財務の失敗、つまり、おカネの失敗は、創業期の会社にとって死活問題。なんとしてでも避けたいものです。
そこで、創業期に起きがちな財務の失敗を避けるために、3つの「惜しむ」に注意しましょう、というお話をしていきます。
共通点は、惜しむこと。
会社の創業期に起きがちな、「財務の失敗」というものがあります。
財務、つまり、おカネの失敗です。おカネが無くなれば会社はおしまいですから、なんとしてでも避けるべき失敗だと言えるでしょう。
その失敗には、共通点があります。なにかを「惜しむ」という共通点。具体的には、次のとおりです↓
- 借金を惜しむ
- 値決めで利益を惜しむ
- 決算で税金を惜しむ
これらの起きがちな失敗を避けられるように。このあと、順番に確認していきましょう。
創業期に起きがちな財務の失敗、3つの「惜しむ」
借金を惜しむ
借金、つまり、銀行融資を惜しむ社長がいます。
借金をするのは気持ちが悪い。利息を払うのはもったいない。といった、理由です。だから、「まずは自己資金ではじめてみよう」という社長は少なくありません。
ところが、創業期というのはおカネが必要になるものです。多くの場合、事業が軌道に乗るまでには、想定を超えて時間がかかります。じゅうぶんなだけの売上が増えるまでには、思っている以上に時間がかかるのです。
実際におカネが必要になってから気がついた… のでは遅すぎます。じゅうぶんな売上がない・おカネもないことを知った銀行は、当然、融資を躊躇するからです。
これに対して、創業時であればどうでしょう? まだ、事業をはじめる前ですから、売上の「実績」を問われることはありません。ゆえに、「計画」が妥当であれば、銀行から融資を受けることが可能です。
だから、創業時には融資を受けておきましょう。という話が、ひとつ。
それから、もうひとつ。創業時に融資を受けるにしても、「できるだけ借入金額を抑えよう」と考える。これもまた、財務の失敗につながる「借金を惜しむ」だと言えます。
借入金額を抑えたことで、やはり、おカネが必要になるケースは少なくありません。そこで、ふたたび融資を受けようとするわけですが。銀行は、「融資をしたばかりだし、決算を見てから」と考えます。決算まで、おカネがもたなければ困ってしまうでしょう。
これを避けるためには、融資を受けるのであれば、「借りられるだけ借りておく」ことです。借りておいて、もしおカネが余ったら、そのときは返済すればいい。そう考えて、借りられるときに借りておくことも検討しましょう。
目安として、創業時には、自己資金の2〜4倍くらいの融資を受けることができます。比較的借りやすい、日本政策金融公庫の創業融資がおすすめです。
値決めで利益を惜しむ
値決め、つまり、商品・サービスの価格を決めるときに、利益を惜しむ社長がいます。まわりを気にしすぎて、商品・サービスの価値に対して、価格を低くしすぎてしまうような社長です。
もちろん、同業他社の価格や、お客さまの顔色をうかがうことも必要ではあります。が、周りを気にしすぎるあまり、必要以上に価格を下げてしまえば、利益が少なくなりすぎてしまいます。
いうなれば、利益度外視の大特価。これは、意外と「あるある」です。創業期は「まず売上を増やそう」と考えるから、というのが理由になります。
利益が減ると、どうなるか。当然、手元に残るおカネも減ります。資金繰りが悪くなる。これもまた、財務の失敗です。
ちなみに。たとえ薄利であっても、たくさん売れればいいじゃないか。というのであれば、気をつけたほうがいいでしょう。なぜなら、薄利は会社を弱くするからです。
利益なき繁忙、という言葉があります。利益度外視の大特価で、お客さまが殺到すれば、販売するにも時間と手間がかかります。人手を増やすとなれば、人件費がかかる。ますます、薄利です。
また、薄利を補うためには、たくさん売らねばなりません。そのために、営業時間を増やすのであれば。やっぱり、人件費がかかるでしょう。ただ売るだけに時間と人手を奪われると、商品の開発・改善もできません。結果、商品力が落ちれば、いずれは売上が下がってしまいます。
まだあります。たくさん売るために、商品の品揃えを増やしたり、在庫を増やしたりすると、廃棄ロス・在庫ロスが増えるものです。というように、薄利の商売は、会社を弱くしてしまいます。
薄利のまま、商品・サービスが売れるようになるとタイヘンです。創業期の値決めの段階で、利益を惜しまないようにしましょう。
[ad1]決算で税金を惜しむ
創業後、はじめての決算を迎えた社長が、税金を惜しむケースがあります。
順調に利益を出すことができた。ところが、利益に応じて税金は増える。税金はできるだけ払いたくない。税金を惜しむと、どうなるか。利益を下げようと考えます。
よくあるのは、決算間際に支払い(費用)を増やして利益を下げる、という方法です。これにより、たしかに税金を減らすことができます。いっぽうで、財務の失敗につながることを忘れてはいけません。
それは、「次の融資が難しくなる」という失敗です。
銀行から融資を受けられる金額は、「利益」で決まると言っても過言ではありません。具体的には、「税引後利益×10」が、その会社が融資を受けられる上限金額の目安です。
ですから、税引後利益を減らせば、その10倍の融資が受けられなくなった、と考えることができます。会社にとっては、けして無視できない金額でしょう。
決算で税金を惜しむと、税引後利益が減る。その分、次に融資を受けるのが難しくなる。だったら、出せる利益はきちんと出す、という考え方もあるはずです。
創業前には、あれほど利益を望んでいたはずなのに、いざ利益が出ると減らそうとしてしまう。おかしなハナシではありますが、実際にはとてもよくある状況です。気をつけましょう。
なお、支払いを増やして利益を減らすと、税金も減りますが、手元に残るおカネも減ります。支払いを増やした分だけおカネが出ていきますから当然です。
結果として、税金が減った以上に、おカネは減ることになります。これでは、なんのための節税だったのかわかりません。「支払いを増やす節税は、節税とは言えない」ということでもあります。
まとめ
財務の失敗、つまり、おカネの失敗は、創業期の会社にとって死活問題。なんとしてでも避けたいものです。
そこで、創業期に起きがちな財務の失敗を避けるために、3つの「惜しむ」に注意しましょう。
- 借金を惜しむ
- 値決めで利益を惜しむ
- 決算で税金を惜しむ