初詣のお賽銭って、経費になるの? 祈祷料は? お札や破魔矢、熊手なんかはどうなの?
というわけで。神社・お寺での出費に関して経費になるのかどうか、経費にするときの勘定科目についてまとめます。
【原則】会社なら一部経費、個人事業なら経費対象外
商売繁盛・安全祈願など、仕事・事業に関することとして神社・お寺でご祈祷を受ける。
この場合の祈祷料や、お賽銭、お札、破魔矢、熊手など。神社やお寺での出費は「経費」になるのかどうか?
原則的には、次のような扱いになります↓
- 会社(法人)… 寄付金(一部経費)
- 個人事業者 … 経費対象外
神様・仏様への感謝・お礼として、「見返りを求めず」に奉納するお賽銭などは「寄付」であるとの考えです。
「寄付」、これを平たく言うと、「あげる」ということです。この「寄付」については、会社(法人)か個人事業者かで、少々取扱いが異なります。
上記に示したとおり、会社ならば「寄付金」として、その一部が経費になります。「一部」というのは、会社が支出する寄付金は、税法で上限が定められていることを意味しています。
会社の資本金や所得(利益)の金額によって、寄付金のうち経費にできる金額に上限があるのです(下記の【参考】を参照)。したがって、この上限以下であれば、全額が経費にできるということもありえます。
会社が税金の計算上、経費にできる寄付金の金額は、「(資本金等の額 × 0.25% + 所得金額 × 2.5%)÷4」で計算されます。詳しくはこちら↓
国税庁・タックスアンサー「寄付金を支出したとき」
ちなみに。会計上は、支払った寄付金の全額を費用にします(仕訳で言うと、「寄付金 ××× / 現金 ×××」)。そのうえで、法人税の申告書のなかで、前述の上限額を超える寄付金を経費から外すという処理をします。
いっぽうで、個人事業者ならば「寄付金」は、全額が「経費対象外」になります(勘定科目で言うと「事業主貸」)。
以上が、神社・お寺での支出に関する原則的な取扱いです。
その原則とは別に、「寄付金」ではなく、全額が「経費」だとする例外的な考え方もあります。というわけで、このあと「例外」についてお話をしていきます。
本記事で対象にしているのは、あくまで仕事・事業に関する支出です。したがって、プライベートでの参拝におけるお賽銭などは、そもそも経費ではありませんことを申し添えます。
【例外】全額を経費として計上できる、と考える場合
神社・お寺などでの支出は、「原則・寄付金」だけれども。
それとは別に、「こういう考え方もあるよね」という例外について。全額経費にできるとする場合の考え方を見ていきます。
お賽銭
毎年、年始めに社員全員で神社に参拝をする、というような場合。それは、ひとつの「社内イベント」と捉えることができます。
ですから、その際に会社・個人事業主が「全社員分」として奉納するお賽銭は、社内イベントにかかる費用として経費だと考えることができます。
これに対し、社長や個人事業者だけ、あるいは一部の役員や社員だけとなると。全社員に対して機会が均等でないことから「福利厚生」とは言い難くなります。
結果として、神様・仏様への感謝・お礼として「見返りを求めず」に奉納するもの(対価性が無い)として、【原則】どおりの「寄付金」です。
祈祷料・初穂料など
仕事・事業に関して、商売繁盛・安全祈願などのご祈祷を受ける場合。
「祈祷」というサービス提供を受けることから、見返りがない賽銭のような「寄付金」とは性格が異なる、と考えることができます。
つまり、祈祷を受ける対価として支払った祈祷料や初穂料などは、寄付ではなく通常の経費だ、という考え方です。
ただし、社長ひとりの会社・個人事業者の場合には、仕事とプライベートの区別がつきにくいことから、会社に比べると経費としての主張が弱くなる向きがあります。
お札・熊手・破魔矢など
仕事・事業に関してお札・熊手・破魔矢をいただく場合。その際の「代金」は経費だと考えることができます。
お札や熊手、破魔矢などモノを受け取った対価として支払った代金は、寄付ではなく通常の経費だ、という考え方です。
ただし、社長ひとりの会社・個人事業者の場合には、仕事とプライベートの区別がつきにくいことから、会社に比べると経費としての主張が弱くなる向きがあります。
