銀行から誤解される『悪意なき粉飾・自覚なき粉飾』の5事例

銀行から誤解される「悪意なき粉飾・自覚なき粉飾」の事例

銀行から粉飾と誤解をされて、融資が受けられなくなるのでは「とんだ災難」です。

そんなことがないように、銀行から誤解される「悪意なき粉飾・自覚なき粉飾」の事例を押さえておきましょう。

目次

身に覚えのない粉飾で誤解される会社がある

会社が銀行から融資を受ける・受けているときに、提示を求められる「決算書」。

その決算書について、銀行は「粉飾」を嫌います。粉飾、つまり、事実とは異なる「ウソの決算書」を銀行は嫌います。

たとえば、無いはずの資産を在るということにしたり。無いはずの利益を在るということにしたり。

そんなデタラメな決算書で会社を評価することはできませんし、なにより、そんなデタラメな決算書をつくる会社を信用することができません。

したがって、提示した決算書が「粉飾している」となれば、銀行から融資を受けることはできないわけです。

この点で、悪意ある粉飾・意図的な粉飾で融資が受けられないのは自業自得にしても。銀行から粉飾と誤解をされて、融資が受けられなくなるのでは「とんだ災難」だと言えるでしょう。

そこで、銀行から誤解される「悪意なき粉飾・自覚なき粉飾」についてお話をしていきます。

じぶんでは知らないうちに、実は粉飾をしてしまっていた。結果、銀行から融資が受けられなくなってしまった… ということがないように。

次に挙げる5つの事例を確認をしておきましょう ↓

銀行から誤解される「悪意なき粉飾・自覚なき粉飾」の事例
  1. 貸付金・前払費用などを流動資産にする
  2. 買掛金・未払金を計上しない
  3. 特別利益を営業外収益にする
  4. 貸倒引当金を計上しない
  5. 減価償却費を計上しない

それでは、このあと順番に見ていきます。

銀行から誤解される「悪意なき粉飾・自覚なき粉飾」の5事例

《事例1》貸付金・前払費用などを流動資産にする

決算書のうち「貸借対照表」に掲載される資産について。「ワン・イヤー・ルール」という会計の決まりごとがあります。

その「ワン・イヤー・ルール」とは。決算日から1年以内に現金化される、あるいは費用化される資産は「流動資産」に分類する。

これに対して、1年を超える資産は「固定資産」に分類する。というルールです。

ところが。このルールをあまり意識せず、なんとなくで「流動資産」に分類してしまう会社があります。

よくある例は、貸付金や前払費用です。

1年以内に返済される見込みがない貸付金(=長期貸付金)、1年を超えて費用化される前払費用(=長期前払費用)が、流動資産に分類されている。

結果として、会社の安全性指標である「流動比率(流動資産÷流動負債)」を実際よりもよく見せることになります。

これは、意図的に粉飾をする場合に使われる常套手段であり、悪意や自覚がなかったとしても、粉飾だとの誤解を招きかねません。

自社の貸借対照表を見て、ワン・イヤー・ルールが守られているか確認をしておきましょう。

《事例2》買掛金・未払金を計上しない

事例1と同じく「貸借対照表」について。買掛金や未払金を、掲載したりしなかったりする会社があります。

たとえば、前年の決算書には買掛金が載っていたのに今年はない。前年はずいぶんな額の未払金が載っていたのに今年は少ない。みたいな。

このようなことが起きる理由として、「赤字だから」が挙げられます。

つまり。1円でも赤字の場合には利益に対する税金はかからないことから、これ以上赤字にしてもしかたない。だから、これ以上買掛金や未払金を計上して費用を増やす必要もない。ということです。

たしかに、1円の赤字でも100万円の赤字でも「税金はゼロ」で変わりありません。

けれども、「税金計算」と「正しい決算書」をつくることとは別の話です。

決算書は税金計算のためだけにあるわけではなく、会社の状況を利害関係者に向けて「正しく」示す役割も担っています。

であるならば。黒字だろうが赤字だろうが、計上すべき買掛金・未払金は、貸借対照表に掲載しなければいけません。銀行はそこを見ています。

いっぽうで、意図的な粉飾では、計上すべき買掛金・未払金を貸借対照表に掲載しないのは常套手段です。

「税金には影響がないから」と、買掛金・未払金の計上をかんたんに考えていると、銀行から思わぬ誤解を受けることになりかねません。

《事例3》特別利益を営業外収益にする

ここからは、決算書のうち「損益計算書」についてです。

さて、損益計算書には「いろいろな利益」が掲載されています。損益計算書の上から見ていくと、まずは「売上総利益」です。

そこから、「営業利益」「経常利益」「税引前当期純利益」「当期純利益」と続きます。

これらの各種利益について、銀行の見方は「上にある利益ほどだいじ」です。売上総利益がいちばんだいじで、次に営業利益、経常利益… ということになります。

そのような銀行の見方を逆手にとり、「ほんとうは特別利益だけれど営業外収益にする」という粉飾手法があります。

たとえば、固定資産や有価証券を売却したことによる利益、生命保険を解約したことによる利益、その他の雑収入など。本来は特別利益として計上すべきところを、営業外収益として計上する。

