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複数の銀行から融資を受けている場合の問題事例とその対策

複数の銀行から融資を受ける場合の問題事例と対策

1つの銀行からだけ融資を受けるのはよくない、との考え方があります。そのいっぽうで、複数の銀行から融資を受けているからこそ起きる問題もあります。

というわけで、複数の銀行から融資を受けている場合の問題事例とその対策についてのお話です。

目次

一行取引の問題、複数行取引の問題。

会社・事業における銀行融資について。

1つの銀行とだけお付き合い(一行取引)をするのはよくない、との考え方があります。つまり、1つの銀行からだけ融資を受けているのはよくない、ということです。

その理由は、

一行取引がよくない理由
  • 取引銀行が急に「融資に対する姿勢」を変えたときの対応に困る
  • 銀行間の競争原理が働かず、金利など融資条件の交渉がしにくい

CHECK! 取引銀行数が少なすぎはデメリット!脱・一行取引の対策と手順

上記のようなことから、銀行とのお付き合いは「複数の銀行と(複数行取引)」が原則です。

そのいっぽうで、複数の銀行とお付き合いをしているからこそ起きる問題もあります。

そこで、複数の銀行から融資を受けている場合の問題事例とその対策についてお話をしていきます。事例は次の5つです ↓

複数の銀行から融資を受けている場合の問題事例
  • 特定の銀行の融資残高が減少している
  • 他行の融資残高は増加しているが現金預金は増加していない
  • 他の銀行の融資残高を全額借り換える
  • 黙って複数の銀行から同時に融資を受ける
  • リスケの際、特定の銀行にのみ偏った返済をする

それでは、このあと順番に見ていきましょう。

 

複数の銀行から融資を受けている場合の問題事例とその対策

《事例1》特定の銀行の融資残高が減少している

当社のここ3年における「各銀行からの融資残高推移」は次のとおり ↓

 2016年2017年2018年
A銀行3,000万円2,400万円1,800万円
B銀行1,200万円1,000万円1,200万円
C銀行800万円600万円400万円
融資残高合計5,000万円4,000万円3,400万円

このたび、C銀行に融資を依頼しているが、よい返事をもらえずにいる…

この問題事例のポイントは、「C銀行から見たときのA銀行」です。A銀行の融資残高が、ここ3年間で一方的に減り続けている。これが、C銀行にとっては「不安」なのです。

とくに、A銀行は「融資残高の大きさ」という点では当社のメインバンク。メインバンクが融資を増やさずにいるのにはワケがあるのではないか? とC銀行は考えます。

メインバンクは本来、もっとも融資先とのコミュニケーションが密であり、メイバンクだからこそ知り得る情報というものもあるはずです。

この点でA銀行は、決算書を見ただけではわからないような重大な問題を知っていて、融資を増やさずにいるのかもしれない… であるならば、ウチも貸さない。これがC銀行の考えです。

銀行は必ず、他の銀行の融資残高推移を見ています。ゆえに、他の銀行の動きをもとにして融資を警戒されうることを押さえておきましょう。

対策

各銀行ごとの融資残高推移に大きなバラツキが出ないように、お付き合いをしている銀行からは、なるべく同じように融資を受けるのがよいでしょう。

銀行の考え方は「横並び」です。他の銀行が貸せば、ウチも貸す。他の銀行が引けば、ウチも引く。

とくに、下位の銀行(C銀行)は、上位の銀行(A銀行)を気にするものです。下位の銀行から融資を受けたいのであれば、上位の銀行の融資を受けてから、がひとつの方法です。

《事例2》他行の融資残高は増加しているが現金預金は増加していない

当社のここ3年における「各銀行からの融資残高推移」と「預金残高推移」は次のとおり ↓

 2016年2017年2018年
A銀行2,000万円2,200万円1,800万円
B銀行1,000万円1,200万円1,500万円
C銀行500万円700万円1,000万円
融資残高合計3,500万円4,100万円4,300万円
預金残高1,500万円1,200万円900万円

このたび、A銀行に融資を依頼しているが、よい返事をもらえずにいる…

さきほど《事例1》で、銀行の考え方は「横並び」だと言いました。

B銀行とC銀行は融資残高を伸ばしています。それなら、A銀行も他の銀行にならって、融資を渋る理由はないのではないか?

この問題事例のポイントは、「融資残高推移に対する預金残高推移」です。融資残高合計は増え続けているのに対して、預金残高は減り続けている。これをA銀行は心配しています。

融資残高の増加とともに、預金残高も増加しているのであれば、銀行としては安全です。借金が増えても、増えたおカネでいつでも返済できるのですから問題なし。

これに対して、借金は増えていくのに、おカネが減っていくのは問題です。なにかあったときに、銀行が回収できない金額が増えていくからです。

銀行は、融資残高の推移といっしょに預金残高の推移も見ています。必ずしも他の銀行からの融資が増えていればよい、というわけではありません。

対策

言うまでもありませんが、融資を受けるのであれば「おカネ(預金)」を増やす、少なくとも減らさないようにしなければいけません。

融資を受けてまでおカネを減らすような借り方はNGだ、ということです。

言い換えると、おカネを積みあげる(手元の預金残高を増やす)ために融資を受けるのはOKです。銀行から見ても問題はありません。

融資を受けて資金繰りを安定させる、という考え方はおすすめです。

《事例3》他の銀行の融資残高を全額借り換える

当社のここ3年における「各銀行からの融資残高推移」と「預金残高推移」は次のとおり ↓

 2016年2017年2018年
A銀行2,000万円3,000万円2,400万円
B銀行1,000万円800万円600万円
融資残高合計3,000万円3,800万円3,000万円

