” どうせ税金を払うくらいなら、経費を使って節税しよう! ”
って、それ。税金は減っても、違うところで損をしているのかも。ということで、経費を増やして税金を減らすデメリットについてのお話です。
まだ節税してるの?経費を増やして税金を減らすデメリット
どうせ税金を払うくらいなら、経費を使って節税しよう! というハナシがあります。
が。そのハナシには「デメリット」がある、というお話をしていきます。
たしかに、税金は減るのでしょうが、そのメリットを相殺してなお上回るほどのデメリットがある。そんなデメリットが、次の2つです ↓
- 税金が減った以上におカネが減る
- おカネが減ったうえに融資が受けられない
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
税金が減った以上におカネが減る
節税のデメリット、1つめは「おカネが減る」です。節税をしてトクをしたはずなのにおカネが減るのはなぜか、を見ていきましょう。
使った経費の分だけおカネは減る
「利益 100、手元のおカネ 100」という会社があったとして。「利益 100」に対して「税金 30(税率 30%)」だとします。
このとき「税金 30」の支払いを嫌って、「税金を払うくらいなら、経費を使っちゃえ!」と、「経費 100」を使うとしたらどうなるでしょう?
素直に税金を支払う場合と、経費で使っちゃう場合とで比較をしてみます ↓
素直に税金を支払う | 経費で使っちゃう | |
利益 | 100 | 0 (=利益 100 − 経費 100) |
税金 | 30 (=利益 100 × 30%) | 0 (=利益 0 × 30%) |
手元のおカネ | 70 (=利益 100 − 税金 30) | 0 (=利益 100 − 経費 100) |
注目すべきは、上記の表の最下段「手元のおカネ」です。
素直に税金を支払う場合には、手元に 70のおカネが残る。これに対して、経費で使っちゃう場合には、手元におカネは残りません。ゼロです。
「経費で使っちゃう」ことにより、たしかに「税金 30」は減ったのですが、おカネはそれ以上になくなっている。ということが、上記の比較表からわかります。
浪費は節税にあらず
経費を使えば節税の金額以上におカネが減る… よくよく考えてみれば当たり前のハナシです。
にもかかわらず、「節税してトクをしたつもりだったのにおカネがない!」と慌てるケースは少なくありません。
決算対策と称した飲み食い、衝動買いなど。税金が減ってトクをしたように見えても、のちのち困ったことになる、という理解が必要です。
誤解なきように申し添えると。飲み食いをしてはいけない、というわけではありません。モノを買ってはいけない、というわけではありません。
その「おカネの支出」が、将来の「おカネの収入」につながるかどうかです。将来の「おカネの収入」につながることを期待した「おカネの支出」を投資と呼びます。
飲み食いにしても、モノを買うにしても、それが投資と言えるのかどうかを考えてから。ということです。
そうすれば、決算対策と称した飲み食いや衝動買いのほぼすべてが「投資」とは言えず、将来の収入とは無縁な「浪費」であることに気づけるはずです。
おカネが減ったうえに融資が受けられない
節税のデメリット、2つめは「銀行融資が受けられない」です。節税と銀行融資のあいだには、密接な関連がある。ということを見ていきましょう。
節税するか否かで決算書は大違い
「経費で使っちゃう」を選択した結果、おカネが失くなることはわかりました。
これは困ったぞ… ということで。「そうだ、銀行からおカネを借りよう」と考えたときには何が起きるのか? を考えてみることにします。
融資を依頼された銀行は、「貸したおカネを返してもらえそうな相手かどうか」を審査するわけですが。銀行がとくに注目をする、2つの数字があります。
「利益」と「手元のおカネ」です。
そういやぁ、そんな数字が前述の比較表にもあったよね。ということで、抜粋したものがこちら ↓
素直に税金を支払う | 経費で使っちゃう | |
利益 (損益計算書に掲載) | 100 | 0 |
手元のおカネ (貸借対照表に掲載) | 70 | 0 |
おカネを貸す側の銀行から見たときに、「利益」も「手元のおカネ」も大きいほうが融資をしやすくなります。小さければ融資はしにくくなります。
「利益」があるから返済するチカラがあると見られ、「手元のおカネ」があるから安心(返済金に充てることができる)と見られるからです。
それを踏まえてもう一度、上記の表を眺めてみましょう。「素直に税金を支払う」場合と「経費で使っちゃう」場合との差は明らか。もはや、比べるまでもない。
ちなみに。「利益」は、決算書のうち損益計算書に、「税引前当期純利益」として掲載されます。
「手元のおカネ」は、同決算書のうち貸借対照表に、「現金・預金」として掲載されます。いずれも、銀行が決算書から確認をすることができる数字です。
「経費で使っちゃう」の将来は悪循環
したがって、「素直に税金を支払う」場合には、手元におカネがあるうえに(と言うか、おカネがあるから)、銀行融資も受けやすくなります。
銀行融資を活用することで、さらに手元資金を厚くすることができる。結果、余裕をもって成長に必要な投資もできますから、ますます「利益」もアップします。
「利益」がアップすると、銀行から「もっと借りてほしい」と言われます。またまた手元資金が厚くなる。好循環です。
いっぽうで、「経費で使っちゃう」場合には。「利益」も「手元のおカネ」も減ってしまうことから、銀行融資は受けにくくなるばかりです。
「手元のおカネ」がないのにもかかわらず、銀行融資も受けられないのですから、まさにダブルパンチ。場合によっては、会社・事業の継続が困難になります。
また、おカネがないのですから、将来の成長に必要な投資もできず。「利益」をアップさせることも難しい… 悪循環です。
このように、「経費で使っちゃう」には、恐れるべき悪循環が待っていることを理解しておかなければいけません。
まとめ 〜 もはや「節税」とは呼べない
経費を増やして税金を減らすデメリットについてお話をしてきました。
税金が減ることを、一般に「節税」と呼びます。けれども、前述した2つの大きなデメリットを被ってまでする節税は、もはや節税とは呼べません。浪費です。
なぜなら、節税の本質は、税金を減らすことではなく、おカネを減らさないこと。むしろ、おカネを増やすこと、にあるからです。
単純に「税金が減る=節税」ではありません。
将来の収入が期待できる「投資」として使う経費であれば、おカネを増やすことに貢献するので、本質的な「節税」と言えます。
また、あらためておカネを支出することなく税金を減らすことができる、各種の「税額控除制度」を活用することも本質的な「節税」と言えます。
これら「本質的な節税」と、「浪費」とを混同しないように注意しましょう。