だれもが知りたいであろう「目標達成のコツ」について。科学的な裏付けをもって教えてくれる、『やり抜く人の9つの習慣(ハイディ・グラント・ハルバーソンさん著)』をレビューします。
能力がないなぁ、意志力が弱いなぁというのなら。
目標を立ててみたけれど、達成できない。気を取り直して、また目標を立ててはみたけれど、やっぱり達成できない… ということ、ありませんか?
そんなときには「じぶんには能力がないのかなぁ」とか、「やり抜くための意志が弱いのかなぁ」などと考えてしまうものでしょう。
けれども、それは違う。目標の達成に必要なものは、能力や意志力よりも「日々の思考や行動」、つまりは「日々の習慣」なんだ。と、教えてくれるのがこの本です ↓
目標達成に必要な「日々の思考や行動」とは? が「9つの習慣」として紹介されています。全 119ページとボリュームこそ少ないものの、たくさんの気づきが詰まった1冊でした。
著者は社会心理学の先生(女性)で、「実験の結果」という根拠にもとづき書かれている点がおすすめです。世の中には「もっともらしいけれど根拠無し」の話は少なくありませんので。
それでは、『やり抜く人の9つの習慣』をレビューしてみます。
9つすべては、本書を読んでのお楽しみ
『やり抜く人の9つの習慣』を読んでみて。とくに良かったと感じた点を中心にお話をしてみます。
9つの習慣とはなんなのか、9つぜんぶ教えてくれ! と思われるかもですが。そこは本書を読んでのお楽しみ、ということで。
それではまず1点め。こちらです ↓
《習慣その1》目標達成への行動計画をつくる
やり抜く人の習慣の1つとして、「目標達成への行動計画をつくる」ということが挙げられています。
この点について、著者のハイディ・グラント・ハルバーソンさんの主張は明快です ↓
目標達成のためにやるべき行動を着実に実行するためには、「いつ何をやるか」をあらかじめ予定に入れておくべきです。
〇〇をしよう、と「あいまい」にするのではなく。いつ〇〇をやる、と予定に入れておく。これが目標達成にはたいじなんだ、ということですね。
そんなんでほんとうに目標達成できるのかなぁ、と疑われるかもですが。「運動を習慣化したい人たちを被検者とした研究」の結果が、疑いを払拭します。
「月・水・金曜日になったら、仕事の前に1時間ジムで過ごす」という予定の決め方をさせた人たちの 91%が運動を習慣化できたそうです。いっぽう、いつ運動をするかの予定を決めなかった人たちが習慣化できたのは 31%、その差は歴然でしょう。
では、どうしてそのようなことが起きるのか?
脳は「XならY」という文章を記憶しやすく、無意識のうちにそれに従って行動できるようになるからだ。と、著者は言っています。
ですから、なにか目標を立てるのであれば、「いつ(になったら)何をやるか」まで予定に落とし込むことがおすすめです。
わたし自身、「毎日ブログを続ける」という目標に対して、毎日「○時から○時までブログを書く」という予定を入れています。だから、いままでなんだかんだと続いているのかなぁ、と合点がいきました。
《習慣その2》現実的楽観主義者になる
著者のハイディ・グラント・ハルバーソンさんは、やり抜く人の習慣のひとつとして、「現実的楽観主義者になる」ことを挙げています。
現実的楽観主義者とは? 言い換えると、こういうことです ↓
「目標は達成できる」と信じるのは変わらず大切なことです。しかし、「目標は簡単に達成できる」と考えてはいけない。
これはなかなか「盲点」ではないでしょうか。
よく、「ものごとはポジティブに考えよ」と言われます。目標達成について言えば、「オレはできる、ワタシはできる、きっとできる」みたいな。
それはそれで悪くはないが、それだけでは目標達成できない、ということです。なぜなら… の理由を著者はこう述べています ↓
「望むことは簡単にできる」「ほしいものは簡単に手に入る」と考えると失敗の確率が高まるという研究があります。そう考えたせいで油断してしまい、必要な準備をおこたってしまうからです。
たしかに。言われてみれば、思い当たるフシもあるような。油断をして、準備をしなければ、そりゃあ失敗もするでしょう。でも、その油断や準備不足を「じぶんはポジティブだ」と勘違いしているケースもあるわけです。
じゃあ、どうするか?
