管理職が「やるべきこと」とはなにか?
フリーランスになってわかった、あらためて気が付いたこととは。
管理職とは何者か?
つい最近、知人と「管理職とは何者か?」というような話をする機会がありました。これまでも社会人生活の中で、たびたび考えていたテーマではあります。
フリーランス型税理士として独立開業し、いまは「ひとり」です(仕事仲間やお友達はいます(笑))。独立開業する前は、スタッフ約40名の税理士法人で管理職を務めていました。
税理士事務所の監査担当者としてのポジションもありながらの、いわゆる「プレイングマネージャー」スタイル。自分の担当としての業務と、管理職としての業務の両立に悪戦苦闘する日々が思い出されます。
その管理職経験も含めて、「管理職とは何者か?」という先ほどの問いについて。
「管理職とは○○というやるべきことをやる人」という観点で考えてみます。つまり、○○とは管理職がやるべきこと。
独立後にいろいろな方と会い、話をさせていただく中で気が付いたようなこともありました。「ひとり」になったあとで気が付くとはなんとも皮肉なものですが。
管理職がやるべき○○は3つある
管理職が管理職としてやるべきことはなにか?
結論として、次の3つを挙げることにします。
- 業務管理
- 思想管理
- 是非管理
1.業務管理
これは、一般に管理職が管理すべきこととして、よくイメージされる部分です。
その管理職が管理の対象とするチームとその部下について、
- スケジュール
- 業務内容
- 業務の品質
- 業務遂行に必要な採用・教育
- 職場環境
- 顧客(定性的・定量的両面に関して)
- 採算 など
もちろん、管理職それぞれに与えられている権限は同じではありませんので、上記のものでも管理対象ではないということはあるでしょう。とはいえ、おおむねこのあたりの管理は、多くの管理職の方に役割として求められていることと推測します。
このなかで特に重要だと考えるのは、「顧客」「採算」の2つ。
顧客については、「定量的なこと」を管理するのはそれほど難しいことではありません。定量的、つまり数字で客観的に置き換えられるようなことには「誤解」が少ないからです。たとえば、「顧客Aに対する今月の売上高は50万円」とか。
対して、「定性的なこと」というのは一筋縄ではいきません。たとえば、「顧客Bの当社に対するニーズ」。管理職に顧客Bとの直接的な面識がない場合、面識がある部下などからの情報に頼ることになります。部下が正しく情報を把握できているか、その情報を管理職が正しく引き出せるか、という2段階の難しさがあります。
この点、その管理職が客先に出向くという方法がありますが時間がかかります。ならばと、しくみやしかけに頼り過ぎると策に溺れます。わたしも何度も溺れた気がしています。たとえば、どんなに高価で多機能な情報共有システムを導入しようと、それを扱う人たちがダメなら管理にはなりません。あたりまえです。
もうひとつ、大事な「採算」について。
採算というのは、「いくらもうかっているか」という単純な話ではありません。「いまは顧客Cにすごく時間をとられているけれど、”顧客教育・育成”の段階にあるので来月まではOK」というような管理ができているかどうかもたいせつです。
実際にこういう場面はちょいちょいあります。新規事業の立ち上げ時期、新人の業務関与初期など、利益が落ちるような場面がありえます。そのときに、その要因を明確にとらえられるかどうかは管理職の腕の見せ所。目先の利益に一喜一憂せず、長期的な成長を管理できるかが問われます。この場合には、「顧客ごとの時間当たり付加価値」などを測定できているか、というようなことがポイントになるでしょう。
2.思想管理
思想などというと、ちょっと「怪しげ」な雰囲気が出てしまうでしょうか。
これはもう少し説明を加えると、「企業理念・ビジョンの浸透」について管理するということです。
人が複数人集まって動く場合、そこには組織としての「考え方」が生じます。その考え方は、組織が必要となった「目的」でもあるはずであり、なにかしらの「考え方」が必ずあります。
その「考え方」が、企業理念のように明文化されている場合もあれば、なんとなく互いに想像している程度、ということもあるでしょう。いずれにせよ、人が集まって動く以上、組織としての「考え方」が、組織のメンバーに正しく理解されているかどうかは、組織の機能に大きな影響を持ちます。
不適切なたとえ話かもしれませんが、チームで野球をしようというのに、みながピッチャーズマウンドに集まっているようでは試合を始められません。あなたがピッチャーをやりたいかどうかではなく。チームで野球をするために、メンバーは各々の役割としてそれぞれのポジションにつく必要があります。
極端なたとえ話ではありますが、この場合、「チームで」野球をするんだということをみなに浸透させなければならないわけです。
