売上は前期比〇%増! ただし根拠なし、みたいな計画はやめましょう。
けれども、計画そのものが無いよりはマシと言える。その理由についてお話をしていきます。
ある状況においては、そうでもない。
会社がつくる計画(経営計画・事業計画)について。売上は前期比〇%増! ただし根拠なし、みたいな計画はやめましょう。というハナシがあります。
根拠もなく、売上が〇%増えるなど、「絵に描いた餅」に過ぎないから。そんな計画は役に立たないから。まぁ、散々に言われるものです。
けれども、ある状況においてはそうでもない。たとえ、根拠がなかろうと、売上〇%増でも良いのではないか? と言える状況があります。それは、「計画そのものが無い」という状況です。
そういった状況にある会社であれば、ひとまず売上〇%増でも良い。「売上〇%増(根拠なし)」の計画でも無いよりマシだと言える理由について、このあとお話をしていきます。こちらです↓
- 取り組みのきっかけになる
- 複数シナリオで数撃ちゃ当たる
- 資金ショートの危機を察知できる
これらの理由を理解することで、「計画そのものが無い」のが問題だと気づきましょう。それではこのあと、順番に見ていきます。
「売上〇%増(根拠なし)」の計画でも無いよりマシと言える理由
取り組みのきっかけになる
まず結論として、計画(経営計画・事業計画)はあったほうがいい。これは、商売や仕事に限ったことではなく、人生や生活においても言えることです。
ではなぜ、計画があったほうがいいのか? 経営計画の世界(?)ではしばしば語られる、「ロケット理論」が参考になります。じゃあ、その「ロケット理論」とは?
ロケットが月に到達できたのは、「計画」があったからなんだぜ! というハナシです。もう少し具体的に言うと‥
まず、「月に行くんだ」というハッキリした「目標」があったからこそ、月に到達できた。そして、「月に行くためにはどうしたらいいか」という「方法」を考えたからこそ、月に到達できた。さらには、月に向かう過程で「軌道のズレ」を把握・修正する「しくみ」を準備していたからこそ、月に到達できた。
これら「目標・方法・しくみ」によって構成されるのが「計画」だ、ということになります。会社にとっての「月」、わたしたちにとっての「月」はそれぞれですが。いずれにせよ、どこかへ向かう以上は「計画だいじ!」となるわけです。
とはいえ。計画と言われたって、どこから手を付けてよいやらわからない… との悩みもあるでしょう。そんなの勉強しろよ、というのは正論ですが。計画の勉強は奥深く、その勉強が完全に終わるのを待っていられるほど、会社の寿命も、ヒトの寿命も長くはありません。
そう考えると、ひとまず手をつける。ひとまず計画をつくるところからはじめてみるのは、ひとつの「妥協案」になるはずです。あとは、計画をつくりながら、実行しながら勉強していけばいい。
ならば、ひとまず手をつけてみるか。このとき、障害になるのが「売上の計画」です。いくら売れるのか? がわからない… なぜなら、売上を決めるのは「お客さま」だからですね。
価格は会社が自由に決められますが、その価格でどれだけ売れるか(数量)は「お客さまが買うか買わないか」で決まります。そこは実際に売ってみなければわからず、結果として、売上の計画ができない。計画自体をつくれない… となってしまう。
そこで、「売上は前期比〇%増」という計画です。けして望ましい計画の立て方ではないけれど。計画そのものが無いよりマシ。計画無しにロケットを飛ばすよりはマシ。
前期比〇%増に、それほどの根拠はないかもしれない。ただそれでも、ひとつの妥協案として、計画づくりに取り組む「きっかけ」としてならアリ。そう考えてみましょう。
[ad1]複数シナリオで数撃ちゃ当たる
なぜ計画をつくらないのか? とたずねたときに、よくある回答のひとつが「だって計画どおりにはいかないから」があります。
たしかに、現実が計画どおりにいかないことはあるでしょう。むしろ、計画どおりにいくことはまずない、と言ってもいいでしょう。
じゃあ、計画をつくるのは意味がないのか? と言えば。もちろん、そんなことはありません。そもそも、「計画どおりにいくかどうか」は二の次三の次だからです。
計画は、占いとは違います。当たるのがスゴい、当たらないのはダメだ、ということではありません。だいじなのは、計画とのズレを把握して修正すること。そのうえで、当初の目標に近づくこと。これはさきほど、ロケット理論でお話をしたとおりです。