結果として、実際よりも「経常利益を大きく見せる」ことになります。

最終の当期純利益の額こそ変わらないものの、「上にある利益」を偽っているという点での粉飾です。

したがって、さきほど挙げたような固定資産の売却益などを、よくわからないままに営業外収益に掲載しているのはよくありません。銀行から誤解を招きかねません。

そんな些細なことで… ? と思われるかもしれませんが。なにかひとつでも粉飾が見つかれば、「ほかにももっとあるんじゃないか、あるはずだ」と考えるのが銀行です。

些細なことでも、気をつけて気をつけすぎることはない。そう心得ておきましょう。

《事例4》貸倒引当金を計上しない

売掛金や受取手形、貸付金などの「債権」がある場合。それらの回収不能の可能性を見込んで費用計上をする、という会計の考え方があります。

いわゆる「貸倒引当金」です。損益計算書には「貸倒引当金繰入額」として掲載されます。

ではいったい、どのていどの回収不能を見込めばよいのか? となるわけですが。税法で決められている「上限額」が、その目安になります。

(※ 会社が好き勝手に回収不能を見込んで経費にできてしまうと、税金をコントロールできてしまうので、税法では上限を決めています。上限以下で経費にする分には、税務署的からのおとがめはありません)

本来は、ひとつひとつの債権について、回収可能性を検討すべきところですが、「ようわからん」というのが正直なところでしょう。

そこで、銀行としても、税法決められている「上限額」を目安にせざるを得ないというわけです。

いっぽうで。上限額までの貸倒引当金を計上していない、あるいは、まったく計上していないような決算書は費用が過少。粉飾だ、と見ます。

実際、そのような行為もまた粉飾の常套手段だからです。

計上できる貸倒引当金の金額も知れているから、などという理由から、悪意なく・自覚なく粉飾をしている決算書は少なくありません。

繰り返しになりますが。わずかな金額、些細なことでも「ほかにももっとあるんじゃないか、あるはずだ」と考えるのが銀行です。

わずかな金額・些細なことこそ、正しく処理をするようにしましょう。

《事例5》減価償却費を計上しない

建物や機械、自動車など。金額が大きな資産を買ったときにはいちどに費用処理せず、複数年に分けて費用にする。「減価償却」という会計のしくみがあります。

このとき、それぞれの年に費用とされる金額は「減価償却費」として、損益計算書に掲載されることになります。

ではいったい、いくらの減価償却費を計上するばよいのか? となるわけですが。税法で決められている「上限額」が、その目安になります。

本来は、ひとつひとつの資産について、その利用状況に応じて検討すべきところですが、「ようわからん」というのが正直なところでしょう。

そこで、銀行としても、税法決められている「上限額」を目安にせざるを得ない。というのは、前述した「貸倒引当金」と同じことです。

したがって、上限額までの減価償却費を計上していない、あるいは、まったく計上していないような決算書は費用が過少。粉飾だ、と銀行は見ます。

実際、そのような行為は「超」が付くほどの粉飾の常套手段です。

業績が振るわないときなどには、安易に減価償却費の過少計上・未計上をする会社がありますが。銀行に対してはなにもよいことがありません。

超常套手段の粉飾をしている、と見られてしまうばかりです。

税務署的には問題ないじゃないか! という言い訳も銀行には通じないことは、あわせて覚えておきましょう。

再三繰り返しているとおり、決算書は会社の状況を正しく示すべきものだからです。

もちろん、正しい状況を示す決算書が、自社自身が自社を正しく把握するうえで役に立つことは言うまでもありません。

まとめ

銀行から誤解される「悪意なき粉飾・自覚なき粉飾」の事例についてお話をしてきました。

じぶんでは知らないうちに、実は粉飾をしてしまっていた。結果、銀行から融資が受けられなくなってしまった… ということがないように。

銀行から誤解される「悪意なき粉飾・自覚なき粉飾」の事例を押さえておきましょう。

銀行から誤解される「悪意なき粉飾・自覚なき粉飾」の事例
  1. 貸付金・前払費用などを流動資産にする
  2. 買掛金・未払金を計上しない
  3. 特別利益を営業外収益にする
  4. 貸倒引当金を計上しない
  5. 減価償却費を計上しない
銀行から誤解される「悪意なき粉飾・自覚なき粉飾」の事例

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