「チームで野球をする」をこの組織の「思想」としてとらえるのであれば、管理職は次のようなことを管理しなければいけません。
- 理念・ビジョン ・・・チームで野球をする
- 戦略 ・・・みなに公平なポジション決め
- 目標 ・・・ポジションごとの個人能力について客観的測定方法の確立
ただただ「チームで野球をする」ことができればいいだなんて、どんだけ揉めているんだよというチームの話です。
でも、現実世界も似たようなものです。メンバー個人個人が組織に属する思惑はそれぞれであり、それが組織が目指すところとしての思惑(理念・ビジョン)と100%一致することはありません。
だからこそ、そこを管理する必要があります。
組織が理念やビジョンの実現を果たすために、メンバー個人個人の思惑を理解して、それを組織参画への動機として変換させていく。管理職は、カタチばった「理念やビジョン」を咀嚼する役割を担っています。咀嚼して、個人個人が持っている思いとリンクさせていくという役割を担っています。
組織の理念やビジョンに対する咀嚼力が低い、メンバーへの伝達語彙力に乏しい。そもそも咀嚼以前に、管理職自身の自我をメンバーに押し付けているなど、管理職の資質を疑う場面も少なくありません。
思想管理はとても難易度が高く、おまけにひどく手間と時間を要します。
わたし自身、管理職としてこれを実践できたかと言われると自信がありません。正直、それゆえに「ひとり」を選んでいるというところもあります。
3.是非管理
是非とは、「よいか悪いか」ということ。
よいか悪いかを判断する、というのは管理職にとって「いちばん」必要なことだといまは考えています。これは、「あたらしい発見」というわけではありませんが、独立開業して強く理解したことといえます。
ビジネスシーンは日々、選択の連続です。情報過多の時代であることも重なり、物事の選択肢は膨れ上がるばかりです。メンバー個人としての選択肢は、チームとしては膨大な選択肢として積みあがることになります。
試しに、自分自身が選択肢を持ちながら「留保」していることを思い浮かべてみてください。きちんと数え上げれば、その数は10や20ではないはずです。個人としても数があるわけですから、チームとしてはむべなるかな。
管理職はその膨大な選択肢を、「組織の思想に沿って」、良否を判断していく役割を担います。なぜならば、チームの誰よりも、判断に必要な情報量と能力とを有しているのが管理職(であるはず)だからです。判断をせずに「留保」の道をゆけば、その先にあるのはチームや部下の「停滞か迷走か」。チームの命運は管理職にかかっています。
こんなことに、「ひとり」になってようやく真剣に気が付いたわたしです。ひとりであるということは、経営者として「イコール管理職」でもあります。この是非管理ができないと事業としては致命的なことになる、ということに行き当たった。そういうことです。
この是非管理、具体的には、
- チームや部下の選択肢を定期的に把握する
- 「組織の思想に沿って」、採否を選択する
- 採用したものは確かに定着させ、採用しなかったものは確かに棄却されたことを見届ける
- 把握した選択肢の中から、組織に必要なあらたな情報を拾い出して組織に伝える
ということ。
④は、管理職は「イエスマン」ではダメだ、ということを意味しています。現場という最前線の情報を組織の中枢に届けるのに、管理職はときには大きな声を上げなければいけません。「いままでのやり方はこうだったけれど、いまは状況が変わっている!」そういうことを言えなくてはいけません。そう考えると、当然ながら情報はただ把握していればよいということではなくなります。
情報を知ったうえで、思想に照らして判断までできるかどうか。これは管理職に限らず、一個人としても重要なことだといえるでしょう。
まとめ
管理職がやるべきことについて、3つお話ししました。いずれもわたしのオリジナルですから、いろいろご意見もあることでしょう。
この記事を読まれている方は「管理職」について何らか志向されている方のはず。管理職というのはときに孤独です。そういった方々の志向のきっかけになればよいなと考えています。わたしの考えとあなたの意見とをぜひ戦わせてみてください。
世の中に数多あるマネジメント理論。
そういったものも学びつつ、自分自身の理論を研鑽し、その実践に努めましょう。
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きょうの執筆後記
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昨日は、朝はテニスレッスン、そのあとは家族でみなとみらいへ。
最近土日はテニスレッスンです。本来は週1回なのですが、勤務時代に溜め込んだいた「振替」消化を続けています。
完全消化には、まだ2か月近くかかりそうな感じ。屋外テニスなので去年以上に日焼けしそうです。遊んでるっぽく見えるんだろうなぁ。遊んでるんですが。