経理処理する場合の勘定科目
ここまで見てきた【原則】【例外】の取扱いについて、経理処理をする際の勘定科目はこちらです↓
会社(法人) | 個人事業者 | |
【原則】 | 寄付金 | 事業主貸 |
【例外】お賽銭 | 雑費、福利厚生費 | 雑費、福利厚生費 |
【例外】祈祷料・初穂料 | 雑費、福利厚生費 | 雑費、福利厚生費 |
【例外】お札・熊手・破魔矢など | 雑費、消耗品費 | 雑費、消耗品費 |
【例外】として、支出の全額を経費にする場合に、オールマイティーな勘定科目は「雑費」です。
ただし「雑費」は、見た目からしてなにやら不明瞭なので、多用することを制限すべき勘定科目です。よって、他の具体的な勘定科目への振り分けがおすすめです。
お賽銭・祈祷料・初穂料などであれば、会社・従業員に対することとして「福利厚生費」。お札・熊手・破魔矢などであれば、モノを買ったということで「消耗品費」にするなど。
ちなみに、フリーランス(従業員がいない)に「福利厚生費」という考え方はありませんので、その場合には「雑費」です。
必読! 要注意点や補足をいろいろ
さいごに、要注意点や補足について、いろいろお話をします。
「常識の範囲内」という良識を持つ
さきほど【例外】の項目で、「神社・お寺での支出が経費になる」という考え方を示しました。
ここで、経費にするうえでの大前提として、大切なことを確認しておきましょう。それは、その支出が「仕事・事業に関係がある」ということ。
言葉にするとカンタンですけれど、実際に「証明する」となると容易ではありません。
たとえば、お賽銭を奉納するといっても。それが仕事に対するものなのか、プライベートに関するものなのかはなかなか証明しづらいものがあるでしょう。
よって、「常識の範囲内」の行為であるかどうか、は重要なポイントになります。常識の範囲内とはこんなこと↓
- 支出金額が高額すぎない
- 神社・お寺の場所が遠方すぎない
- 神社・お寺での支出について頻繁すぎない(初詣など世間一般に妥当な時期か、など)
たとえば。お正月に、会社の近くの神社で、商売繁盛のお賽銭として10,000円。というのであれば、常識の範囲内と言えるでしょう。
そうではなく、金額が高額すぎる、場所が遠方すぎる、頻度が高すぎる、というようなことがあれば、個人の「趣味嗜好(=経費ではない)」によるものと見られてもしかたありません。
「〜しすぎる」ことをもって即ダメということではないにせよ。「〜しすぎる」のであれば、税務署をはじめ、周囲を納得させることは困難になることを覚えておきましょう。
領収書があればよいが無くてもよい
神社・お寺での支出について、領収書がもらえないということもあるでしょう。
領収書はあればベストですが、領収書がないからといって経費にならないというわけではありません。
神社・お寺での支出で領収書がないことは珍しいことでもありませんから、やむをえないところがあるわけです。たとえば、お賽銭を入れるのに「領収書ください」は難しいハナシです。
そこで、「出金伝票」で対応しましょう。
これについても前述したとおり、不自然な金額、不自然な場所、不自然な頻度であれば、その出金伝票の真相を追及される可能性が高くなります。
付随する支出の取り扱い
ここまでに取り上げた支出のほかにも、神社・お寺に関するものがまだあります。交通費や拝観料などです。
お賽銭・祈祷料その他で経費にできるものがあるならば、それに付随する交通費や拝観料も経費にできます。
その際の勘定科目については、「旅費交通費」あるいは、お賽銭・祈祷料その他と同じ「福利厚生費」や「雑費」などで処理しましょう。
まとめ
賽銭、祈祷料、お札、破魔矢、熊手は経費なの?勘定科目は?、ということについてお話をしてきました。
神社・お寺での支出は、原則「寄付」であることを押さえたうえで、例外として経費にできるかどうかを検討するようにしましょう。
くれぐれも「常識的な範囲内」という視点もお忘れなく。
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きょうの執筆後記
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