銀行に提示する決算書に「仮払金」の勘定科目があるのはダメだダメだ、と言うけれど。いったいなぜダメなのか?あるとどうなってしまうのか?
仮払金が銀行から嫌われる「理由」と、それによって会社側が受けることになる「制裁」についてお話をしていきます。
仮払金はなぜにそんなにも嫌われるのか?
会社・事業における銀行融資について。
銀行に提示する決算書に「仮払金」の勘定科目があるのはダメだダメだ、というハナシは有名ですが。
ではどうして、そんなにも仮払金がダメなのか? つまり、銀行が仮払金を嫌う「理由」はなんなのか?
また、もしも仮払金があると、決算書を提示した会社側はどうなってしまうのか? つまり、銀行からどのような「制裁」を受けるものなのか?
仮払金をめぐる、これら理由と制裁は次のとおりです ↓
- 経理を理解していないから
- 経理に問題があるから
- 社長が会社のおカネを使っているから
- 粉飾決算をしているから
- 管理能力を評価減
- 経営者の資質を評価減
- 資産の減算
- 利益の減算
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
決算書の仮払金が銀行に嫌われる「理由」
まずは、決算書に「仮払金」が掲載されていることを、銀行はどうして嫌うのか。その4つの理由をお話していきます。
経理を理解していないから
「仮払金」は文字どおり、仮の出金を言います。何の出金かは置いておき、ひとまず出金したことを記録する。ポイントは「仮」であること。
それに対して、決算書は。1年に1度の決算にあたり、最終的なとりまとめをする計算書類です。ポイントは「最終的」であること。
では、その「最終的」である決算書に、「仮」の項目を載せておくというのはどうでしょう? おかしいですよね。
最終的な決算書をまとめる過程で、「仮」のものは解明・解消をしておくべきだからです。仮払金を決算書に載せない、のは経理のキホンでもあります。
それでも決算書に「仮払金」が残っているのを見た銀行は、「経理のキホンも知らないんだなぁ」と思うばかりです。
このようにして、「経理を理解していないから」という理由で、銀行からは嫌われることになります。
経理に問題があるから
前述した「経理のキホン」は知っていたとしても、なお決算書に仮払金を残してしまうケースがあります。
ひとまず仮払金で処理していたが、その後、いくら調べても何に使ったおカネかわかならい… どうしようもないので仮払金のまま。
これでは、「ずさんな経理」と言われてもしかたありませんよね。
したがって、仮払金を決算書に残してしまうことは「経理の機能不全」をみずから明かしているようなものだ、と言ってよいでしょう。
そのような会社は「経理に問題があるから」という理由で、銀行からは嫌われることになります。
社長が会社のおカネを使っているから
「仮払金」という表面的な勘定科目はともかく、その中味をよくよく確認してみたら、社長が個人的に使ったおカネでした。ということがあります。
社長個人が使ったおカネですから、会社の経費にするわけにもいかないので、やむをえず「仮払金」で処理している。実態は、会社から社長への貸付金です。
これを知った銀行が思うことは、「会社と社長のサイフは区分できていないんだなぁ」です。公私混同。
このような会社におカネを貸せば、また、そのおカネが社長にながれてしまうかもしれません。
銀行が会社に貸したおカネが、社長個人のおカネとして使われているのであれば問題(資金使途違反)になります。
銀行は会社におカネを貸したのであって、社長に貸したわけではないから、ですね。
ゆえに、「社長が会社のおカネを使っているから」という理由で、銀行からは嫌われることになります。
粉飾決算をしているから
意図的に利益を水増しする、いわゆる「粉飾決算」のテクニックとして、「仮払金」が使われることが少なくありません。いわば常套手段。
本来は費用として処理すべき支出を、資産の勘定科目である仮払金で処理することにより、その分だけ費用を少なくすることに目的があります。
このあたりは銀行もようくわかっていますから、「仮払金=粉飾」くらいの目で見られることは覚えておいたほうがよいでしょう。
とくに、「ギリギリ黒字」というような決算書に掲載されている仮払金は、粉飾のニオイがプンプンするものです。
事実を偽る決算書がよくないのはもちろんであり、「粉飾決算をしているから」という理由で、銀行からは嫌われることになります。
決算書の仮払金により銀行から受ける「制裁」
仮払金が銀行から嫌われる理由に引き続き、実際、決算書に「仮払金」が掲載されている場合にはどうなるのか。
会社が銀行から受けることになる4つの制裁についてお話をしていきます。
管理能力を評価減
さきほど、決算書の仮払金が銀行に嫌われる理由として、「経理を理解していないから」「経理に問題があるから」を挙げました。
銀行は、そのような会社の「管理能力」に疑問を持ちます。
経理は会社にとってだいじな管理機能。その経理をきちんと知らない、できていない。そういう会社におカネを貸すのは危ないのではないか? と考えるわけです。
したがって、「管理能力に問題あり」との評価により、結果的に融資を受けることが難しくなるという制裁を受けることとなります。
融資可否の判断は決算書の「数字」そのものによるところが大きいものの、「数字」以外の面も銀行は評価をしている、ということです。
経営者の資質を評価減
決算書の仮払金が銀行に嫌われる理由として、「社長が会社のおカネを使っているから」を挙げました。
銀行は、そのような社長に対して「経営者の資質」に疑問を持ちます。
会社のおカネと個人のおカネとを混同しているようなら、会社を代表する経営者としてどうなんだ? と考えるわけです。
ゆえに、「経営者の資質に問題あり」との評価により、融資を受けることが難しくなるという制裁を受けることになります。
これもまた「数字」以外の面を銀行が評価する、という一例です。
資産の減算
銀行は、決算書(貸借対照表)を見て、「資産 − 負債」がどれだけプラスかを見ています。それがプラスであればあるほど安全な会社として評価をしています。
この点で。銀行は、決算書に掲載されている仮払金に「資産性が無い」と判断すると、その分だけ資産から削って「資産 − 負債」を見ます。
つまり、仮払金があると、資産が削られて「資産 − 負債」が減る分、銀行からの評価が下がる。そういう制裁を受ける、ということです。
ちなみに、仮払金に「資産性が無い」とは。たとえば、なにに使ったかわからないけど仮払金にしている、とか。ほんとうは費用だけど粉飾をするために仮払金、とか。
それは資産とは言えないだろう、ということで資産から減算するわけです。
また、実態は社長への貸付金という仮払金で、返済のアテがなさそうな場合。もはや債権とも言えず、やはり資産からの減算を考えます。
利益の減算
銀行は、決算書(損益計算書)を見て、「利益」がどれだけプラスかを見ています。それがプラスであればあるほど返済力がある会社として評価をしています。
この点で。銀行は、決算書に掲載されている仮払金が「ほんとうは費用」だと判断すると、その分だけ利益を削って見ます。
会社が粉飾決算をしているケースであり、水増しされている利益を正しい数字で見るためです。
これにより、決算書に掲載されている利益が削られた分、銀行からの評価が下がる。そういう制裁を受ける、ということになります。
まとめ
決算書の「仮払金」が銀行に嫌われる4つの理由と4つの制裁についてお話をしてきました。
銀行に提示する決算書に「仮払金」の勘定科目があるのはダメだダメだ、と言われますが。
どうしてダメなのか? あるとどうなってしまうのか? 銀行から融資を受ける側として押さえておきましょう。
- 経理を理解していないから
- 経理に問題があるから
- 社長が会社のおカネを使っているから
- 粉飾決算をしているから
- 管理能力を評価減
- 経営者の資質を評価減
- 資産の減算
- 利益の減算