりになります。社長が本来すべきは資金繰りではなく、経営のはずです。その経営がおざなりになるから赤字になるのです。
では、資金繰りの心配をせずに、経営に集中できる社長の会社はどうなるか?黒字を出しやすくなります。少なくとも、資金繰りの心配をしているときよりも、黒字を出しやすくなるはずです。
そうでなければ、その社長はそもそも社長に向いていないのではないか?となってしまいます。というわけで、「黒字でなければ利息は節税にならないのではないか」との疑問は的外れです。
1,000万円を余計に借りて、利息を払うからこそ、会社は黒字でいられるのです。
金利が上がったらどうしてくれる
それにしても、「借りれるときに借りれるだけ借りたほうがいい」という話は、あまり人気がないようです。「金利が上がったらどうしてくれるんだ?」との反論もあります。
たしかに、いまは世の中の金利が上昇傾向であり、今後は借入金利も上がっていくことでしょう。そのときには、会社の金利負担も増えるので、心配をされる気持ちはわかります。
では、具体例で確認です。1,000万円を余計に借りていることで、金利上昇にともなう負担はどれくらいなのか。従来の金利(前例では2.5%)が、1%上がる場面で考えてみましょう。
結論、1,000万円×1%で10万円です。ひと月あたり1万円弱。節税効果を加味すれば、7千円弱です。これもまた、借入当初の負担額であり、毎月の返済が進むにつれてさらに減っていきます。
というように、金利(利率)でみると1%は大きいように見えても、金額にしてみれば、それほどでもないと感じられるのではないでしょうか。実際、年商1億円の会社にとって、月に7千円の費用はそれほどのものでもないはずです。
しかも…というハナシもあります。世の中の金利が上がるのは、基本的に、経済の調子がよいからです。だとすれば、金利が上がる過程で、会社の業績も上がるのが自然だといえます。
すると、会社の利益は増えるのですから、月7千円の金利負担の増加は、増えた利益で十分に補えるはずなのでは?という点も見逃せません。
ちなみに、「世の中の金利が上がっても、会社の利益は増えないだろう」などとおもわれているような社長の会社では、価格転嫁の努力(値上げの努力)を怠っていたりするので注意が必要です。
以上をふまえて、たとえ金利が上がっても、「借りれるときに借りれるだけ借りたほうがいい」とおすすめをすることに変わるところはない、ということになります。
まとめ
「借りれるときに借りれるだけ借りたほうがいい」とはいうけれど。借りたら利息を払わなければいけない。もし、1,000万円余計に借りたら、会社はどれだけ苦しくなるのか?との疑問について、お話をしてみました。
結論、余計に借りても苦しくなんてならないはず。このお話が、資金繰り改善のヒントになるようであれば幸いです。