このたび、B銀行からA銀行の融資を「全額肩代わり」する提案をもらっている…(金利などの融資条件はB銀行の方がよい)

複数の銀行と取引をしていると、この事例のような「肩代わり」の融資を提案されることはあるものです。銀行間に競争原理が働くからですね。

しかも、既存の融資よりも条件が良いとなれば、肩代わりをしてもらって借り換えようか? と考えることもあるでしょう。

ただし、注意が必要です。B銀行で全額肩代わりをしてもらった瞬間に、複数行取引ではなくなってしまいます。

またA銀行からも借りればいいじゃないか、はありえません。他の銀行での借り換えは「裏切り」を意味するものであり、原則、関係が断絶されるからです。

したがって、魅力的な借り換え提案であっても、このような(複数行取引ではなくなってしまう)ケースには気をつけましょう。

対策

3つ以上の銀行とお付き合いをしておくと、借り換え提案に乗ったとしても、残り2つの銀行と「複数行取引」が継続できます。

このとき、複数行のひとつに、公的金融機関の「日本政策金融公庫」加えておくのがおすすめです。

日本政策金融公庫は、民間金融機関の融資を補完する役割がありますので、受けられる融資により幅が出ます。

《事例4》黙って複数の銀行から同時に融資を受ける

このたび、増加運転資金として、A銀行とB銀行の両方に融資を依頼しようと考えている。

ちなみに、両方に依頼していることは黙ったまま、可能であれば両方から融資を受けるつもりでいる。

運転資金について、2つの銀行から同時に融資を受けること自体は可能です。が、結論として、あまりよいものではありません。

まず、A銀行が融資可否の審査をするにあたり、「B銀行からも融資を受けるか受けないか」は判断材料になるでしょう(以下、B銀行にとっても同じです)。

ですから、両方に融資依頼をしたことを黙っているのは「判断材料を隠そうとしていた」と言えなくもありません。

また、A銀行が融資をしたあとで、B銀行からも同時に融資を受けたことを知ったなら… 「二股をかけられた」という点で、気持ちのよいものではないでしょう。

したがって、両方から融資を受けられたとしても、A銀行との今後の関係性に悪い影響を与える可能性があります。

対策

運転資金を複数の銀行から借りること自体に問題はありませんので、同時依頼については、その旨を正直に話しておくのがよいでしょう。

なお、信用保証協会付き融資の場合には、黙って隠そうとしても信用保証協会を通じて、同時融資がバレることになります。

また、「設備資金」について、複数の銀行から融資を受けることはできません。たとえば、1,000万円の機械を買うのに、A銀行から1,000万円、B銀行からも1,000万円、はありえません。

設備資金は、借りるおカネと使うおカネとが明確にヒモづけされます。使うおカネを超えて借りることはできません。

《事例5》リスケの際、特定の銀行にのみ偏った返済をする

このたび、どうしてもリスケジュールせざるをえなくなってしまった。

複数の銀行から融資を受けているが、なかでもお世話になっているA銀行にだけは、他の銀行よりも多めに返済を続けたい。

資金繰りに詰まり、やむをえずリスケジュールをする場合。融資を受けている各銀行と話をして、毎月の返済額を減額してもらうことになります。

このとき、特定の銀行だけに「他の銀行よりも多めに返済する(偏頗弁済・へんぱべんさい、と言います)」ことは許されません。

他の銀行からすれば、そんな不公平なハナシはないのであって納得できないからです。

どこかひとつの銀行でも納得が得られなければ、他の銀行もリスケジュールには応じませんので、リスケジュールそのものを進めることができなくなってしまいます。

対策

リスケジュールをするのであれば、取引をしている銀行すべてに対して、衡平に対応しなければいけません。

返済を止めるとなったら、すべての銀行の返済を止める。A銀行だけには返済を続ける、というのはナシです。

ちなみに、お付き合いしている銀行の数が多いほど、リスケジュールの説明・交渉には時間が必要になります。それぞれの銀行から承諾を得なければいけないからです。

順序としては、まずメインバンク(融資残高がもっとも大きい銀行)から対応しましょう。メインバンクの承諾がないと、他の銀行からの承諾は得られないものです。

まとめ

複数の銀行から融資を受けている場合の問題事例とその対策についてお話をしてきました。

銀行とのお付き合いは「複数の銀行と(複数行取引)」が原則です。そのいっぽうで、複数の銀行とお付き合いをしているからこそ起きる問題もあります。

問題事例と対策を押さえておきましょう。

複数の銀行から融資を受けている場合の問題事例
  • 特定の銀行の融資残高が減少している
  • 他行の融資残高は増加しているが現金預金は増加していない
  • 他の銀行の融資残高を全額借り換える
  • 黙って複数の銀行から同時に融資を受ける
  • リスケの際、特定の銀行にのみ偏った返済をする
複数の銀行から融資を受ける場合の問題事例と対策

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