成功を信じつつも、失敗をイメージすること。どんなことが目標達成の障害になって、失敗しそうかを考えてみる。うまくいきそうだ、というときほど。
この点についても、本書では研究結果が挙げられています。「成功できるかわからない」と考えてダイエットにのぞんだ人たちよりも、「成功できる」と考えてのぞんだ人たちのほうが 13kgも重いままだったとのこと。これは、なかなかの衝撃です。
非現実的な楽観主義者ではなく、現実的な楽観主義者になる。目標の難易度を低くみつもりすぎないように、目標達成の障害を見過ごさないように、です。
《習慣その3》筋肉を鍛えるように意志力を鍛える
目標達成にのぞむにあたって。意志ばかりでは達成できないものの、意志力は高いほうがいいわけで。
「だけど、オレは(ワタシは)意志が弱いからなぁ」と嘆いているのであれば、それは違うと著者は言っています。意志力は鍛えられるのだ、と。
じゃあ、どうやったら鍛えられるの? ということについても、もちろん示されています。
たとえば、「気のすすまないこと」をやってみる。気はすすまないけれど、取り組む価値があると思うことを続けてみる。やめたくなる、あきらめたくなる瞬間を乗り越えて、意志力は鍛えられるのだそうです。
たとえば、「猫背になっていると気づくたびに、背筋を伸ばす」が例として挙げられています。わたしはデスクワークをしていると、しばしば猫背になるので、まさにこれです。いまもブログを書きながらやっています。
大きな挑戦である必要はなく、なんでもよいのだそうで。根気よく取り組むことに価値がある。試してみてはいかがでしょうか。
また、「手っ取り早く意志力を上げる方法」として、ちょっとビックリな話もありました。こちらです ↓
「意志力が強い人」を思い浮かべると、それだけで意志力をパワーアップさせたり、回復を早めることができるということが、実験で証明されたのです。
えっ、思い浮かべるだけでいいの? という感じですが。でも、尊敬している人や目標にしている人のことを思い浮かべると、「オレもがんばろう!」って考えたりもしますよね。似たようなことかもしれません。
わたしも、日々の勉強など「きょうはやらなくてもいっか」というときには、意志力が強い人(数人います)のことを思い浮かべて、じぶんの尻を叩いています。
《習慣その4》「やめるべきこと」より「やるべきこと」に集中する
やるべきことよりも、やめるべきことを決める。というような話は聞いたことがあるのですが、その逆ですね。
この点、著者のハイディ・グラント・ハルバーソンさんは、次のようにおっしゃっています ↓
ある思考をしないように努力すると、逆に頭の中はその思考でいっぱいになる―これは心理学の実験でも明らかです。
これは「思考」だけではなく、「行動」にも当てはまるのだそうで。ある行動をやめたいと考えていると、逆にやめにくくなってしまう。
では、どうするか?
「やめたいこと」を考えるのではなく、「やりたいこと」「やるべきこと」を考えるのだ、と著者は言っています。具体的な手法としては「if -thenプランニング」です。
if-thenプランニングとは。「もし〇〇だったら(if)、△△をする(then)」という思考・行動を言います。
たとえば。「もし、お酒を3杯飲んだら、次はジンジャエールを頼む」みたいな。わたしはすぐ二日酔いになるので、そのための if-thenです。
4杯目は自動的にジンジャエールを頼めばよいので迷わずにすみます。これをもし、「4杯目は飲まない」という決め方をしていると迷いが生じるものです。二日酔いしない、という目標達成が遠のきます。
ちょっと例がショボかったですけれど。わたしはほかにも if-thenを数十個ほどリストにして、毎日見直すようにしています。
以前は「やらないことリスト」だったのですが。これだとまさに「やらないこと」で頭がいっぱいになるばかりかもなぁ、と最近になって if-thenリストにあらためました。
実際にやってみると、なかなか快適です。やらないことをやってしまったとき、やりそうになったときに、具体的な行動を取ることができます。
目標を達成したい… でも能力が… 意志力が… と悩んでいる人にはおすすめの1冊です ↓