したがって、「だって計画どおりにいかないから」という回答は、計画の「本質」を見誤っていると言えます。
ですが、あまりに当たらないのもどうでしょう? あまりに、現実と計画とがかけ離れてしまうのもどうでしょう? それはそれで、計画に取り組むモチベーションが下がってしまう… というのは理解できます。
そこで、「複数シナリオ」です。ひとつだけではなく、複数の計画を用意する。たとえば、「売上前期比30%増シナリオ」「売上前期比10%増シナリオ」「売上前期比5%増シナリオ」と、複数つくっておく。
そのうえで、現実と比較をしながら、現実に近いシナリオを採用して、あとのシナリオは捨てていく。ある意味、「数撃ちゃ当たる作戦」です。
当てることが本質ではないけれど、目標そのものを見失うよりはずっといい。月に行くことを忘れてしまうよりはずっといい。複数シナリオは、そんな考え方だと言えます。
月に行くとしたって、いろいろなケースがあるでしょう。ルートAで行こうと思っていたけど、途中に思わぬ障害物があった。そのときにルートBやルートCといった「複数シナリオ」を準備していれば、対応はよりスムーズになるはずです。
また、計画は立てれば立てるほど、経験を積めば積むほど、「精度が高まる」という特徴があります。
実際に、創業したばかりの会社が立てる計画よりも、創業から5年たった会社が立てる計画のほうが精度が高い。創業から10年たった会社は、もっと精度が高い。というのは、しばしば見られる現象です。
計画どおりにはいかないから、とはあきらめず。たとえ、根拠に乏しい「売上〇%増」だとしても、複数シナリオで挑み続けてみる。すると、いずれ徐々に精度も高まっていくはずです。
[ad1]資金ショートの危機を察知できる
会社にとって、もっとも恐れるべきものは「資金不足」です。資金、つまり、おカネが足りなくなってしまう。おカネが無くなってしまえば、言うまでもなく、会社は倒産です。だから、資金不足にならないようにしなければいけません。
この点で役に立つのが、「資金繰り計画」です。向こう1年ていどの資金繰り(収入ー支出=おカネの残高)を予測することで、資金不足に対して早め早めの対応が可能になります。
ただ、その「資金繰り計画」をつくるには、「利益計画」が必要です。利益計画とは、「売上ー費用=利益」の計画のこと。売上や費用の計画が、資金繰り計画のベースになります。ここでも、売上の計画が必要になるわけです。
したがって、売上の計画がつくれないと、利益計画がつくれない。利益計画がつくれないと、資金繰り計画がつくれない。資金繰り計画がつくれないと、会社は倒産しやすくなる。これはいけません。
だから、まずは売上の計画をつくる必要があります。ここで、「売上は前期比〇%」という計画です。前期比〇%にそれほどの根拠がないにしても、資金繰り計画をつくることはできるようになります。
ポイントは、「前期比〇%」を厳しめに設定することです。なんなら、「前期比〇%減」も検討しましょう。前期比減が可能性として考えられるのであれば、積極的に採用していきましょう。
そのうえで、資金繰り計画をつくったときに、「資金ショート(おカネの残高がマイナス)」にならないか? を確認していきます。もし、資金ショートになるところがあれば、なんらかの対応(売上増、費用減、銀行借入など)をしなければいけません。
このとき、前期比〇%をあまり楽観的に考えていると、現実が厳しかった場合に、資金ショートへの対応が遅れてしまうことになります。
資金ショートへの対応は、早ければ早いほど「打てる手」は多くなるものですから、いかに早く資金ショートの危機を察知するかが重要だと言えます。
売上が前期比〇%減、というシナリオも想定してみる。10%減や 30%減など、複数シナリオを想定しておくことは、資金ショートを避けるのにも有効です。
売上の計画あっての利益計画。利益計画あっての資金繰り計画。資金繰り計画あっての資金ショート回避。そう考えると、「前期比〇%」の計画もけして悪いものではありません。
まとめ
売上は前期比〇%増! ただし根拠なし、みたいな計画はやめましょう。
けれども、計画そのものが無いよりはマシだと言えます。その理由を理解したうえで、いま計画が無いのであれば、たとえ「売上〇%増(根拠なし)」の計画だとしても、つくるようにしてみましょう。
- 取り組みのきっかけになる
- 複数シナリオで数撃ちゃ当たる
- 資金ショートの危機を察知できる